第四章 第四話
「さて、と」
体育館についた車椅子の少女……檜菜先輩は、先生たち相手に体育館の使用許可を一瞬で勝ち取ることに成功していた。
一年一組の授業中だったのに、一組全員の授業を取り止めさせてまで、である。
──檜菜先輩って、一体どんな権限持っているんだか。
そんな訳で、苦々しい表情の一組担任のお局様や、授業を中断させられた一組の面々、俺たちについてきた二組のクラスメイト達。
それら全員が俺と檜菜先輩を見つめてみる。
……ただ一つだけ気になるのは。
「鶴来、舞斗?
……お前、何で女子の制服着てやがるんだ?」
「う、うるさい!
貴様には関係ないだろう!」
思わず口にした俺の問いに返ってきたのは、顔を真っ赤にした舞斗の怒鳴り声だった。
……いや、確かに、まだ顔の腫れが引いてないから超能力の授業を休んでいるってのは理解出来るんだが……それだけでは女子の制服を着ているという理由にはならない。
──しかし、女顔だから女子の制服が似合いすぎているな、コイツ。
真っ赤になって俺に怒鳴り返す辺り、彼にも彼なりの逆らえない何かがあるのだろう。
「……ふわ」
あ、舞斗を見て委員長が倒れかけた。
おっぱい様がその身体を支えられて形を変えている。
──委員長、お礼はするのでその位置を俺と代わってくれないだろうか?
っと。
俺が要らんことを考えている間に、気が付けば車椅子を押していた舞奈さんも野次馬の中に紛れ込んだようで、俺と檜菜先輩は体育館の中央部で対峙している。
──って、ちょっと待て!
俺は思わず心の中で叫んでいた。
これって……もしかして戦うってことか?
──この、手も足もない、車椅子の少女と?
「……ちょ、ちょっと。先輩?」
「はっ。手加減なんてしていたら、お前、死ぬぞ?」
俺の躊躇を見抜いているように、車椅子の少女は笑う。
笑いながら学年主任の方を向いて頷く。
お局様は渋々といった表情で手を上げると……
「始めっ!」
と、決闘開始の宣言をしやがった。
いつものようにふざけた開始の合図ではなく、本当に決闘の立会人になったかの如く、真剣な表情で、だ。
その声にただならぬものを感じた俺は、気を引き締めると軽く構える。
ガードよりも回避を主体とした、両手を腰辺りに配置することでガードと攻撃どちらにも対応できるようにしつつ、腰は落とさずに軽くステップを踏む……いつ何が来ても反応できるように……そんなアウトボクサーっぽい構えである。
俺の習った古武術は相手の重心移動を読んで先読みする技術系統が多い。
つまり、車椅子の相手が超能力を使ってくるような事態にはあまり向いていないと咄嗟に判断した構えだったのだが。
「……へぇ。様になってやがる」
檜菜先輩はそんな俺の構えを見て笑う。
……いや、実際のところこの構えを取ったのは、四肢のない少女相手に殴りかかるのも気が引けるから、『防御に徹して諦めてくれるのを待とう』という消極的理由からでしかなかったのだが。
まぁ、この『夢の国高等学校』に在籍している以上、彼女も超能力者なのだろうけれど、一年の面々の能力を見る限り、彼女のそれほど脅威ではないだろう。
一瞬でそこまで判断した俺は、守りに徹することを選んだのだ。
──だけど。
その考えが甘いものだと知らされたのは、わずか一秒後のことだった。
「なら、軽く行くぜ?」
そう檜菜先輩が軽く笑った、その刹那。
「つっ?」
俺の視界が、突然『ブレた』。
