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第4章 6幕 レミ

「いきなりだけど、レミは一体どこに行ってたの?」

 クレンはレミが消えた時の事を思い出しながらレミに問いかける。


「あーあの時? バルブ閉めようとしてたのは覚えてるんだわさ、でも気付いたら周りに誰もいなくなってて……びっくりしただわさ」

 レミはこめかみに指を当てあの時の状況を思い出していた。


「状況が呑みこめなくてしばらくぼけっとしてたら所長のクソったれが出て来たんだわさ!」

「その時から様子が違ったの?」

 鼻の穴を大きくしながらフンフン言っているレミにクレンは問いかける。


「そうだわさ! あの爽やかな笑顔は見せかけだったんだわさ! あいつは何も聞かず何も言わずあたしの腕を掴んで部屋から連れ出したんだわさ、抵抗したらもの凄い怖い顔して「黙れ虫けらが!」とか言っちゃって……でもその強引さにキュンとしちゃったり……」


「レミ……」

 レミの腰がくねくねと動いていたのを見てクレンはレミに鋭い目線を投げつける。


「あ……そ、それでね! 牢獄みたいな牢獄に入れられて! 「貴様で終わる。この時をどれだけ待ちわびたか! この苦しみが貴様に分かるか!」みたいな感じで意味分からない怒られ方したんだわさ!」


「牢獄みたいな牢獄って何だよ……馬鹿かお前……あぁ馬鹿だったな……」

 カイルが木に寄りかかりながらレミに突っ込みを入れ、手をヒラヒラ振っていた。


「うっさいだわさ! 馬鹿に馬鹿って言われたく無いだわさ!」

「はぁ? ヒーローを馬鹿にするとは許せないっ!」

「二人ともうるさい! 話が進まないからカイルは黙ってて! レミはボクと話してるんでしょ! で、それからどしたの?」


 いがみ合う二人の間に体を割り込ませてクレンがその場を制する。


「ふんっ! それからはもうあたし放置だわよ。 食事と言えば冷たいパンと水だけ、おかげであたしのないすばでぃも干からびるかと思っただわさ」


「大した体してないだろばーか」


「カイル! いい加減にしてよもう!」


「あたしは聞いたんだわさ、ここはどことかありきたりな事は聞かなかったけどね、考えればわかる事は聞かないだわさ。あたしが聞いた話だとあの所長はもう何千年も生きているって事と、発電所はハイマートの処刑場で囚人の肉と魂を燃やして発電してるんだって話だわさ」


 処刑場、グランツにとって邪龍に人を食わせるのにそれほど都合のいい場所は無い。

 そして何千年も生きているのは理解出来る、人ならざる闇の眷属ともなればそれくらい造作も無い事なのだろう。


 だが囚人1人燃やした所でそれが発電力になるとは思えないので、イデアの言っていた魔力がどーたらこーたらの世界なのだろう。

 クレンはレミの話を自分なりに分析しながら聞いていた。


「なぁクレン、もうそれぐらいで良いんじゃないか? 終わった話だろ」

 その声に振り返るとカイルはやはり木に寄りかかりながらクレンを見ていた。


 カイルの言いたい事も分かる、自分達を巻き込んだ非現実はもう終わったのだ。

 終わった事をどうこう詮索した所で得られる物は少ないだろう。


「そう……だね……ごめん、ついイデアの癖が……」

 こんな時、彼女ならどうしただろう。

 前へ進めと言うだろうか、考えるまでも無い……前へ進めと彼女は言うだろう。


「帰ろうか! ボク達の場所に!」


「二ヶ月も会わない内にクレンも変わっただわね……」

 

(二ヶ月……?)


「ど、どゆこと……?」

 見ればカイルも驚いた顔をしてレミを見ている。


「あーアレだわさ、所長から「お前は時空の歪みに囚われてここにいる、お前は元居た時間から二ケ月前に遡ってここにいるのだ」って言われたからそうなんだわさ? どうしてあたしで終わるのかは話してくれなかったけども」

 アウラの言っていた事が脳裏によぎる。


 やはりレミは過去へと飛ばされていたのだ、なぜグランツがレミの存在を把握出来たのか。


 それもアカシックレコードとか言う場所のおかげなのだろうか。


 今や全ては闇の中である。


(終わった事だもんね、もう詮索するのは止めよ!)


「まぁほら! もーいいじゃんそんな事は! レミが帰って来てカイルも居て! 遅刻同盟再結成を祝おうよ!」

「ふん。しつこいようだが俺はレミに対して泣いたりなんてしていないのさっ! レミも誤解しないでくれたまえ?」

「何言ってるんだわさ。別にカイルが泣こうが喚こうがあたしには関係ないだわさ。勝手にヒーローごっこしてればいいんだわさー」

「貴様! ヒーローのなんたるかを分かっていないんだっ! そこに直れええええ」

「キャーカイルが怒っただわさー気持ちわるーい!」

「気持ち悪いって言ったのか馬鹿レミ! 正義の鉄拳をお見舞いしてやろうっ!」


 きゃあきゃあと逃げ惑うレミ、そしてそれを追いかけるカイル。


 そしてそれを微笑みながら見守るクレン。


「ただいま」


 ぽつりとクレンが呟く。

 いつもと変わらない日常。

 争いの無い世界。

 お互いを必要とする人が居る喜び。


「よし! 皆の所へ帰ろう! このままじゃまた遅刻しちゃう!」

 クレンはレミとカイルの腕を引っ張り、発電所へと駈け出した。


 その胸にイデア、フォーゴ、アウラの記憶を刻みつけて。


 こうしてクレン達の長いようで短い一日が終わりを告げたのだった……


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