第3章 32幕 理由
グランツは目を大きく開き、血を噴水のように巻き上げながら倒れていった。
「終わったな……」
「えぇ、事の真相は結局わかりませんでしたわね……」
「なんでもいいじゃん! レミは帰ってきたし二人は自分の仇が打てたんだしさ!」
「怖かったのですよー……」
一行が口々に語りあっていると絶命したはずのグランツの声が聞こえた。
「ぐ……イデア、フォーゴ……いるのか……?」
それは地面に横たわっているグランツだった。
「すまないな……こんな事になってしまって……もはや目も見えぬ、少し……話がしたいのだ……事の顛末を……」
その声に一行は慌ててグランツの元へ駆け寄る。
グランツは先ほどまでの禍々しい姿から元の人間へと戻っていた。
切り裂かれた上半身もくっついてはいたものの致命傷まで元通りになっているわけでは無かった……。
「教えてくださいグランツ! なぜ、なぜそうなってしまったのですか!」
イデアが悲痛な声で問いかける。
それをフォーゴとレミを連れたクレンは黙って聞いていた。
「ある日の事だ……俺は任務の後、イーグニス王都の路地裏を巡回していたのだ。そしてその時ある少女と出会った、その女は貧しかった、だがとても明るくとても賢い女だった。惹かれていた……荒野に力強く咲く花のようだった、彼女に会いたいが為に毎晩その路地を巡回していた……しばらく経ってからの事だ、夜に巡回をしていたら悲鳴が聞こえ、急いで駆け付けるとある家族が殺されていたのだ、強盗にやられたらしい」
そこでグランツは一度言葉を切り、話すべき事を吟味しているようだった。
「よくある話さ、その家族の中に例の女がいた。その時に俺は絶望したのだよ、命をかけて国を守ってもその国で必ず争いは起き、罪のない人間が殺されていく。俺の思いを伝える事が出来ぬまま彼女は逝ってしまった……そして物言わぬ彼女を抱きながら俺は悪魔に魂を売った。守っても争いが起きるのならば全てを無にしてしまえばいいのだと部屋の奥の闇から声が聞こえてきた、全てを教えようとな、そこで俺は世界の全てを知り真実の歴史を知った」
そこまで言った途端、グランツは咳きこみ、大量の血を吐きだした。
血が肺に入ってしまっているのだろう、だとすれば時間はもうあまり残されていない。
「真実の歴史とはなんですか! 答えなさい!」
イデアが必死にグランツの意識をつなぎとめる。