何が起こったかなんて、分かる訳もない。
繪菜先輩は何一つ飛ばしておらず、ただ『先のない右肘をちょっと動かしただけ』でしかなかったのだ。
だと言うのに、俺の頬には、何か固いモノで殴られたような衝撃が走っていたのだ。
「……な、な、な?」
慌てて周囲を見渡すが、周囲には何もない。
空気の塊や石礫みたいな、距離を離れても打撃を加えられるようなモノは、何も。
そもそも、誓って俺は油断なんて欠片もしていなかったのだ。
……なのに、何かが顔面に当たるまで、それを知覚できなかった。
「へっ。どうした?」
車椅子に座ったままの少女は、俺の反応を見て笑う。
「がっ?」
次の瞬間、腹に突然の痛み。
何が起こったかは、やはり理解は出来ない。
……出来ないが、突然、何かに殴られた感触が走ったことだけは分かる。
しかも、その感触は……羽子の能力みたいに、風の塊がぶつかった感じじゃない。
もっと硬質な……そう、本当に拳で殴られたような感触が一番近い。
「~~~っ!」
何となくやばい気がしたので、勘でスウェーバックをしてみる。
すると、聞こえてくる風切り音や肌に感じる風から、目の前を何かが通り過ぎていったのが分かる。
この状況から察するに……檜菜先輩は、車椅子に座ったままの体勢で、見えない何かを操っている、らしい。
──恐らくは……拳大の大きさの塊。
「へぇ、かわしやがったよ、コイツ」
俺の反応が面白かったのだろう。
檜菜先輩は本当に楽しそうな笑みを浮かべていた。
「じゃあ、本気で行くぞ?」
そして、俺のその回避行動はただ彼女の闘争本能に火を点けただけだった。
──勘弁してくれっ!
──さっきのはただの勘なんだから!
と、俺は内心で泣き言を叫ぶ……が、正直な話それどころじゃない。
何しろ、先輩の攻撃は『見えない』のだ。
避けるとか防ぐとか以前の問題である。
──だが、耐えられる。
幸いにして彼女の攻撃はそう強くなく……『少女の力で殴られた』という感じの、そういう度のダメージである。
とは言え、何処から来るか分からない以上、筋肉を締めて衝撃を受け止めることも出来ない。
意識の外から飛んで来る一撃は、例え少女の力で殴られたダメージであっても馬鹿には出来ない。
──このままじゃ、ジリ貧、か。
避けることも防ぐことも出来ず、しかもこちらからは手が届かない以上、このままでは俺が一方的に火だるまになるのは明白だった。
である以上……
「おっ?」
──突っ込むしかない!
即座に俺はそう判断すると、重心を前に運んでいた。
……攻撃こそ最大の防御と言う。
曽祖父の教えは「攻撃よりも防御を優先しろ」だったが、防げない相手にはそのセオリーも通用しない。
だから、俺は何も考えずにまっすぐに最短距離を車いすの彼女目がけて突っ込んだ。
「おわっ!」
次の瞬間、俺は何かに足を掴まれてひっくり返る。
慌てて受身を取った俺は、転んだ勢いをそのままにすぐその場で起き上がる。
しかし、先ほど足を掴まれた感触は……女性の手、だったような。
……つまり、彼女は……
「……見えない手、か」
「へっ。『不可視の手』ってんだよ。
よく気付いたな」
俺の呟きにを聞いた先輩は、感心したような表情を浮かべていた。
だけど、手心を加えてくれる気は一切ないらしい。
「~~~っ!」
次の瞬間、俺は右横面に殺気を感じる。
その勘に従うように、慌てて右手を上げて顔をガードすると、そこに拳の当たるような痛みが走る。
──防げた……のか?
