第3章 33幕 過去
「ごほっ……真実の歴史とはな……この世界は圧縮されているのだよ……ある一定の周期でな……一定の年月が経つと、それまでの歴史は圧縮され、人々の記憶から消えるのだ……そして大災害が起き……人間の文明も……ほぼリセット、される。イーグニスの時もあっただろう? 古代の遺跡の出土品がその時代には作り出せない物であったり苦労して開発した最新兵器が古代の壁画に残っていたりと……。あれはそういう事なのだ」
(道理で現代にはイーグニスや魔法なんかが伝わっていないわけだ……)
クレンは少しずつ話が見えてきていた。
「悪魔は契約すればもっと力を与えると言ってきた、契約すれば世界の理すら変えられる場所に連れていくと……俺はもうそこで悪魔に取り込まれていたのだろうな。気が付いたら契約は終わり悪魔の力がこの俺に備わっていたよ……それから約束通り世界の理すら変えられるという場所へ連れて行ってもらい……悪意にこの身を染めた。封じられた邪龍の魂を使い、世界に広がる魔力を暴走させて圧縮された歴史を全て解放する、そうすれば歴史は限界を超え修正しようと時空が歪む、その歪みを使って世界を終わらせる事が俺の目的になってしまっていた。もう自分では止められなかったよ。後はお前たちが知っている通りの展開だ」
そこまで話すとグランツは大きく息を吸い込んだ。
うっすらと目を開けたグランツは遠くを見ながら虚空へと手を伸ばし呟いた。
「すまなかった……守りたかった……共に……まも……許し……て……」
やがて力尽きたのかグランツの腕は地面へ落ちていった、一行は真実を知り、動揺を隠せず言葉を発せずにいた。
すると突然地面から闇が広がりグランツの体を包み込み消えて行ったのだった。
「終わり……ましたわね……」
ぽつりとイデアが言った。
「あぁ、本当の本当に終わったな……」
フォーゴが天井を見上げながらイデアの言葉に続く。
「大事な所がたくさん抜けていたけどいいの? 思いっきり不完全燃焼じゃん」
クレンがう~ん!と言いながら背筋を伸ばし問いかける。
「あの人の話だったら少し聞いてるから良かったら話すけども、どうするだわさ?」
その言葉にレミへと皆の視線が集中する。
「で、も、さ。とりあえず……出ない?」
クレンが皆に扉を親指で示しながら言った。
「そうだな、いよっし! 凱旋だぜ!」
フォーゴがずんずんと歩いて行く、それに続くイデアとアウラ。
クレンはレミの手を取り、
「さ、行こう? 皆で帰ろうよっ!」
「そうだわねっ! 帰ったら美味しいご飯が食べたいだわさ」
クレンはレミの手をつなぎ皆の後を追った。
離さないように、強く、強く握りしめながら。




