第十三章 第四話
俺が舞奈先輩を投げ伏したその直後、体育館は凄まじい喧騒に包まれていた。
「凄まじい投げやったな、あれ」
「いえ、剣を受け止めたあの動きも、称賛に値しますわ」
「……掌底も凄い」
羽子・雫・レキの三人もそうやって言葉を交わしあっている。
そんな彼女たちの会話が気になったからだろうか?
「いえ、それよりも注目すべきは、あの最初の踏み込みです。
……アレは、私でも防げるかどうか」
いつも控え目の奈美ちゃんが、珍しく会話に乱入していた。
「……最初の踏み込みって?」
「剣の群れを躱したアレでしょうか?」
「……そう言えば、上手く突っ込んでた」
だけど、そんな奈美ちゃんの声を聞いても、羽子・雫・レキの格闘技能を持たない三人はただ首を傾げているばかりだった。
実際、さっきの試合を見ていたA組の面々も、ギャラリーの二年生ですら奈美ちゃんの言葉を理解している顔は一人もいなかった。
──ま、そりゃそうか。
アレは、外野から見てみれば、『ただ突っ込んだだけ』にしか見えないのだ。
正直なところ、あの『縮地』擬きは対峙している相手にしてみれば「いきなり目の前にいた」というレベルの凶悪な代物である。
事実、舞奈先輩は反応すら出来ていなかった訳だし。
「……はぁ」
誰も分かってくれないことに落胆したのか、奈美ちゃんが大きくため息を吐き出す。
俺はそんな彼女が唇を尖らせているのを見て、軽く肩を竦めてみせる。
この喧騒の中で、たったそれだけの動きだったが、それでも奈美ちゃんに通じたらしい。
こちらに微笑みを返してくれる。
その笑みを見た俺が、戦いが終わった安堵から肩の力を完全に抜いた……
……その時だった。
「……兄貴」
舞斗のヤツが両手に一本ずつの日本刀を手にしたまま、俺の方へと歩いて来る。
「……やるのか?」
その眼を見た瞬間、俺はそう問いかけていた。
身体は疲労でガタガタだった。
そもそも、昨日の対亜由美戦の疲労とダメージが抜けないままに、今日はもう三戦もこなしているのだ。
幾らなんでもそろそろ過労でぶっ倒れてもおかしくないレベルである。
……だけど。
「刃は引いてあるッス。
だから、本気で来て下さい」
その舞斗の視線と言葉に俺は、気付けば舞斗が投げてきた刀を受け取っていた。
──しょうがない、な。
鶴来舞斗は、たった一日だけとは言え、技を教えた弟子擬きである。
その弟子擬きが本気で俺に挑んで来ようというのに、師擬きである俺がどうしてその挑戦から逃げることが出来ようか?
「姉の仇討ちねっ!」
「頑張れっ! B組の奴らに、A組の意地を見せつけろっ!」
「男子で最強はどっちか思い知らせてやれっ!」
A組の面々から舞斗への声援が送られるが……その声は全て的外れだった。
残された一本の刀を正眼に構えた今のコイツに……姉の仇だの、A組やB組の教室の違いや、学校で二人だけの男とか、そういう一切の雑念などある筈もない。
──いや、声援すら耳に入ってない、か。
その力みの取れた握り、集中力、体重配分、視線の配り方……何もかもが剣士のソレだった。
少なくとも三週間前の、チャンバラを覚えたての餓鬼じゃない、ってことらしい。
その舞斗の圧力に、俺も自然と正眼に構える。
俺は……あれからの三週間で、この弟子擬きが何処まで強くなったのかを見届けてやろうと軽く考えていた。
舞斗の上達を見届けた上で、真正面から押し切ってやろうと。
「──っ」
……だけど。
──コレは、ヤバい。
舞斗と対峙した瞬間、俺はすぐに考えを改めさせられていた。
こうして正面に立つと分かる。
……相手の動きを見てからどうのこうのという考えでいれば、その初動の一撃で俺は斬り倒されるに違いないだろう。
