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第1章 Ⅵ幕 夢の呼び声

「さーて、電波娘クレンちゃん。 電波が良くなるように外にでましょうかねー」

 元来た道をテクテクと歩いて戻って行く。


 見れば見るほどここが最新鋭の火力発電所とは思えない。

 石造りの通路、壁、柱。

 通路の所々に石像まで置いてある。

 天使をかたどった物、悪魔らしき異形な作りをした物、それらがまるで異世界に来てしまった感覚にさせられる。


 そして明かりといえば壁や柱に付けられている大型のランプに灯されている炎のみ。

 いまさらだがさっきの部屋も電球等は見当たらなかったのでおそらくこれと一緒のものが壁に付いていたのだろう。


「凄いなぁ……でも発電所なんだから電気設備くらいきちんとすればいいのに。これで宝箱とかモンスターなんて出てきちゃったら完全におとぎ話の世界だよね、今のボクにこれ以上何か起きたら発狂しちゃう自信があるな。けど今日に限って母さんの朝ご飯おいしかったからね、もう嫌な予感しかしないや」

 

 クレンは部屋からしばらく歩いた所でとある事に気付いた。

「あれ……迷った……かな?」

 先ほどクラスメイト達と移動していた時にこんな所を通った記憶は無い。

「やばいなー、変な汗が出てきたよ。さっきの声はまったく聞こえなくなっちゃったしどうしよ……」


 キュォォオオオオオン……


「今何か変な音が聞こえたけど気のせいだよね、うん。ボクは何も聞いてないよー」

 自分にそう言い聞かせて歩みを続けるクレン、しかし足取りはあきらかに遅くなっていた。


『そっちに行ってはいけません!!』

 しばらく聞こえていなかったあの声だった。

 その声は部屋で聞こえた時よりも数段はっきりとクレンの頭の中に響いた。

「っ!! うん、わかった。引き返そう、そこまで言うなら引き返すよー……」

 言うが早いかクレンは踵を返し全速力で元来た道を引き返していった。


 しばらく走り続けやっと見覚えのある通路へ辿り着き、

「確かここは発電所の入口近くだよね……」

 そのまま入口まで戻り扉を開けやっと外にでる事が出来た。


 外に出たクレンは発電所の横手に回り人気が無いのを確認して、壁に背をもたれかけ話始めた。

「もしもしボクの頭よ、電波の状態はどうですかー?」

 ダメ元で自分の中に聞こえる不可思議な声に向けて問いかける。

 しかし反応はない。


(――当たり前か、ボクは何を期待しているんだろう。こんな所誰かに見られたらもう完全に頭がおかしい女にしか見えないよね……)

 クレンが諦めようとしたその時だった。


『はい。電波と言うものが何かは存じ上げませんが貴女様の声は届いております』

 よく通る澄んだ声がクレンの頭に響いた。

 ハープが奏でるようなとても優く、それでいて澄み通る声。


「あぁ良かった。いや……良いのかな……? 夢で見た人と頭の中でおしゃべりしてるなんて普通じゃ考えられないもん」

『何やらご自身を卑下なさっておいでですが……。失礼ながら貴女様は正常でいらっしゃいます。どうかご安心ください、この私が断言致します』


「そ、そんな自信たっぷりに言われても……。そもそも貴女は誰ですか? 本当に今朝の夢の人なんですか? ボクが勝手に生み出した幻聴とかじゃないですか?」


 問いかけて反応があった事は喜ばしい事だったがクレンにとってはそれも異常な事には違い無いのだ。

 少しの安心の後、落ち着きを取り戻し始め、その事に気付き再び混乱しそうになったが不思議と恐怖は無かった。


『貴女様の言われる夢かどうかは存じませんが私の死の直前に貴女様の魂が流れ込んで来ました。それで相違無いでしょうか?』

 不安げな、それでいて自信に充ち溢れている。

 そんな話し方だった。


「あぁ……やっぱり死んじゃったんだね……」

 間違い無い、あの夢は死の直前の映像だったのだ。

 夢のワンシーンが脳裏によぎる。


「うん、多分それがそうだと思うよ。て言うか魂って! ボク的には夢だから意識だけじゃないの? 魂が出ちゃったらボク死んじゃうじゃない? それにどうしてボクだと分かるの? 貴女は死んじゃったのにどうして今ボクとおしゃべりしているの??」


 質問の連続、聞きたい事が雪崩の如く口から迸るほとばし


『それは……話すとおそらく長くなるのですが……』

 困ったような声。


 これだけ質問攻めなのだから当たり前だ。


「じゃあなるべく簡潔にお願いします」

 やや緊張しながらクレンは先を促した。


『……わかりました』

 少しの間が空きその声は淡々と語り始めたのだった。


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