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第3章 24幕 代償

「我が体に流れたるイーグニスの血よ……それに導かれし精霊よ……」


 クレンがぽつりぽつりと詠唱を始める。


「我の祈りに力を与えよ……」

 

 イデアとフォーゴの言葉を一つ一つ思い出しながら唱えていく。

 そしてその詠唱に合わせてクレンの体が淡い光を放ち始める。

 しかし呪文を唱えながら敵の攻撃をかわすのには無理があった、弾丸は1発、2発、とクレンの太腿や腕を貫き、身に纏ったローブを朱に染め上げていく。

「うぐっ……我の掌に有りし黒き弾に宿り……煉獄の炎となりて……立ち塞がりし邪なる者に裁きを与えん……そして、我の肉体に電光の導きを……うぎっ!」

 身を焼かれるような激痛に耐えながらもクレンは詠唱を終えた、あとはその言葉で力を解放するのみ。


 魔物との距離はまだ遠い、動きは無く、ただ弾丸を飛ばすのみ、魔物は完全に油断していた。


「【フェーゲファイヤー】……そして【ズィーグエレクトル】」


 力ある言葉により術式が解放され、クレンの周りに小さな火花がパチパチと散り始めた。


「出……来た……!」


 体から沸きあがる力にクレンは感動していた、フォーゴが使った肉体強化魔法を真似てみたのだ。

 おそらく体に電気を流し反応スピードを極限まで高める魔法なのだろう。

 迫りくる弾丸ももはや脅威では無く、歩いてでも避けられる程にクレンの反応速度は上昇していた。

 そして右手に握っている爆弾も術の効果により、大きさは変わっていなかったが生き物のようにドクンドクンと脈打っていた。


「凄いや……ボクってば才能あるんじゃ……ないの? このままあいつの所に爆弾しかけて逃げれば終わるかな? 終わってくれないとボクの人生が終わっちゃうな……」


 動くたびに全身をさいなむ痛みに耐えながらも弾丸をかわし、魔物の元へたどり着くクレン。


 自らの血で濡れた左手に構えたショートソードを胸元へ付きたて、円を描くようにえぐりこむ。

 生肉を切り刻む感触に顔を歪ませながらも力を込めて剣をひねる。

 そうして開けた穴に最後の爆弾をねじ込み、今度は急いでその場を離れようとしたが突如として視界が歪む、血を流し過ぎたのだ。

 クレンの顔は青ざめ、額には大量の汗をかいていた、しかしここで倒れては爆発に巻き込まれてしまう、クレンはレミの事を思い気力を振り絞り、ありったけの力を込めて床を蹴った。


「三……」

 空中に身を投げ出しながらクレンは爆発の行方を見守る。


「にー……いち……」


 ガッゴォォォォン…………


 とてつもない轟音を響かせながら爆弾は爆発した。

 立ち昇る炎と煙、それはまるで火山が噴火するように猛々しく、全てを燃やしつくすような炎、離れた所に跳んだクレンにも熱が届く威力だった。


 もうもうと舞う煙がはれると、爆発で出来た黒い跡を地面に残すのみで、魔族の姿は肉片の一つも残さず霧散していた。


「~~~~勝っ……たあああ!!」

 

 初めての命のやり取り、気を抜けばすぐ死が訪れる、そんな死闘にクレンは勝利した、地面に横たわり、自らの血溜りの中で混濁した意識ながらもその勝利を噛みしめていた。


「あ、あれ……? なんで……?」

 必死に体を起こそうとするがどこにも力がはいらない。

 

 その瞬間、朦朧とした意識のクレンでも分かる程の激痛が体中に走る。


「あっぎゃあびばば●×☆fyhw□bczな、何でいぎぎあっ……はふっ!」


 あまりの痛みにクレンは絶叫を上げて気を失ってしまった。

 

 フォーゴでさえ疲れる魔法である、魔法ド素人のクレンが加減も無しに発動すれば体中の筋肉や関節が悲鳴をあげるのも無理は無い、そして敵の弾丸により体の数か所は穴が開いているのだ、意識を保てる方が異常だ。


 こうして満身創痍となりながらも、クレンの戦いは終わったのだった。


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