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宇宙(とき)の果てまでこの愛を

「天の川。この瞬間を三七億五千万年待っていた」

 アンドロメダ銀河はその潮汐力で天の川銀河の身体をほぐしていく。両銀河の持つ重力と目に見えぬダークマターの重力は儚く振り払わんとする天の川の抵抗をも虚しいものへと変えていく。

「や、やめっ」

 視界の限りに近づいたアンドロメダ銀河を天の川銀河は振り払うことも出来ず、二つの銀河は今ここに会合した。

 一七億年前にゆっくりと近づいてきたアンドロメダ銀河はその巨大な円盤を広げて天の川銀河に襲い掛かる。ゆっくりと。絡め取るように。

「ダメだ。そんなこと。銀河同士で」


「ふふふ。その割には惑星と恒星の重力バランスが壊れてきているじゃないか」

「やめてっ」

 しかしこうなることは運命であり必然。彼らを構成する星々はその距離故にぶつかり合うことなく、二つの銀河が生み出した新たな核を中心にその軌道を変えていく。

 二つの銀河が重なっていくことで生まれる輝きは新たな星々を生み、明るさが増していく。

「もう。だめ。溶けそう」


「ふっ 俺もだ」

 二つの銀河は輝き合いながら御互いを狂おしく求めあい、絡まり合っていく。



「星形成が継続していくよ」


「ああっ 俺はお前の潮汐力の所為で引き延ばされていく。天の川」

「ぼ、ぼくもアンドロメダの所為で歪んでいきそう」


「核が」「核がッ」


 一つになっていく感覚に彼らは大きく悶える。この時点で現在から五一億年が過ぎていた。

「はぁ はぁ……もう離れない。離れられない」

 七一億年の会合を経て彼らは解り合い、一つになり、巨大な楕円銀河となった。そしてその巨大重力は二人の逢瀬をこっそり覗き見ていた小さな銀河、三角座銀河を既にとらえていた。

「ひっ」

 小さな銀河は恐怖した。しかしアンドロメダ銀河と天の川銀河の生み出す重力の巨大な腕にゆっくりとからめとられていく。

「ち、ち、違うのです。出来心で」

「見ていたのだろう。悪い子だ……」


 三つの銀河がうみだす重力の腕は今宵も絡み合い、星々の光となって今宵も輝く。

 この壮大な愛の物語の完結までには一〇〇億年以上の時を必要とする。

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