「次っ!」
「……がっ?」
そう安堵した瞬間に、次はボディに拳が突き刺さる感触が走っていた。
やはり見えない打撃なんて、偶然以外に防げるハズもない。
腹筋に力を入れることも出来ないままに腹を殴られた所為で、呼吸が出来ない。
──多分、次は顔面。
ただの直感で俺はガードを上げる。
だが、そのガードが見えない手に掴まれ、手が下げられる。
「……なっ?」
その『見えない手』の腕力自体は俺よりも遥かに弱いみたいだが、人間の腕という構造上、「力の入らない方向」というものがある。
そちらに力をかけられた以上、どう頑張っても抵抗なんて出来るハズもなく。
……ヤバいと思った瞬間、ガードが下がったこめかみに衝撃が走っていた。
「……ぐっ」
顎を揺らされた俺は、思わず膝を付く。
そこへ上から手のひらが背中に叩きつけられる感覚。
脳へのダメージで踏ん張りの利かなかった俺は、完全に床に這いつくばってしまう。
その挙句、両腕両足を見えない手に掴まれた感触。
脳が揺らされて身体に力が入らない以上……もう身動きも取れなかった。
「へへっ。どうだ?
この陸奥檜菜の『不可視の手』は?」
車椅子の少女の笑い声が体育館に響き渡る。
ただ、俺の無様な姿を見て笑っているのは先輩ただ一人だけだった。
普通人が這いつくばっているというのに、周囲でこの公開処刑を眺めている一年生の超能力者達は、差別も確執もなく、この戦いに見入っていた。
──いや、違うか。
差別や確執を忘れたのではなくて、「目の前で何が起こっているかも理解できないから呆然としているだけ」なのだろう。
周囲には俺を蔑むような視線がなかったことに安堵した俺だったが……・
「……なん、だと?」
次にその眼で見た光景に、思わずそう呟いていた。
何しろ……誰も押していない筈の彼女の車椅子が、こちらに向かってゆっくりと走り出していたのだ。
──これは……見えない手で、車椅子の車輪を廻している?
俺の手足をそれぞれ押さえつけている手と、車椅子を操る手……つまり、彼女の『手』は最低でも六本もあるという計算になり……
繪菜先輩との戦いは、つまり……腕が六本もある阿修羅と格闘技で戦っているようなものなのだ。
──勝てない。
そんな、絶望的な感覚が身体を支配する。
諦観が身体を支配した所為だろうか。
脳の揺れは少しずつ治まってきたというのに、握ろうとする拳に、立ち上がろうとする脚に力が入らない。
──このまま倒れたままで、このリンチが終わるまで寝ていれば……これ以上、痛い思いもせずに……。
そんな弱い気持ちが押し寄せ……起き上がる意思すらなくしそうな。
……その瞬間。
「どうした? オレのこの能力を卑怯だと罵るか?」
先輩のあざけるような声が俺の耳に入る。
それは、こちらを……手も足も出せない俺を、圧倒的弱者を笑う優越感に浸る声で。
その笑い声を聞いた俺は、知らず知らずの内に奥歯を噛みしめていた。
──何で、俺が、超能力なんて理不尽極まりない力で、こんな無様な姿を晒さなきゃならないんだっ!
──しかも、俺が普通人ってだけでっ!
俺の頭の芯は、怒りによって焼け付きそうだった。
そのお蔭で諦めかけていた俺の四肢に力が戻る。
何としてでも起き上がって……この俺を笑うヤツに、せめて一発だけでもっ!
「がぁあああああああああああああ!」
俺は吠えながらも手足を掴む何かを強引に振り払っていた。
──古武術?
