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第七章 第一話


「つまり、ここのXの二乗とYの二乗を因数分解できる訳です」


 三日前の戦闘で序列十八位になった俺は、数学の授業中に暇を持て余していた。

 ……何しろ、やることがない。


 ──次の相手のレキが、五日間のドクターストップだからなぁ。


 俺はシャーペンを手の上で回転させながら内心でため息を吐く。

 ……そう。

 あれだけ激しい戦いを見せた羽子とレキの戦闘は、その傷跡をしっかりと残していたのだ。

 その余波が俺に飛んで来たのは確実に計算外だったが、まぁ、仕方ないだろう。

 実際、俺自身もあの日の戦いでかなりのダメージを喰らった訳だが。


 ──流石にこの三日間で回復したけどな。


 思いっきり叩きつけられた背中はまだ痛いにしても、身体の奥に残るようなダメージがある訳でもない。

 だからこそ俺はこうして数学の時間、思いっきり暇を持て余している訳である。


「さっぱり訳分からん。

 Xが婢妖に見えるわ、ったく」


 黒板を半眼で眺めながらそんなことを呟いているのは羽子のヤツだ。

彼女も流石に無事ではなかったらしく、その右足に真っ白な包帯を巻いている。


 ──最後の突進でねん挫したらしい。


 とは言え、羽子の怪我はその程度で、彼女の能力『エア・ジャケット』が如何に凄まじい防御能力を誇るかを知らしめていた。


 ──あんなの、どうやって破れってんだか。


 羽子のヤツが接近用一撃必殺技を持っている以上、活路は打撃技にしかなく……そうなると「身体中にタイヤを巻いているような人間を殴り倒す」という荒業をこなす必要が出てくる。


 ──対俺専用技ってのは伊達じゃない。


 俺の技を完全に封じる形で羽子の超能力は特化しているとも言える。

 とは言え、彼女はその所為で近接戦を挑む以外に活路がなく……俺の弱点と完全に被っている訳だが。


 ──って、羽子のことを考えても仕方ないんだよな。


 俺は首を軽く振ると、授業を放棄して枝毛を探し始めた羽子から、その隣で机に突っ伏して幻夢境へと旅立っている少女……レキへと向ける。

 超能力を使い過ぎで絶対安静とは言え、授業には出て良いらしく、彼女はこうして授業には参加している訳だが……

 ちなみに超能力ってのは某ゲームのMPのように馬小屋で一晩眠れば戻るような代物ではなく、むしろM&Mのように食事をしてゆっくり休むと体力と同じようにちょっとだけ回復するタイプの代物らしい。

