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第3章 22幕 ブルース

 恐る恐るマフカフへ近づくイデア。


 魔物に慣れているとはいえここまで醜悪な者は中々いない、クレンが戦っている魔物といいフォーゴが戦っている魔物といい魔の者とは皆こんな姿をしているのだろうか。


 ゆっくりとマフカフとの距離を縮めながらそんな事を考えていた。

 近付くにつれてマフカフが何か喋っているのが聞こえてきた。

 その言葉を聞き取ろうとイデアは意を決しすぐ側まで歩みを進めた。


「ゴゴゴゴゴ……グググググ……」


 闇の世界の言葉だろうか……マフカフのその言葉はとても理解出来る物では無かった。


「グフウウ……ンググググ……」


 まさか……いやそんなはずは無い。仮にも魔将の一人と名乗っているのだ、そんな事をするはずが無い。


 イデアが事の真意を推し量る為、何か無いかと思案していると、自らの周りに炎の剣が浮かんでいるのが見えた。


 戦闘の始まる前に自分で発動した術だった。

 マフカフとの会話ですっかりその存在を忘れていたイデアだった。


「【エアスト・シュヴェーアト】

 一本だけ炎の剣を手に取るとマフカフの体にそっと触れさせる。

 

 ……………

 

 反応は無い。


「えいっ!」

 イデアは思い切ってその切っ先をマフカフへ突き出した。


 ぷすっ……


「あっづぁ! いったああああああ!!」

 

 やはりマフカフは寝ていた。

 だが絶叫をあげるのみでマフカフの体は微動だにしていなかったが。


 この状況でどうして寝る事が出来るのだろうか、さすがは闇の眷族と言う事か。


 イデアがうんうん、と納得していると、


「汝よ、なぜ我に刃を向けた。事と次第によってはまたも審判を下さねばならぬ、答えよ」

 やや口が回っていなかったが強い口調でイデアを責める。


「いえ、マフカフが寝ていらしたもので……」

 イデアは事の顛末を素直に簡潔に説明する。


「何……それは真か? 否、聞くまでも無いな。これは失礼をした、我も寄る歳並には抗えぬでな。許されよ」


 全く動こうとしないマフカフの体と口調がアンバランス過ぎて緊張感が無くなって来るイデアだった。


「高齢でいらしたのですね、非礼をお許しください。お聞きしますが歴史の開放とは一体どういう事なのでしょう? 教えては頂けませんでしょうか」


 イデアは先ほどの続きを問いかける。


「むむ、どうやら我に時間が来てしまったようだ。許されよ。その答えについてはあやつに聞くがよいであろう。気を付けるがよい平和を願う純真な乙女よ」


 そう言い残すと背後の闇にスゥッと同化してマフカフは消えてしまった。


「まさか眠いから帰ったとかではありませんわよね……ですが闇の眷族ですか、魔物ではなく……魔者……あのような存在が真に存在するとは驚きでございますわ。そして全てはグランツに繋がっているようですわね、有力な情報を頂きまして感謝致します、マフカフ殿」


 イデアは闇に向かい深々と頭を下げ、去って行った闇の眷族に感謝の念を送る。

 

 そしてくるりと闇に背を向け未だ戦闘の続いているクレンとフォーゴを見る。



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