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【完結済】π>Ψ ~おっぱいは正義~  作者: 馬頭鬼
第二部 第十三章
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第十三章 第一話



「あいたたたたた」


 翌日の放課後。

 寮に帰えろうと立ち上がった俺は……身体のあちこちに出来た青あざの痛みに眉を顰める羽目に陥っていた。

 幾ら亜由美のヤツが非力とは言え、棍でしこたまぶん殴られたのだから無傷で済む筈もなく……


「くくく、なかなか、男前やで、師匠」


「ええ、本当に試合後のボクサーのようで……」


「……青あざ」


 今日一日の間、俺の顔を見る度に笑い続けていたハズの羽子・雫・レキの三人が、未だに笑っているのも……まぁ、無理はない。

 今の俺はパンダのような青あざ……とは言わないが、敗戦後のリュ○やガ○ルみたいな顔になっているのは間違いないだろう。

 言うならば「故郷に帰るんだな、お前にも家族が……」とか言われている顔である。

 ちなみに亜由美のヤツは最後のカウンターがだいぶヤバかったらしく、軽い精密検査を受けるということで今日は学校を休んでいる。

 要は……お互いに無傷とはいかないほどの死闘だったのだ。


 ──まぁ、二・三日ゆっくり休んでから……


 身体の傷が癒えた後で、何とか残り五名を蹴散らそうと俺が決意した、その時だった。


「……兄貴」


 B組の入り口に、いつの間にか舞斗のヤツが立っていた。

 ……酷く真剣な表情を浮かべたままで。

 その表情を見て……俺は舞斗のヤツが来た理由を悟る。

 俺が芦屋颯との戦いで休んでいた数日間で、序列三位・四位を次々と破ったコイツが……そしてコイツの上位にはもう姉である鶴来舞奈と、学園最強の陸奥繪菜しかいないコイツが、こんな深刻な表情をして、何故ここにいるかなんて……


「ついに、姉に挑むんだな?」


「……はい。

 兄貴には是非、立会人をお願いします」


 俺の問いに、舞斗は酷く礼儀正しい一礼を添えてそう言葉を返してきた。

 ……何と言うか、真面目過ぎて怖いくらいではあるが。

 それでも、ここまで必死な人間を拒む理由は、俺にはない。


「なら、行くか?」


「はい。

 是非、お願いしますっ!」


 そうして俺と舞斗が連れ立って教室を出たところで……


「……何故、付いてくる?」


 何故か背後からずらずらとB組の連中が俺たちについて来ていたのだ。


「いや、まぁ、大一番やん?」


「ええ。

 この勝負を見逃すのも愚かなことかと……」


「……後学の為」


 羽子・雫・レキが各々の理由を述べていたが……三人とも野次馬根性を隠し切れていないんだが。

 ……まぁ、断る理由はない。


「私も、次の序列戦を挑んでみたいと思いますので」


 そう言って杖で床を軽く叩いたのは奈美ちゃんだったが……


 ──どうせ、勝負にもならないだろうなぁ。


 俺は『円盾(ラウンド・シールド)』の能力者である布施円佳の、二年生とは思えない少女少女した顔を思い出し……ため息を一つ吐いていた。

 と、俺たちが教室を出た、その時だった。


「な、やっぱりボクの予想通りっ!」


「水臭いぞ、舞斗。

 私たちも応援させてくれ」


「ふっふっふ。

 男子の旅立ちには乙女の祈りが必須だろう?」


 そこにはA組の面々が待ち構えていた。

 彼女たちはどうやら舞斗が姉に立ち向かうこの日に居合わせたいらしい。


 ──まぁ、モロにシスコンだしな、舞斗のヤツ。


 『シスコン』……シスター・コンプレックス。

 いつの間にやら変質してしまった言葉の一つである。

 最近では「姉に対して劣情を覚える」という意味で使われていることが多いが、本来の意味は「姉に劣等感を覚える余り、逆らえず姉の機嫌ばかりを窺う」という意味である。

 そして、舞斗のヤツは……その本来の意味の方のシスコンだった。

 発現している超能力そのものが姉の二番煎じだから、そのシスコン度合は重症の域に達していると言えるだろう。

 ついでに言うと、女の子に見紛うばかりの美形であり、単純でありながら結構熱血漢でもある舞斗のヤツは、A組では人気らしい。

 おっぱい様に尋ねたら、一体どれくらいのハーレム主人公っぷりかを確かめることも出来るのだが……


「……拒否」


 まぁ、人様のプライバシーを探るような真似なんて、こうして一年が勢ぞろいしている中、一年生の『全員分』を合わせてもまだ勝ち目がないと思えるほどのG級の至宝を持つお人が許してくれる訳もなく。


