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第4章 5幕 別れ

「やっぱり行くんだね……? 何となく分かってた」

 クレンは笑っていた、その金色の瞳に涙を浮かべながら。

 出会うはずのないイデアとフォーゴ。

 別の時代を歩んできた二人が、歪みによりこの時代に飛ばされたのなら……

 歪みの元は断ったのだ、ならばその存在が正されるのもまたしかり。


「楽しかったですわ……本当に……」

 対するイデアも瞳に涙を浮かべクレンへ歩み寄り、その体が重なる。


「嬢ちゃんも強くなったぜ、一人で魔物倒しちまうくらいだから傭兵やってもいい線いくんじゃねぇのかぁ」

 わはは、と声をあげてクレンの頭を軽く小突く。


「傭兵なんて嫌だよ、それにこの時代にそんなの必要無いのー」

「でもまぁ、悪くなかったぜ? じゃあな……」

 言い終わるとフォーゴの体が固まる、本当に行ってしまった。


『クレン……私が去れば……アウラもやがて消えるでしょう……私は……貴女の友達になれたでしょうか……』

 イデアの体は消失しており、透き通るような声が頭に響いた。


「何……言ってるんだよ……初めから友達だって……ずっとずっと友達だよぅ……」

 クレンは涙を流すまいと必死だった。

 体は震え、口をへの字に曲げ、鼻水をすすりながら、泣くまいと必死だった。


『ありがとうございますわ……これで心置きなく……旅立つ事が出来ましてよ……』

 気丈に振舞ってはいたがイデアのその声も微かに震えていた。


「じゃあねイデア……ありがとう……ボクも……楽しかったよ……」

 

 …………………………

 

 一瞬体の力が抜け、めまいに襲われる。


 そして己の体からイデアの存在が消失している事が何となくクレンには分かった。


「行ったかい……?」

 肩を叩かれ振り返るとそこにはカイルの姿があった。


「そっちも……行ったんだよね?」


「あぁ……「お前、良い体してんじゃねぇか、助かったぜ」だってさ……ヒーローらしからぬセリフだよまったくっ」

 人を小馬鹿にしたような喋り方で愚痴るカイル、そしてその横には……


「イデア様もフォーゴもさよならだったですかー……?」

 長い耳をぺたりと垂らし、うつむいているアウラの姿があった。


 当のアウラの体からも淡い光の粒が舞っており、別れが近い事を示していた。


「うん……もうすぐアウラともお別れだね……」

 うつむいたままのアウラのお腹をくすぐるクレン。


「自分は魔法で生まれたですから……仕方ないのですね……もっとトモダチしたかったのですよ?」

 お腹をくすぐっているクレンの指を、小さな両手でギュっと掴みながらクレンを見つめるアウラ、その瞳は悲しげではあったが、どこか力強い意志のようなものを感じた。


「ほんと助かっちゃったよ、また会えたら炎の矢の出し方、ボクに教えてよね?」

「教えるならアウラブリッツなのですよ! あれは先祖代々伝わる……」

「あははは! アウラに先祖なんていたのー? 嘘でしょ?」

「まぁ……そうなのですよ……」

 冗談を交えつつもアウラの体はどんどん透き通ってきていた……


「さよなら……」

「さよならなのですよ……」


 クレンがアウラの体に顔を近づける、その頬に軽く抱きつきながらアウラの姿は風と共に消えていったのだった。


「ばいばい……みんな……」


 空を見上げる、澄み切ったブルーの空を、いつの時代も変わらぬであろう空を。


 瞳に浮かべた涙をぬぐい、レミを起こしているカイルの元へと歩いて行った。


「カイルどうー? レミ起きた?」

「あぁ、起きたには起きたんだけど……まだ半分寝ぼけてる」

 こちらに背を向けたままカイルは首を振った。


「ふふん、ここはクレン様にまっかせなさ~い」

 腕まくりをしながらクレンはレミの耳元に口を持っていき、ぽつりと目覚めの一言を呟いた。


「レミ……あっちで凄いカッコイイ男の人がレミを呼んでるよ……」

「んなっ! 何ですってえぇええ! どこ、どこだわさ!」

 クレンの言葉を受けて、レミが目を見開きながら跳ね起きる。


「ね?」

 首を軽く曲げながら呆れたようにカイルを見るクレンだった。


「やれやれ……ヒーローが助けたヒロインがレミとは、中々うまく行かないもんだねぇ……」

「へー? レミを助けるんだーって泣いてたのはどこの誰だったっけー?」

「なっ、何の事だか俺には分からない! ヒーローは泣かないのさっ!」

「クレン! かっこよくて爽やかで背が高い男ってどこだわさ!?」

「そんな人いないよーだ! レミが起きないのがいけないんでしょー」


 それぞれが好きに喋り出すこの状況をクレンは懐かしんでいた。


 わずか一日、たった一日しか離れていないはずなのにとても懐かしい。


 だが三人は今までの事が夢だったのではと感じさせるほどいつも通りだった。


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