……知るか、そんなもの。
俺はただの怒り任せ、力任せで強引に立ち上がる。
その瞬間を狙われた。
見事と褒めたくなるほどのタイミングで足に何かが絡み、バランスを崩した俺は、またしても床に叩きつけられる。
顔面を庇ったからダメージはないものの……立ち上がることすら出来ないというこの状況は俺の闘志を大きく削いでしまっていた。
「くっくっく。さて、舞奈」
「……趣味が悪いわよ、檜菜ちゃん」
そう呟きながら、車椅子の少女は俺から視線を離し、ギャラリーに顔を向けていた。
視線の先にいた舞奈さんはその合図にため息を一つ吐くと、超能力を発動させる。
彼女の眼前から突如虚空から生えてきたのは、細身の刺突剣だった。
どうやら舞奈先輩の超能力は、弟である舞斗と似たような能力なのだろう。
その剣は繪菜先輩に対する援助という訳ではないらしく、何故かこちらに飛んできて、倒れたままの俺の目の前に刺さっていた。
「取れよ。
……これで対等だろう?」
剣に視線を落とした俺に向けて、そんな笑う声がかけられる。
その声に顔を上げた俺の視線の先には、挑戦的な笑みを浮かべたままの檜菜先輩が、絶対的な支配者の如く俺を見下ろしていたのだった。
──剣が、あれば……
知らず知らずの内に俺の手は剣へと伸びていた。
鈍色に輝く、鋼鉄で作られた、少女なんて簡単に斬り裂ける凶器に向かって。
勿論、繪菜先輩の超能力は絶大で、これ一つで何とかなるとは思えないが、この一つで多少はましに……
……だけど。
──車椅子の少女に……手も足もない少女に、剣を振るう?
男の俺が?
五体満足の俺が?
──しかも、武術なんて習っている俺が?
腹は痛い。
背中も痛い。
顎も頬も痛いし、未だに世界は揺れっぱなしだ。
……だけど。だけどさ。
これを持ってしまったら、俺の嫌う卑怯者に成り下がってしまう。
武器を持って素手の相手に襲い掛かるようなヤツとか。
武術を学んでいるのに、威張ろうとするためだけにただの素人相手に喧嘩を売る連中とか。
目先の損得のために嘘をついてでも上手く立ち回ろうとするような、そういう卑怯者と同じに、だ。
曽祖父の遺言だった。
──正直に生きろ、と。
それは「嘘を吐くな」という意味じゃない。
嘘を吐き、保身のために卑怯な行いを繰り返し、自分の理想からも目を逸らし……あの空で輝く太陽に顔向け出来ないような、そんな生き方はするなという意味だった筈だ。
──そして俺は……手足のない少女相手に刃を向けるのを由とはしない。
……だから。
俺は立ち上がって武器を手に取り、その辺に放り投げる。
そして……歯を食いしばりながらも膝が笑ったままの身体で強引に立ち上がり、素手のままに両腕を上げて構え、車椅子の少女を睨みつける。
……こんなものなんて使ってやるかと、無理に作った余裕の笑みを浮かべながら。
「へぇ。そこまでオレたちを見下すのか、普通人?」
そんな俺の虚勢に、檜菜先輩の笑顔が消える。
……まるで、いや、確実に俺を食い殺そうという表情だ。
そして、次の瞬間からが地獄の始まりだった。
一瞬で、視界が揺れた。
次に水月に打撃。呼吸が止まる。
思わず前屈姿勢になった途端に、足と後頭部に衝撃が走る。
回転モーメントを与えられた俺の身体は、抗うことも出来ず地面に叩きつけられる。
床に叩きつけられた衝撃に俺が一瞬怯んだ瞬間。
俺の左腕は見えない何かに持ち上げられて、あり得ない方向へと力がかかる。
──確か、これは……腕ひしぎって名前の関節技だ。
その関節技を、先輩は車椅子に座ったままで、俺に触れることすらなく……超能力だけで決めてやがる。
「……ぐっ」
その技は熟練の柔術家の如く、完全に決まっていた。
……こうなった以上、身体を下手に動かせば、左腕はへし折れるだろう。
生憎と曽祖父みたいに関節を外す術は心得ていない。
大昔に一度やってみたのだが、あまりにも痛くて断念したものだ。
「だから、貴様ら普通人は嫌いなんだよ。
オレに哀れみの視線ばっかりぶつけやがって。ちょいと捻ったら化け物扱い」
いだだだだ。
……どんどんやばい方向へ力が加わってくる。
俺は痛みに声も出せない。
と言うか、寝転んでいる筈なのに、真下にある床が踊っているような感覚……脳へのダメージも残っていて、力がろくに入らない。
「で、どうするんだ? 普通人。
超能力なんて卑怯だと罵るか?