三週間延々と、ただ延々と振り上げ振り下ろすばかりを繰り返したコイツは、打ち下ろしだけならば二流剣士並の技量を持っていると考えなければならない。
──千招有るを恐れず、一招熟するを恐れよ。
そう言ったのはかの有名な八極門の達人、李書文の言葉、だったか。
姉である舞奈先輩みたく無拍子の突進を決めようにも、慣れないあの動きでは懐は取れても……突進と攻撃のわずかなタイムラグを狙われ、兜割りで頭蓋を叩き割られてしまうに違いない。
……だから、俺は構えを変えた。
顔の右側の高さで刀を構える、攻撃重視の構え。
「……蜻蛉」
奈美ちゃんの呟きが、静まり返った体育館に響き渡る。
……そう。
俺たちが対峙したその瞬間から、その緊張に押し潰されたかのように、ギャラリーたちは一言も発しない。
……いや、発せないのかもしれない。
それほどまでに、この舞斗の正眼の構えは凄まじい圧力を放っていた。
そして……そんな舞斗に気圧されないように気合を入れた俺自身の気迫が、周囲の空気を凍りつかせているのを自覚する。
「は、始めっ!」
そんな中、その場を支配する無言の圧力に気圧されたかのように、マネキン教師が開始の合図を口にする。
その瞬間、だった。
俺も舞斗も、何一つ語らず、ただ手にした刀を渾身の力で振り下ろす。
次の瞬間、俺の頭蓋に衝撃が走り……
──っ?
気付けば、俺の身体は前へと大きく傾いでいた。
「……ぐぅっ?」
自分の身体が傾いでいることに気付いた俺は、倒れまいと必死に踏ん張る。
そうして力んだ所為か、次の瞬間に頭蓋が軋むような、凄まじい激痛を自覚し……知らず知らずの内に俺は頭に手を当てていた。
──紙一重、か。
傷口に触れてみたところ……血は流れているものの、頭蓋が陥没した形跡はないようである。
つまり、ダメージは軽くないものの……頭蓋陥没のような、冗談抜きの致命傷は免れたらしい。
どうやら俺の一撃の方が僅かに早く、そのお蔭で俺は命拾いをしたのだろう。
そして、同時に理解する。
──舞斗め、今まで能力を上乗せしてやがったなっ!
幾ら一芸ばかりを鍛えたと言っても、たかが三週間程度で素人が斬鉄なんて出来るようになる訳がない。
当然のことながら、それには裏があったのだ。
どうやら舞斗のヤツは、自身の能力によって刀を操っていたらしい。
要は、レキの使っていた石の三節棍と同じ原理で……自らの腕力の上に『能力を足す』ことで、剣速を倍加させていたのだ。
だからこそ、あの細い腕でまだまだ未熟な剣技で、鉄を断ち斬るほどの一撃を可能としていたのだろう。
そしてそれ故に、こうしてゼロコンマゼロゼロ一秒が勝負の決め手になる状況では、能力に頼っている分、『衝突の際に手の中で締める』という剣術の基本動作のタイミングが僅かにズレてしまい……
俺を一撃で打倒する威力を出せなかったようだ。
──普通の剣士が相手なら、間違いなく頭を割られていたな。
一瞬だけ俺の斬撃が早く届いたとは言え、ほぼ同時のタイミングで脳天を打たれたというのに、俺の頭蓋が陥没していないのはそのお蔭だろう。
って、今はそれどころじゃない。
──舞斗のヤツはっ?
ようやく正気を取り戻した俺は、慌てて歪む視界の中で周囲を見渡す。
未だ脳への衝撃が残ってはいるものの、意識を失う寸前、俺の手には何かを打った感触があった、ような記憶がある。
である以上、深刻なダメージを被ったのは俺だけではない、と信じたいが……
……そんな俺の願いが通じたのだろうか?
気付けば、舞斗のヤツは床に大の字で伏していた。
……だけど。
「ぐ、くっ」
──まだ、生きているっ!