 集中力と同じように、使い過ぎた後は眠たくなるそうで……その事情を知っているらしき教師としてはレキの睡眠を公認している節があった。


 ──そういうところ、この『夢の島高等学校』が超能力育成学校だと感じるよな。


 まぁ、PSY指数すら持ち合わせていない俺には全く関係のない話で、どうでも良いことではあるんだけど。

 ちなみに羽子が眠ってないのは、彼女は元々のPSY指数が少ない上に一晩で完全に回復する体質だから、らしい。

 その辺りも、人によって違うようだった。


「で、この場合、全体の数字を6で割った後、マイナスY二乗がプラスYとマイナスYに分かれることより……」


 教師の言葉は続いていたが、俺にとってはどうでも良い話で……

 そのまま俺もPSY指数育成のために意識を手放し……

 早い話が軽くもう一眠りすることに決めたのだった。




「へっ。次のあたしの相手はあんた……えっと、芳賀徹子って言ったっけ?」


「やっぱり……来ると思っていましたわ」


 次の授業はA組が超能力だったらしい。

 体育館のど真ん中で羽子が威勢よく叫んでいる。

 対する芳賀徹子というちょっとばかりバストの膨らみが確認できるBサイズの少女も、羽子のAに張り合う形で胸を突き合わせている。


「良くもまぁ、顔を出せましたわね?」


「ほんと、良い度胸してますこと」


「ええ、全くだワ」


 そして俺は付添として羽子に言われるがままに体育館に来て……こうして見事に女子たちに絡まれていた。

 俺の前には間宮法理、針木沙帆、古森合歓、遠野彩子が並んでいて、どうにも居心地が悪い。

 彼女たち全員、テストの点数のためとは言え、全員一発ずつノシたこともあり……勝ち方が勝ち方だけにちょっとばかり肩身が狭い。


 ──ま、あのまま教室にいても寝るだけだったし。


 次の時間が古典で……俺の中では退屈な授業ワースト2だったため、こうして逃げ出してきたのだが、さてどっちが良かったのやら。


「お互い時間を無駄には出来んやろ。

 とっとと始めんか?」


「ええ。

 相手をしてあげますこと」


 俺が睨まれている間にも、羽子の交渉は終わったらしい。

 既に体育館のど真ん中で芳賀徹子と向き合い、いつでも勝負を始められる状態になっている。


「じゃ、悪いけどあの勝負が終わったら付き合って貰うわよ?」


「……序列戦とかなし、で悪いけどな」


「ま、文句はないでしょう?」


 俺に絡んできていたA組の少女たちはそう告げると、勝負の観戦へと三々五々立ち去って行く。


 ──俺、帰っても良いんじゃないだろうか?


 このまま体育館に留まっても何の利益もないばかりか、ただ絡まれる嫌な未来が見えていた俺はそう内心で呟くものの……

 流石に無視して帰ったら後々にもっと嫌な絡まれ方をするだろうと予測するくらいの知能は持ち合わせている。

 結局俺は、黙って列の後ろ側から羽子の戦いを眺めることにした。


「では、序列戦十四位争奪戦、開始っ!」


 ゴリラのような教師が野太い声でそう叫んだのが、二人の少女の戦いの始まりだった。


「悪いですけれど、手加減は致しませんわよ?」


 芳賀徹子は余裕たっぷりにそう告げると、右手をまっすぐに羽子の方へと突き出した。

 その右手に絡まっているのは……


 ──鎖?


 よく見れば鋼鉄で出来た鎖が、彼女の右腕に絡まって……

 その次の瞬間。


「っ!」


 その鋼鉄で出来ていたハズの鎖が、某T‐1000型ターミ○ーターのようにどろりと形を変えたかと思うと、突如円月輪という名の丸型の刃物へと変化する。


「ふふふっ」


 と思った次の瞬間には、その円月輪はシミターへと形を変えていた。

 その次には金属バット、その次には日本刀と……見ているこちら側の眼を疑うほどの速度で、次から次へと形を変え続ける。


「これがワタクシの持つ超能力……鋼鉄変化(アイアンシェイプ)ですわ。

 さぁ、どうやって攻めるおつもりですか?」


 芳賀徹子の超能力に、俺は少しばかり冷や汗をかきながら二人の戦いを見つめていた。


 ──下手な暗器より厄介だな、ありゃ。


 戦闘の要因を決めるものは、大雑把にいって「速度」「破壊力」「間合い」である。


 ──自分より速度が上ならば避け切れない。


 古武術に数多ある虚を突く行為は、言ってしまえば「相手の反応速度を落とす」ための技術に他ならない。


 ──破壊力があれば一撃で終わる。


 だからこそ古武術には全身の筋力をまとめ上げて通常以上の力を出す技術や、効果的な打撃方法などがある。


 ──間合いを測らなければ当たらない。


 だからこそ古武術には間合いを見切る戦い方、誤魔化す技術が発達している。

 ……武術とは突き詰めれば、その三つの要素を自分に有利な形で運用する術に他ならない。


「それを完全に覆しやがって……」


 つい俺の口から洩れたのは、そんな恨み言だった。


 ──とてつもなく卑怯な、超能力者という存在への。


 だって、そうだろう?