 ──ちなみに亜由美は端っから頭数にも入っていない。


 俺はそう内心で呟くと……体育館までの道のりの間、AA×一〇・A×十四・B×六(二つは偽)・C×二……そして素晴らしいG級のおっぱい様二つが揺れる様を眺めていたのであった。




「お、来たか?」


「全く。

 姉を待たせるものじゃありませんよ?」


「さ、お前らの実力、見せてもらうぜ?」


 ……体育館には二年の生徒も全員が揃っていた。

 繪菜先輩のDが二つ、そして羽杷先輩と御守先輩……そして名前も知らない金髪の少女の三人によってCが六つ……後は遠音先輩のBが二つに、小柄な先輩のAが二つ、子供と見紛う布施先輩のAAが二つ……

 全校生徒が揃ってしまえばそれだけおっぱいも大量に並ぶ。

 その光景は……まさに壮観の一言だった。


 ──まぁ、亜由美のヤツは休んでいるんだけど。


 とは言え、亜由美のなんて所詮AA……どうでも構わないだろう。

 ちなみに体育館に詰めている教師はマネキン教師とゴリラ教師……そして、二年の担任らしき爺さん教師の三人だった。

 ……と言うか。


「……お前ら?」


 羽杷先輩が何気なく呟いたその一言を聞いて俺は首を傾げていた。


 ──コレは舞斗のヤツの序列戦で……俺を始めとする一年はただの付添の筈では?