いや、殺す気はなかったし、死んでくれと願っている訳でもないが……どうやらまだ舞斗は戦意を喪失していないらしい。
日本刀を手に持ったまま、立ち上がろうとしているのだ。
某逆刃刀の流浪人じゃあるまいし、鉄の棒で脳天をしこたまぶん殴られて、まだ戦える筈がない。
……生きているだけでも不思議なくらいである。
──それどころか、戦意喪失すらしていないなんて……
その事実に首を傾げた俺だったが、すぐに舞斗が無事だった理由を察していた。
──能力で、俺の斬撃を防いだ、のか。
以前、羽杷海里先輩との戦いで舞斗が使って見せた、剣を創りだして己の身を守る能力がある。
今回もソレで身を守ったのだろう。
──早く、追撃にっ!
次に起き上がられると勝てる自信のなかった俺は、舞斗が起き上がる前に勝負を決めようと前へ一歩踏み込もうと足を上げてみた。
「……くっ?」
だけど、俺の足は動かない。
……いや、動いたという感覚がない。
腕も同じだった。
日本刀を握っている手の感覚がない……いや、殆どない。
──脳震盪、か。
その事実に俺は舞斗への追撃を諦めていた。
この腕の感触で刀を振るっても……アイツの剣の防御を突破できる保証がなかったからである。
──相変わらず、理不尽だ。
その物理法則を無視する超能力者という存在に対し、俺は軽く舌打ちをすると……
「くそっ」
舞斗が起き上がる僅かな間に何とか握力だけでも取り戻そうと、剣を握る握力を強弱し続ける。
幸いにして舞斗のダメージも洒落にならないらしく……酷くゆっくりした動きで起き上がっている。
額が割れた所為か、顔を血が伝わっていくが……その感覚すらも遠い。
目に入らないように慌てて腕で血を拭うものの、その感触も鈍く、上手く血を拭えたかどうか……
そうして、時間にして十秒ほどの時間が経った頃、だろうか。
「済みません。
……待たせたッス」
ついに舞斗が立ち上がってしまう。
ボクシングならKOの判定が出ているころだが、生憎とコレはボクシングの試合ではない。
戦意喪失か、戦闘不能。
そのどちらかが訪れるまで超能力者二人を戦わせる。
そういう過酷な勝負なのだ、コレは。
……しかし。
──三割、ってところだな。
俺の手も足も、まだ感覚を取り戻してはいない。
それでも、己の不利を相手に悟らせる訳にはいかず、その感覚の鈍った手足を無理やり動かし、俺は構える。
──今来られるとヤバい、な。
その不安が知らず知らずの内に現れていたのだろうか?
さっきのような攻撃主体の蜻蛉の構えではなく……気付けば俺は正眼に構えていた。
「やっぱり兄貴は強いッス。
……接近して戦っても勝ち目はないッスね」
だけど、舞斗は攻めてこなかった。
俺がダメージを受けて弱気になっているように、アイツもまたダメージを受けて弱気になっているらしい。
──そんなところを似なくてもいいんだがな。
防御型の俺だからこそ……破れかぶれの相討ちなんて「最低でも生き延びること」を目的とする武術家としては『負けと同義』だと教えられた俺だからこそ、いざというときは守りに徹するように身体に刷り込まれている訳だが。
どうやら師弟というのは要らぬところまでも似るらしい。
──ただ、だからと言って楽になる訳じゃないけどな。
俺と舞斗のヤツとでは……戦い方に違いがありすぎる。
両手の届く範囲しか殴れない俺と違い、舞斗のヤツは戦術に幅がある。
……そう。
例え近づかなくても、攻撃する手段がアイツにはあるのだ。
「だから、コレしかないと……判断したッス」
舞斗がそう呟いた途端、アイツの周囲の虚空から次から次へと剣が生えてきた。
──羽杷先輩との戦いで見せた、奥の手、か。
凄まじい数の剣が浮かんでいるのを見て、俺は歯ぎしりをする。