 俺が曾祖父に凄まじい反復練習をさせられた上で身に付けた技術の中には、体重移動や拳の作り方、着物の袖や裾を利用するなど、間合いを誤魔化す術や踏み込みのタイミングを誤魔化す術が幾つも存在する。

 それらは僅か数センチの間合いを稼ぐがために、何時間も何十時間も同じ動作を繰り返してようやく身に付けた技術なのだ。

 それを……

 それを、あの超能力者はいとも簡単に『得物の形を変える』という反則技でこなしてしまうのだ。


 ──これを、卑怯と言わずして何と言おう。


 そう俺が内心で呟いた瞬間だった。


「やぁっ!」


 ……次々に変わる獲物に羽子が怯んだその隙を、芳賀徹子が狙ったのは。

 先端の尖ったランス状にしたその鋼鉄を、まっすぐに羽子へと突き出すっ!


「……はぁっ?」


 その一撃を見た俺は、思わずそう叫んでいた。

 羽子にしても同じだったのだろう。


 ──あれだけ間合いを誤魔化したのに。

 ──あれだけ得物を変化させていたのに。

 ──あれだけ羽子の精神をかき乱したというのに。


 ……彼女の突き出したその突きはどうしようもない素人のものだったのだから。


 ──まぁ、そりゃそうか。


 幾ら斬れる銘刀があったところで、持ち手が素人ならば鈍らと変わらない。

 同時に、凄まじい使い手が銘刀を手にしても、斬るつもりがなければやはり鈍らと何ら変わりはないだろう。

 超能力も他の武器と同じく……結局は使い手次第ということだ。


「……はぁ」


 それを隙と見たのだろう。

 相手を完全に見切った羽子はため息を軽く吐いた直後、一瞬で芳賀徹子との間合いを詰めると……


「ま、眠っとき」


 そう告げながら彼女の顔へその手のひらを押し付ける。

 たったのそれだけで勝負は終わり……

 序列十四位戦はあっさりと終了したのだった。




 ……だけど。

 序列十四位戦が終わっても、俺を取り巻く問題が解決する訳でもなく。

 俺の前には四人のA組女子が立ち塞がっていた。

 間宮法理、古森合歓、針木沙帆、遠野彩子……いずれも俺と戦ったことのある面々である。


「おい、お前ら、今授業中……」


 ゴリラ教師のその言葉は、遠野彩子の一睨みであっさりと撃沈されていた。

 どうやらこのゴリラ、人類というより霊長類という外見や、教師というより山賊という外見に似合わず、意外と気の小さいヤツらしい。


 ──まぁ、実際のゴリラは気の優しい生き物だと言うし。


 と、そんな場合じゃなかった。

 今、俺の目の前にはAA~Aという……はっきり言って相手にするのも面倒なほどの大平原が……


「私は、あの勝負に納得がいってない」


 そう切り出したのは間宮法理だった。


「あたしも、もう一度戦いたい気持ちはある。

 でも……どっちかと言うと法理のリベンジを手伝いたいわ」


 所詮はAの平らな胸を張り、そう告げたのは遠野彩子である。


「戦場では敗北は死を意味する。

 ……敗者の弁など必要ないのが世の常さ」


 相変わらず芝居がかった妙な台詞を吐いているのは古森合歓で。


「あたしたちはま、納得はしてるんだけど……。

 ま、ちょっと付添ってヤツだワ」


 そう肩を竦めているのが針木沙帆だった。

 どうやら俺の前に並んだ四人の中で、俺との再戦を本気で望んでいるのは、間宮法理ただ一人らしい。

 そして、彼女の強い視線を見る限り……この戦いはどうやら避けられないようだった。


「で、勝負の方法は?」


 仕方なく俺はそう尋ねる。

 テストの点数にもならない以上、適当に負けても良いかと思いつつ。


