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第3章 ⅩⅩ幕 タンゴ

「ヒュゥッ!!」


 裂ぱくの気合と共にフォーゴが駆ける。

 目標は三体、その内二体は中型の獣タイプ。


 残り一体は人の形はしているものの、いびつな形をしていた。

 その姿は筋骨隆々な上裸の男性、しかしその肩からは腕が数本生えており、長さも太さもバラバラ、頭のあるべき所には巨大なカブトムシのような甲虫が生えておりワサワサと脚を動かしていた。


 そして二体の魔物がガチガチと牙を鳴らしながら突進してくる。


「ふん、突進だけなら怖かねぇや。来いよワンコロ、遊んでやる!」

 剣を横に構え直し、突っ込んでくる魔物をかわし、すれ違いざまに魔物の腹を薙いだ。


 ギャォオウと鳴きながら地面へ転がる一体を横目で確認しつつ、突っ込んでくるもう一体の牙を受け止める。

 一度いなし、鋭利な牙ごと口から一閃! 上顎から上半分を切り飛ばした。


「オルちゃんに比べたらてめぇら子犬ちゃんだぜ」

 剣を振り刃に付いた血を振り飛ばす。


 残りは一体、甲虫人間。

「さて、あんたはどう遊んでくれるんだぃ?」


 剣を正面に構え魔物の出方を見るフォーゴ。


「終わって、なぞ、いない」

 謎の声が聞こえた。

「我が僕は、そこ、まで甘く、はない」

 その声はひどくしゃがれており、妙な所で言葉を区切る喋り方だった。


「てめぇ、喋れんのか?」

 フォーゴは正面に立っている甲虫人間を見る。


「我は、カスチゴ。魔将の、一人」

 カスチゴと名乗る魔物が片方の手でフォーゴが切り倒した魔物を指差す。

 それに釣られ目線を魔物へと移すと、腹を薙いだ魔物は臓物をぶら下げながら立ち上がり、

 頭部を両断した魔物は切り口から新しい頭部を再生させ、切り飛ばした頭部の残りも切り口から体を生みだしている所だった。


「くそったれ……そこはオルちゃんと似てんのな……」

 下手をすればオルトロスより厄介かもしれない。

 この魔物は切り離すと別々に再生が始まり分裂すると言う事なのだから。


 ギャオウ!

 と比較的傷の浅い魔物が飛びかかって来た。


 とっさに剣でガードするフォーゴ。

 ガチガチと刃をその牙で叩く魔物、剣を振りその反動で引きはがす。


「くそったれ、分裂するんじゃ下手に切り落とせ無いじゃねぇか……ならさっきみたいに……」

「ちな、みに傷口を。凍らせても別の個所、から再生が、始ま、るぞ」

 フォーゴが考えている事をさらりと否定するカスチゴ。


「てんめ! 人が思ってる事当てるんじゃねぇ、心が読めんのか?」

 再生を終えた一体に突撃を喰らい剣で応戦しつつカスチゴへ問う。


「否、分裂、の対処、それくら、いだ」

「確かに……なっ!」

 舌打ちしながら剣に喰らいついている魔物を思い切り蹴り飛ばす。


 態勢を立て直し魔物との距離を取るフォーゴ。

 そしてそのまま距離を取りつつ魔法の詠唱を始める。


「分裂するやつには魔法が効果抜群てイーグニスでは決まってんだよっ!」

 呪文を唱えながら未だ再生に時間がかかっている魔物へ駆けていく。


「我が仕えしイーグニスの精霊よ、俺の力となり、断罪の炎となりて、邪なる者に滅びを与えよ!【アインエッシュルング】!」

 再生を続け蠢いている魔物へ剣を突き刺しその魔法を発動させる!


 フォーゴの手から炎が激しく噴き出す。

 その炎は剣を辿り一気に魔物の肉片を焼き尽くす!


「再生出来ない程燃やしちまえば帰ってこれねぇだろ?」

 燃え盛る魔物を尻目にフォーゴは残りの二体を睨みつける。

 

 魔物はグルルル……と静かに唸り、フォーゴから距離を取りウロウロとこちらの様子を窺っていた。

 燃やされた魔物を見て突撃をためらっているのだろう。


「来ないならこっちから行くぜぇ!」

 シッ! と言う掛け声と共に一体の魔物へ走りより距離を詰めるフォーゴ。

 一気に間合いを詰められた魔物はビクッと後ろへ飛ぼうとするが、


「おせぇえ!」

 フォーゴは駆けた反動を使い魔物の腹へ思い切り回し蹴りを叩きこむ!


 ギャイン! と叫び声をあげながら吹っ飛んで行く魔物を追いながら呪文の詠唱を始めた。

 

 飛ばされた魔物は壁に当たり、地面に降り立つ事無くそのまま追いついたフォーゴに串刺しにされる。

 そして剣を突き立てたまま、


「もっかいだ、【アインエッシュルング】」

 ゴゥッ! と音を立てて燃える魔物、断末魔の叫びも無かった。


「ツヴァイ」


 剣を振り抜き、残りの一体を見据える。

 魔物は態勢を低くし、唸り声をあげてフォーゴを警戒していた。


 緊張に耐えられなかったのか吠え声を上げながら魔物は突進してきた。

「ふん」


 フォーゴはその場を動かず、突っ込んでくる魔物を見据えていた。

 魔物は早く低く突撃してきた、狙いはフォーゴの足。

 だがその必死の特攻も届く事は無かった。


 牙が足にかかる寸前フォーゴの剣によって地面へ縫い付けられており、口から血の泡を吹きながらそれでもなお進もうとあがいていた。

 ガチンガチンと必死に喰いかかろうとする魔物を見降ろしながら、


「あばよ」

 とフォーゴが術を発動させる。

 剣を伝わり煉獄の炎が魔物を消し炭へとかえた。


「エンデ……」

 ヒュッと剣を振りカスチゴへ向けて言い放つ。


「次はてめぇだ、カスチゴさんよ」


「中々、強者のよう、だな、我は強、いぞ」


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