 そう首を傾げる俺だったが……


「さぁ、まずは誰から始めるんだ?」


 車椅子の上に座ったままの繪菜先輩のその一言に、俺の疑問はあっさりと流されてしまう。

 と言うか、全校生徒マイナス一人の興味が序列戦に向かってしまい、誰も俺のことなんざ気にもかけてくれない状況だったのだ。


「……私から、行きます」


 繪菜先輩の声に前に歩み出たのは奈美ちゃんだった。

 相変わらずのステッキで床を突きながらの盲人スタイルではあるが……俺の予想が正しければ、彼女は全校生徒で最強である。


「……よし、では布施、行って来い」


「う、うん」


 繪菜先輩の声に押されるかのように、AA……もとい二年で最も小柄な少女が前へと歩み出てくる。

 ……布施、円佳。

 防御型の『円盾(ラウンド・シールド)』という能力の持ち主。


「では、序列二十一位決定戦、開始っ!」


 マネキン教師がそう声を上げる。

 その声が上がるや否や、布施円佳先輩が何かをかざすような仕草をして見せた。

 恐らくは……彼女の能力である『円盾(ラウンド・シールド)』を展開したのだろう。

 ……だけど。


「……御免なさい」


「え?」


 奈美ちゃんはただそう呟くと、そのステッキから真剣を抜き放ち……


「ふっ」


 軽く息を吐き出しつつ、その細身の日本刀を正面へと突き出していた。

 本当に何気なく突き出したとしか思えないその一撃は、俺の目でも見切れるかどうか分からないほど早く……

 そして、凄まじい威力だった。


「……あ、あ、あ」


 奈美ちゃんの突き出した日本刀はあっさりと布施先輩の『円盾』を貫通し、彼女の眉間数ミリのところでピッタリと止まっていたのである。

 当然のことながら、死にかけた布施先輩はあっさりと戦意を喪失したばかりか、腰が抜けてしまったようで……そのピンク色のお子様パンツを盛大に披露していたのだが。


「……なん、だと?」


 その光景に俺は思わず、護廷十○隊の隊長たちのようにそう呟いていた。

 奈美ちゃんが難なく勝利したことにでも、ピンク色のお子様パンツが見えたことにでもない。

 ……今までの彼女にはなかったその斬撃速度と威力に、俺は驚いていたのだ。

 とは言え、何気ない動作でその威力が出せたことが不思議なのではない。

 奈美ちゃんのスカートが翻り、その太股までが見えたことだけで、彼女の何気なく見える斬撃に凄まじい威力が籠っていた理屈が分かる。


 ──足腰の回転で、あの貫通力を生み出したのか。


 だけど俺は……その理屈が恐ろしいのではない。

 奈美ちゃんが「その威力と斬撃速度を手に入れた」事実こそが恐ろしかったのだ。

 何しろそれは……盲目故に『暗殺専門』だった奈美ちゃんが、武術家ばりの剣閃を手に入れたということなのだ。

 彼女がますます隙のない化け物じみた戦闘力を手に入れたということでもあるのだ。


 ──もう奈美ちゃんとは戦わないようにしよう。


 俺に向けて手を振っている奈美ちゃんに軽く手を振りつつ、俺は内心でそう呟いたのだった。




 奈美ちゃんがあっさりと勝利を決めた、その直後。


「じゃ、次は兄貴、お願いします」


 舞斗のヤツはいきなりそんなことを口走りやがった。


「はぁっ?

 ちょっと待てっ!」


 昨日の怪我も疲労も癒えていない俺は、思わず大声を上げてしまう。

 それも当然で……俺は未だに顔面に青タンつけたままだし、身体のキレも疲労の所為か六割程度でしかない。


 ──こんな状況で序列上位陣と戦えって、そりゃ無茶だ。


 俺は内心で悲鳴を上げていた。

 自殺行為……とまでは言わないものの、このコンディションで戦おうなんて、自滅を招く以外の何物でもない。

 だと言うのに……


「……佐藤さん、頑張ってください」


 一年生のギャラリーの輪へと戻ってきた奈美ちゃんはそう微笑むし。

 それどころか……


「ほら、ステラっ!

 気張って来いっ!」


「YES! マイ、ロードっ!」


 金髪で日本人離れした容姿のステラとかいうCサイズの少女は、どっかの黒い仮面を被った皇子にやられるだけの役割だった円卓のナイトみたいな叫びを上げつつ、前に出て来てやがるのだ。

 その挙句、右からも左からも期待の視線が向けられるこの状況は……言うならば、異次元空間に群れている使徒に囲まれているようにも思えてしまう。


 ──逃げ場なんてない、か。


 俺はその事実に唇を尖らせることしか出来ない。

 ……しかも。


「ハイ。

 とっとと覚悟を決めて下サイ」


 ちなみに、そんな妙なアクセントで呼びかけてくる彼女の名前はステラ=アウル=スティング。

 『幻痛(ファントム=ペイン)』という名の能力を使う、序列五位の少女である。

 名前と能力名から、もう超能力者のネタが尽きていたことを思わせる、限界ギリギリのキャラである。

 そして……彼女の姿が目に入った途端。

 俺の覚悟は決まっていた。


「ったくっ!

 やってやる、やってやるさっ!」


 覚悟が決まった俺は、決意を示すかのようにそう叫ぶと……前に出る。

 ……いや、正直に言おう。

 実のところ、コンディションに多少の問題があったとしても……あのCサイズと対峙するのは別に苦痛ではなかったのだ。




「では、覚悟ヲ決め手下サイ」


 ステラという名のCサイズの少女は、俺に向けてそう告げる。

 彼女の呼びかけに、俺も両腕を上げて構えていた。


「では、序列五位決定戦、始めて下さいっ!」


 マネキン教師がそう叫ぶや否や……


「兄貴っ!

 気を付けるッスっ!

 彼女の能力は『幻痛(ファントム=ペイン)』。

 目を合わせただけで喰らうッスっ!」


 舞斗の叫びが体育館に木霊していた。


「もう、遅イっ!」


 その刹那……ステラ先輩が奇妙なアクセントのそんな叫びを上げていた。

 そのお蔭だろう。

 ……彼女のCサイズのバストがちょっぴり大きな軌道を描きながら揺れていたのは。


 ──うむ。なかなかのお手前だ。


 そのCサイズのバストの揺れを眺めながら、俺は大きく頷いていた。


 ──しかも……コレは。


 ……揺れがダイレクトに、制服を揺らしているような。


「……っ!」


 その理由に思い当たった俺は、宇宙に出た人類の進化型である(ニュー)タイプの如く、脳髄にスパークが走るのを感じていた。


 ──コレは、ノーブラ、だ。


 揺れの自由さ、大きさ、そして形……それらを総合的に考えても、他に理由なんて考えられないだろう。

 彼女の出身地である、その新大陸にある自由の国が育んだだろう、まっすぐに(ストライク)自由(フリーダム)な、そのバストをもう少し見ようと、俺は前へ一つ歩を進めていた。


「……へ?