「だから、あの勝負に納得してないって言ったろ?」


 間宮法理はそう告げると、指を軽く引っ張ると遠くからバットとボールにグローブというソフトボール三点セットを呼び寄せたのだった。

 ……どうやら糸で結んでいたらしい。

 その接続のお蔭で彼女の『軌跡誘導』の能力が使用できたのだろう。

 この演出のためだけに無駄に手の込んだことをするヤツである。




「ルールは前と同じで私が投げる、キミが打つ」


 間宮法理はグローブを手にはめ、ソフトボールを握りながらそう語り始めた。


「尤も、ソフトボールルールで、だけど」


 そういう彼女とバッターである俺との距離は凡そ十三メートル。


 ──前回のイカサマ、バレてやがる。


 法理の足元に投球板を置くその仕草が妙にわざとらしかったことから分かる。

 ……彼女は前回俺が使った『仕掛け』をほぼ理解しているらしい。

 その上で、ソフトボールルールで勝負したいと思っているのだろう。


「ここはちょっと狭いけど……ま、いいか。

 壁に当たったらホームランってことで、どう?」


 法理の言葉に俺は頷く。

 ……彼女の告げたルールは、俺の方が有利なルールだったからだ。

 女子ソフトボールではフェンスまでの距離は六〇メートルほどと規定されている。

 だと言うのに、この体育館はどう取っても凡そ五〇メートルしかない。

 分かりやすく言えば……広島市民球場と東京ドームほどの差がある寸法だ。

 ……いや、むしろ形状や狭さを考えると河川敷か。


「ただし、今度は守備を入れさせて貰うわ」


 そう告げる彼女の背後には、一塁に古森合歓が、三塁には遠野彩子が、そして二塁には針木沙帆がそれぞれ守りについている。

 外野には思いっきり小柄なAAの少女……芦屋颯という名の少女がたった一人で守りにつくらしく、ライトにポツンと立っている。


「良いのか?

 ……野球にもソフトにも足りないぞ?」


「ええ。彼女たちも超能力者だから、ね」


 そんな彼女の自信満々のセリフを聞いて、俺は今更ながらに思い出す。

 ここ『夢の島高等学校』が、超能力者が集められた異能の学校だったということを。


「おい、あんまり無茶をするなよ」


 睨み合う俺たちに向けてそう告げたのはキャッチャー……前回と同じゴリラ教師その人だった。

 あれやこれや言っている割には、ちゃんと手伝いをしてくれている辺り、外見や口調の割には親切な教師なのかもしれない。


 ──いや、違うか。


 多分、彼女たち実験動物……超能力者のパフォーマンスを向上させるためなら、このソフトボールも意味があると考えたのだろう。

 事実、ゴリラ教師の目は……冷徹に実験を眺める科学者のソレだった。




「では、一球目、行くわ!」


 勝負の始まりはそんな叫び声だった。

 その声と同時に、間宮法理はバットを構える俺に向けて、ソフトボールを下投げで放ってくる。


 ──早っ?


 俺はバットを振ることすら出来ず、ストレートだったはずのその一球を見送るしか出来なかった。

 ……いや、彼女の球速そのものは前回の勝負とそう変わっていない。

 変わったのは……俺と彼女との距離。

 前回十八メートルだった投手との距離が今回は十三メートルになっている。

 つまり距離が減った分、球速は早く感じられ……その割増率は四割増といったところか。

 バッティングセンターで言えば、設定最低速度である一〇〇キロを打っていたら、いきなり一四〇キロの剛速球を放たれたようなものだ。


 ──キツいぞ、コレは……


 俺は手のひらに浮かんだ汗を袖で拭うと再びピッチャーと向き合う。


「どう?