……嫌な予感が当たってしまった。
幸いにして元の日本刀はまだ形を保っていて……舞斗のヤツも流石に素手の俺相手に超能力を使うことは卑怯だと思っているのだろう。
それが救いと言えば救いだったが……
「……ぐ、くっ、ぐぅ」
全ての剣を排出し終えたのか、虚空には百を超えるだろう剣が浮かんでいる。
流石に能力を限界まで使ったのか、舞斗のヤツは苦しそうな表情を浮かべている。
ただ、その百を超える剣を周囲に従えた姿は、まるでバビロニアの門とか、弓兵の固有結界の中か、もしくは六番隊の隊長が卍解したような姿にも見えて……
「兄貴、これ、最後の技です。
この技を最後に、俺、倒れます」
気付けば、舞斗のヤツはどっかのグラップラーみたいなことを口にしていた。
そしてそれが構えと言わんばかりに、日本刀を右手に持つと、まるで指揮棒のように俺に向け……
「そのとき、兄貴が立っていたなら……
兄貴の勝ちだっ!」
そう、叫ぶ。
そして……
地獄が始まった。
「う、ぉおお、おおおっ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
舞斗の意思を汲んで、虚空に浮かんでいた剣が一本一本飛んで来る。
一度に四本しか飛んで来ないらしきその剣を、俺は持っていた日本刀でただ防ぐ。
打ち落とす、受け流す、逸らす、跳ね上げる、絡め落とす、薙ぎ払う、柄で弾く、袈裟斬りに叩き落す。
「おぉわっ?
師匠、ちょ、これっ!」
「こっちにも飛んできましたわよっ!」
「……危険」
どうやら弾いた剣が飛んで行ったらしい。
だけど、今の俺にはそんな外野からの悲鳴なんて構ってられるほどの余裕はない。
悲鳴を意識からシャットアウトしつつ、飛んで来る剣を次から次へと剣で防ぐ。
……いや、俺はただ防ぐことしか出来ないのだ。
生憎と先ほどのダメージはまだ尾を引いていて……躱そうにも、足は動かない。
だから、防ぐ。
打ち落とす。
薙ぎ払う。
跳ね上げる。
そうしている間にも、次から次へと剣が飛んで来る。
──キリがねぇっ!
防いだ段階で、次の剣が向かってくるのだ。
一度に四本しか飛んで来ないという救いこそあれど……動けない俺には残念ながらこのジリ貧の状況を打開する手立てが、ない。
「……オレの時より、早いぞ、アレ」
ふと、次々に剣を弾く俺の姿に、羽杷先輩がそう呟くのが聞こえた。
……そう。
舞斗のヤツは、あれから鍛えた剣術の腕と比例するかのように、『腕を使わずに射出する剣の速度』も増している。
だからこそ……俺はこうして苦戦を強いられている訳だが。
「流石に、粘るわね」
「よくもまぁ、延々と……」
「アレが、サムライ」
流れ弾が飛んで来ない二年の間から、そんな声がポツポツと声が上がり始めたが、俺はそれどころじゃない。
特にステラ先輩はどうやら日本文化を勘違いしているようだが、それに突っ込んでいる余裕すらありゃしない。
防ぐ防ぐ防ぐ受け流す防ぐ防ぐ防ぐ首だけで躱す防ぐ防ぐ防ぐ防ぐ防ぐ防ぐ……
疲労で身体中は重く、防ぐ衝撃で手の感覚はもう既になく、呼吸するだけで咽喉は熱く肺には激痛が走り、剣を振るう度に心臓が破裂しそうになっている。
……だけど。
そうしてジリ貧の攻防をただただ続けた甲斐は、あった。
──動ける、ように、なってきた。
無謀な突撃を敢行せず防御に徹していたお蔭で、足の感覚が戻ってきたのだ。
「おぉおおおっ!」
「躱したっ!」
その刹那、俺はサイドステップで飛んで来た剣を躱すと前に一歩大きく踏み込む。
「く、くっ?」
その俺の姿に焦ったのか、舞斗は一歩だけ後ろに下がろうと身体を動かす。
……だが、甘い。
その焦りの所為だろう。
舞斗が飛ばした剣と剣が空中衝突し、見事に明後日の方向へと弾け飛んだのだ。
──勝機っ!