 何故、効かナイ?」


 俺が躊躇なく歩いたことに、驚いたのだろうか?

 ステラ先輩は慌てた声を上げていた。


「馬鹿なっ!

 彼女の能力を喰らえば、本来はない怪我の痛みを味わうことになるッスっ!

 兄貴が幾ら強くても、眉一つ動かさないなんてっ!」


 喰らった経験からだろう、舞斗のヤツがそんな叫びを上げていた。

 ……だけど。

 生憎と俺は痛みなんて欠片も感じていない。


 ──おっぱいのためなら、えんやこ~らっ!


 ただ何処かの紅白ソングのように内心のその叫びを合言葉に、まっすぐにあのCを目指して歩いているだけだ。


「嘘ダッ!」


 どっかのAAみたいな叫びを上げているステラ先輩がどんな顔をしているかなんて……実のところ俺は知る由もない。

 何しろ、この俺は乳語翻訳ならぬ乳剄を手にしている。

 である以上、B以上の相手に対して俺は既に目を合わせる必要すらないのである。

 と言うよりも……俺の興味はそんなところには存在していなかった。


「佐藤さんの視線、顔を見ていません。

 もしかしたら、あれは……胸を凝視しているんじゃないかと……」


「……何スか、そりゃ?

 そんなので、あの『幻痛』が防げる訳が……」


 奈美ちゃんの言葉や舞斗の呟きが外野から聞こえてきたが……


 ──外国産の、おっぱいっ!


 今の俺はそれどころじゃない。

 生まれて初めて見る、恐らくは新大陸産だろうその二つの果実に夢中だったのだ。

 もはや理性は完全に消え失せ、動の気剥き出しの暴走状態になっていた。


「貰いっ!」


「ひッ?」


 そんな剥き出しの欲望のまま、何の工夫もなくまっすぐに伸ばした俺の手は、彼女の手によって阻まれる。

 ……どうやら多少は心得があるらしい。


 ──だったら、それを突破するまでだっ!


 俺は内心でそう叫ぶと、本腰を入れてその胸に飛びつこうと構える。

 ……その瞬間、だった。


「ワタシの負けだああああああぁぁぁッッッ!」


 ステラ先輩は突然、車椅子から立ち上がったボロボロの空手家の前で、某死刑囚が突然叫んだような、そんな敗北の叫びを上げたのだ。


「あ?」


 その『お預け』を意味する叫びに、俺の動きはあっさりと止まっていた。

 同時にバーサークモードとも言うべき覚醒状態から復帰していた俺は、自分の現状を理解出来ずに周囲をきょろきょろと見渡す。


「負けで、私の負けで良いデス。

 これはステディ以外、触らセルつもり、ありまセン」


 気が付けばステラ先輩は尻餅を突いたままの姿勢で、自分の二つの胸を必死に隠しながら、俺から必死に遠ざかっている。

 その所為か、見事に黄色の下着が丸見えだったが。


 ──なんか、レイプ犯に遭ったみたいな感じだなぁ。


 先輩のその様子に、俺はそんな呑気な感想を抱いていた。

 しかも……


「では、勝者、佐藤和人っ!」


 何故かゴリラ教師がそう叫んでいる。

 どうやら俺は無意識の内にステラ先輩を追い詰めていたらしい。


 ──これが、ステラ先輩の『幻痛(ファントム=ペイン)』、か。


 つまり、先輩の超能力は、対峙した相手の本性や本能を剥き出しにする、理性では抗いがたい凄まじく強力な精神感応系の能力だったのだろう。

 ……俺が心底武術家だったからこそ、某死刑囚に催眠術をかけられても戦い続けた空手家のように、無意識下でも勝ちを拾えた、という訳だ。


「……違う」


 何か外野でおっぱい様が首から上の動きに連動して左右に揺れていらっしゃったけれど……まぁ、勝ちは勝ちである。

 このコンディションで勝ちを拾えたのだから、まぁ、良しとするべきだろう。

 俺はそう考え、大きくため息を吐き出した、その時だった。


「よし、行けっ!

 今なら行けるぞ、土岐っ!」


「陸奥、うっさいっ!

 命令すんなっ!」


 繪菜先輩の叫びと共に俺の前へと出て来たのは、二年の中で布施先輩に次いで胸の小さかった少女だった。


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