 顔色が変わったわよ?」


「いや、女子の割には良い球投げるなと思ってな」


「勿論よ。

 これでも中学生の頃は鍛えてたもの」


 軽々と告げる間宮法理だったが、彼女の言葉はそんなに軽いものではない。

 女子ソフトの一流投手並みの、凡そ百キロ近いその球速がそれを物語っている。

 彼女の球速は、奈美ちゃんがいつか言っていた『贈り物のようにポッと手に入れたような超能力』などではなく……鍛えて鍛えて鍛え上げた末に手に入れた、まさに鍛錬の賜物なのだ。


「次、行くわよ?」


 だが、俺のその動揺を投手が待ってくれるハズもない。

 間宮法理は第二球を振りかぶり……


「っ!」


 俺は速度に負けないように、何も考えず必死にバットを振るう。

 ガインという奇妙な音と共に、俺のバットはボールを見事に捉え……


 ──ってぇっ?


 ボールと一緒に背後へと飛ばされていった。


「当てたのは褒めてあげるけど……

 握りが甘いわね」


「……うっせ」


 法理が訳知り顔で偉そうに語ってくるのを聞いて、手を振って痺れを取っていた俺は軽口を返す。


 ──握りが甘かったか。


 球速に気を取られ、当てることばかりを考えていた俺は、見事なまでに球威に負けてバットを持って行かれたという訳だ。


 ──握りは軽く、衝突の瞬間に絞める、だったな。


 バッティングなんてやったことのない俺が出来ることと言えば、結局のところ剣術の応用でしかない。

 曾祖父に叩き込まれた剣術の基礎を思い浮かべながら、俺はもう一度バットを握る。

 幸いにして……手は痺れるもののスウィングに支障を来たすほどのダメージではないらしい。


「じゃ、次で1アウトね」


 軽く若いながら放たれた法理のボール。


「黙れっ!」


 俺は向かってくる彼女のボールを睨み、必死にバットを振るう。

 だが……


 ──遅っ?


 次に彼女が放った球は、さっきまでの球速とは僅かながらに遅かった。


 ──ちぃっ?


 俺は必死にタイミングをずらそうと一瞬だけ踏み込みを躊躇してしまう。

 その分だけ体勢が乱れてはいたものの、それでもスウィングはボールの軌跡を見事に捉えていた。

 ……そう。

 『その瞬間』までは。


「なっ?」


 俺のバットが当たろうとするその瞬間、ボールはふらっと斜めへ落ち込んだかと思うと、見事にバットから逃げ出していた。

 俺のバットは無情にも空を切り、ボールはゴリラ教師のミットに吸い込まれ、凄まじい衝突音を体育館中に響かせる。


 ──やられたっ!


 ……変化球。

 恐らくはカーブと呼ばれる類のそれは……言っては何だが『普通の』変化球だった。

 つまり俺は……超能力を使わない『ただの女子ピッチャー』相手に、見事に「してやられた」訳である。


 ──そういう訳、か。


 そこでようやく俺は彼女の、間宮法理という名の少女の意図を理解する。

 超能力者としてではなく、人間として俺を負かそうとしてきているのだろう。


 ──多分、俺が普通人(ノーマル)だからこそ。

 ──多分、これまでピッチャーとして鍛えてきた肩に自信と自負があるからこそ。

 ──そして……超能力によってその道を完全に断たれてしまったからこそ。


 だったら……それに応えなきゃ漢じゃない。


「はい、これでワンアウト。

 で、もうギブアップする?」


「……へっ。

 2アウトからでもメークドラマしてみせるさっ!」


 法理の挑発的な問いに、俺も挑発的な言葉を返す。

 ……別に俺は野球ファンじゃない。

 だからこそ、メークドラマとやらも知ったかぶりの単語に過ぎないので、用法が正しいかどうかすら理解していない。

 そして、別にこの勝負……勝っても負けても俺にとっては何の損も得もない。

 何しろ、勝っても負けても序列戦には……俺のテストの点数には関係なく、眼前の連中には眼福となるおっぱいすら存在していないのだから。

 だと言うのに……


 ──負けてたまるかよっ!


 俺は何故か、そんな気になっていたのだった。


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