化け物と泣いて許しを請うか?
それとも任務を諦めてこの学校から逃げ出すか?」
繪菜先輩の声は完全に俺を見下していた。
事実、彼女がそう笑うのも仕方ないだろう。
……確かに俺はこの学校、辞めようと思っていたのだから。
──ああ、そうだ。
俺は確かにこの学校なんて辞めてやろうとずっと考えていた。
……だけど。
──ここまで馬鹿にされて黙っていられるほど、俺は人間が出来ていないんだよっ!
頭に血が上っているのを自覚しながら、俺はそう内心で吠えていた。
いや、すぐに俺の咆哮は内心だけで治まらず、気付いた時には怒鳴り声が口から零れていた。
「黙れ、この卑怯者がっ!」
「……っ!」
この状況に追い込まれてさえまだ吠えた俺の声が意外だったのだろう。
関節を決めている力が僅かに緩む。
……尤も、逃げ出せるほどには緩んでくれなかったが。
「……良い度胸してるな、おい」
「うるせぇ。超能力が卑怯ってんじゃねぇ!
超能力や武器に頼らなきゃ何もできねぇ癖に、それを当てにして喧嘩を吹っかける!
その根性が気に入らねぇんだよ、俺は!」
腕が折られるかもしれない?
──知るかっ!
折られたら折られたで後悔するだろうが、今はこの激情を堪える術がない。
頭に血が上ってしまって、冷静に考えられない。
「俺は別に、超能力で生活を楽にしようってんなら別にそれが卑怯とは言わねぇよ!
それは自動車や水道やパソコンと同じ、生きるための工夫ってヤツだ!
ただ、それをひけらかして他人を見下す。
その根性が気に入らねぇって言ってるんだよっ!」
──いたたたたたたっ!
俺の怒鳴り声を聞いている内に、呆気に取られていた檜菜先輩も我に返ってきたのだろう、関節を決める手に力が戻ってきた。
だけど、吐いた唾は飲めない。
──一度出した言葉は取り返しがつかない。
……だったら、もう、言いたいこと言うしかない。
というか、今日一日で随分ストレス溜まっていたのもある。
周囲で見ているギャラリー全員に言い聞かせるように叫ぶ。
「大体、普通人普通人って、勝手な線引きして被害者意識に凝り固まってんのはてめぇらだろうが!
俺がいつ、てめぇらを差別した!
俺がいつ、てめぇらを哀れんだ!
俺がいつ、てめぇらの敵に回ったってんだ!
俺みたいな餓鬼一人、対等な個人として向き合えない連中が勝手に被害者ぶって、自分ら以外の全てを加害者扱いしてんじゃねぇよ!」
……あ、やばい折られそう。
間接にかかる力が強まった瞬間、俺は言いたいことを叫んで怒りが少しだけ鎮火したこともあり……さっき叫んだ言葉を早くも後悔していた。
いや、腕よりも、その、同じ学校で学び、同じ寮で暮らすみんなに向けて怒りのままで叫んでしまった訳だから……その、何と言うか、これからの生活が……
しかし、幾ら後悔したところで、もう叫んでしまった以上、もう取り返しがつくはずもなく。
……実際、周囲からは敵意の視線が来てもおかしくない。
この体勢じゃ、檜菜先輩を見上げるのが精一杯で、ギャラリーの表情なんて見えやしないのが、この場唯一の救いかも知れなかった。
──しかし、言いたいことは言ったのだ。
PSY能力者とかESP能力者だとか普通人だとか。
そんな勝手な肩書きで俺の人格そのものを無視されるような、俺はそんな差別が大嫌いだった。
だからこそ、俺自身は超能力の有無で相手を差別したことはない。
実際、俺自身は『乳の有無』で女性を差別しまくっている気がするが……それはそれ、これはこれ、だ。
俺は左腕の犠牲を覚悟して、歯を食いしばる。
……と言っても、折られたことないんで、どれくらい痛いかは知らないんだけど。