その瞬間だった。
俺は疲労で動きの鈍った身体に鞭打つと、前へと大きく踏み込む。
「う、うぉおおおっ?」
「遅いっ!」
反撃のために飛ばしたのだろう剣を、俺はあっさりと弾く。
生憎と、動かない足でジリ貧の攻防を続けていた所為か……飛んで来る剣の速度とタイミングは覚えてしまっている。
もう舞斗が何をしようとも、無駄な足掻きでしかない。
そうして俺が大きく踏み込んだ、その瞬間。
「……流石、っすね、兄貴」
負けを認めたかのように、舞斗はそう呟く。
「……ああ。
お前も、強かったぞ。
以前とは、比べ物にならないほどに」
俺も弟子擬きにそう告げると……その隙を狙って飛んで来た剣をダッキングして躱すと、手にしていた刀で、舞斗の胴を躊躇なく薙ぎ払っていた。
「がぁっ」
超能力の全てを攻撃に使っていた舞斗にはその一撃を防ぐ手立てなど残ってはいなかったらしい。
あっさりと胴の一撃で悶絶し……気を失い床へと崩れ落ちる。
「容赦ねぇ」
「あのままでも倒れていたでしょうに」
「……外道」
羽子・雫・レキが俺に向けてそんな非難を飛ばしてくるが……一応、骨は折らない程度に手加減はした、つもりである。
事実、舞斗は気を失ってはいるものの、剛体術の拳を受けた医者兼格闘家のように、血の泡を吹いて悶絶するようなこともない。
と、その時だった。
「……やっぱり、佐藤さんは打たれ弱さの克服が今後課題ですね」
背後から突如囁かれたその声と、突然背後から放たれた殺気に、俺は満身創痍の身体にまたしても鞭打ちながら慌てて振り返る。
そこには、いつもの優しそうな笑みを浮かべたままの奈美ちゃんが立っていた。
とは言え、彼女は立っているだけで、先ほどの殺気は何かの間違いだと言わんばかりに微笑んだままだったが……その何気ない彼女の立ち姿に、俺は背筋に氷を差し込まれたかのような気分になってくる。
「……どうしました?」
「いや、疲れたと思って、な」
殺気の欠片も感じさせない奈美ちゃんの笑みに、俺は思わずそう返していた。
だが、内心では震えが止まらない。
──やはり、彼女が一番手強い。
恐らく彼女は、この疲労の極致にあり、勝利した直後に気が緩んだ『隙』を……『残心の欠如』を教えるためにわざと殺気を飛ばしてきたのだろう。
……俺の弱点を教えるために。
その親切心というか老婆心というか、彼氏を理想の男性にするために影から教育するみたいな、そういう態度に俺は震えを隠せない。
──と言うか、奈美ちゃんは俺に何を求めているのだろう?
亜由美のヤツを鍛えて俺にぶつけてきたことと言い……何と言うか、彼女が何かを企んでいるような気がしてならない。
尤も、そんなのは状況証拠しかなくて、彼女が何を考えているかなんて、貧乳の奈美ちゃんとは対照的なあのおっぱい様くらいしか分からないのだろうけれど。
っと、俺の思考を読んだのか、視線に気付いたのか。
G級を超える素晴らしいおっぱい様はこちらに視線を向けたかと思うと、首を左右に振ってしまう。
どうやら俺の質問には答えてくれないらしい。
そんな喧騒の中、突如ゴリラ教師が我に返ったかと思うと……
「……勝者、佐藤和人」
今頃になって戦いの終わりをようやく告げる。
そうしてようやく、俺は序列二位を獲得したのだった。