第3章 31幕 決着
ここにいるという事はもうレミは大丈夫なのだろう。
「あぁ……さすがに強い、ケタ違いだ……だがヤツは変身してかなり油断してる、叩くならそこを付いて短期決戦をするしか無い……長引いたら確実に負けるぜ」
フォーゴが戦術の提案をするという事はゴリ押しでどうにかなる敵では無いのだ。
「それでは……反撃の狼煙を上げましょう……!」
最初に動いたのはイデアだった。
周りに展開した無数の炎の槍を高速で打ち出していく!
その槍の奔流に紛れながら突進していくフォーゴとクレン。
イデアにはクレンの髪の間から覗くアウラの頭も見えた。
小さいながらもあれはアレで十分な戦力だった、期待しておりますわ、と呟き、さらに炎の槍を間断なく打ち出していく!
「ぬぐっ! 小癪なっ! たかが虫風情が!」
次々と迫りくる炎の槍を弾きながらグランツは少しずつ後退していた。
いくらそのスピードが人外でも、強化が施されたイデアが高速で放つ槍の豪雨にはさすがにグランツも防戦を強いられていた。
「後ろかっ!」
背後に気配を察し上に跳ぶグランツ。
「あたりなのですよー」
グランツの目の前にアウラが飛び出す。
「な……」
突如として現れた妖精にグランツは戸惑いを隠せなかった。
「アウラブリッツ!」
あっけに取られているその顔の目の前でアウラが激しく光り輝く!
思わぬ光に瞳を焼かれ、元の場所へと落ちていくグランツ。
それをイデアは待っていた。
グランツが跳んだと同時にイデアは落ちてくるであろう場所の横へ移動していたのだ。
移動しながら魔法の詠唱を始め、魔法が完成した今、グランツを待つのみ。
「くそ! くそがぁあぁぁ!」
瞳を焼かれもだえながら地面へと着地するグランツ。
ぶんぶんと剣を振り回しているのは見えない敵をけん制しているのだろう。
「【アオスブルフ】!」
イデアの術が発動する!
イデアの眼前に幾何学的な紋様うを刻んだ巨大な魔方陣が現れ、そこから炎の渦と燃え盛る岩石が打ち出されていく!
「ぎゃああああああ!」
至近距離でイデアの術をまともに食らったグランツは炎の渦に巻き取られ次々と打ち出される燃え盛る岩石によってその体を焼かれていった。
グランツは身を焼かれながらも手に持っていた剣をイデアへと投げつける。
しかしグランツの放った剣はイデアの体を素通りし地面へと突き刺さっただけであった。
イデアはそこで術を止め、いったん距離をとる。
「油断大敵、だよ? おっさん」
やがて炎が消え、肩で息をしているグランツの耳元で背後からクレンが呟く。
そして一閃――
背中に生えていた龍の翼を断ち切るクレン。
「ぐああぁあぁあ!!」
翼を切り取られた痛みでグランツは足もとがおぼつかなくなっていた。
だがダメージを負いながらも勢いよく前方に大きく跳ぶ。
焼かれた瞳が回復しうっすらと目を開けた前にはフォーゴが迫っていた。
「どうして人間辞めちまったんだよ、グランツの旦那」
フォーゴは静かな怒りを込めて振りかぶり、その肩から大きく斬り裂く。
「がっ…………」
断末魔の叫びもなくグランツはその体の動きを止めたのだった。




