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第4章 3幕 跳躍

「夜が明けたか……」

 眩しそうに眼を細めながら日の光を浴びるフォーゴ。


「朝日はやはり気持ちが良いですわ……」

 イデアが腕を伸ばしながらフォーゴの隣に寄る。


「うぅん……もう着いたの……?」

 寝息を立てていたクレンが朝日に照らされ目を覚ます。


「どうやら娘も起きたようだな、娘よ、その気絶している女をしっかり掴んでおくがいい」

「ほへ……あ、はい……」


「騎士殿も乗るがよい、少し手荒に行くのでな、離すでないぞ?」

 ミルメコレオに促されたフォーゴはよく理解出来ないままその背中へまたがった。


「そなたは……ついて来れるな?」

 イデアを見ながらミルメコレオは意味深な言葉を放つ。


「……えぇ、いつでも宜しくてよ?」

 ミルメコレオの意図を察したのか満面の笑みで返事を返すイデア。


「では……」


 ゆっくりと後ろに下がりだしたミルメコレオを見てフォーゴも察したのか、寝ぼけているクレンと未だ目を覚まさないレミを腕に抱き込みながらミルメコレオのたてがみを掴む。


「跳ぶぞ」


 それだけ言い放ち、一気に加速したミルメコレオは山から跳んだ。


続いてイデアも山から跳び出す。


「やだ……カイルったら大胆すぎるよぅ……こんな所で……」

 クレンが何やらいかがわしい事を言っているとフォーゴは呆れた顔をしてそっと呟いた。


「いい寝ぼけ方だがな、嬢ちゃん落ちるなよ?」

「ふぇ……?」


 顔を撫でる風がやけに強い、身につけているローブがバタバタとはためく音が聞こえる。

 くるりと周囲を見渡してみると何も無い、そしてふと下を向くクレン。


「っっっっぴぎゃああああああ!!」


 フォーゴとミルメコレオの耳にクレンの絶叫が響く。


「うるさいだわさ……朝っぱらから何を大声あげて……」

 意識を取り戻したレミが目をこする。


 見慣れない景色、激しく顔を打ち付ける風、眼下には木の群れ。


「あふん……」


 それだけ発するとレミはまた夢の中へと落ちて行ってしまった。


「起きたと思ったらまた気絶しちまったぜ……忙しい子だな」

「ふぉーごおおお死ぬ死ぬ死ぬよ! ボクちょっと死んでるってば!」

「落ち着け、嬢ちゃんはまだ死んでねぇよ、だが黙ってないと舌噛んで死ぬぜ? 落っこちても死ぬがな」


 ニヤニヤ笑いながらクレンをたしなめるフォーゴ、彼はこういう状況に慣れているのだろうか、風の唸りを楽しんでいるようだった。


「無理無理無理無理! 落ちるうう! イデあはむぐっ!」


「慣れると気持ちいいもんだぜ? そら、もうすぐ着地だ。いい加減本当に黙りやがれ」


 騒ぐクレンの口にクレン自身のローブの裾を突っ込みながらフォーゴは着地の衝撃に備える。


「少し揺れる、荷物を落とすでないぞ?」


 ミシミシミシミシッ!!


木々の軋む音が聞こえ、再びミルメコレオは跳びあがる。


しなりを利用して落下の慣性を殺しながら、何度かその行為を繰り返しやっと地面へ降り立つ一行。

そこはアルトゥール発電所から少し離れた山の麓だった。


少し遅れてイデアもふわりと舞い降りて来た。


「ひんらはほ……ほおっはひょ……」

ローブを口に入れたままミルメコレオの背から降りるクレンとフォーゴ。


「取ればいいだろうが……何言ってるのかサッパリ分かりゃしねぇ」

クレンの頭を後ろから小突きながらフォーゴはため息をつく。


「どーしたのさー、おっさん倒してからため息ばっかついちゃって。嬉しくないの?」


 よだれまみれになったローブの裾を口から吐き出してクレンはフォーゴの顔を見る。


「嬉しいわけないだろうが……何とも複雑な気分さ……」

心底悪人であったならば己とイーグニスの仇打ちが出来たのだと喜ぶ事も出来ただろうが、グランツは元上官であり豹変するまでは信頼の厚い男だったのだ。


 豹変したのも悪魔の仕業であったならばグランツも被害者と言える。

 フォーゴはそんな感情に揺られていたのだ。


「話し中に申し訳ない。突然だが私はそろそろ行かせてもらう」

 

 本当に突然だった。


 クレンやフォーゴを降ろしてからまだ数分しか経過していなかったが、ミルメコレオの口から別れの言葉が発せられた。


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