第3章 ⅩⅢ幕 爆発と過去と騎士
「お、なかなかいい格好じゃねぇか嬢ちゃん」
ひゅう、と口を鳴らしながら全身を覆う甲冑に身を包んだフォーゴが姿を現した。
「思った通りここ剣だけじゃなくて鎧なんかも置いてあるんだな。やっぱこっちのがしっくりくるぜ」
ガチャガチャと甲冑を鳴らしながらクレンに近寄って来ると、
「そうだ、嬢ちゃんでも使えそうなエモノも見つけて来たぜ」
ひょいっとクレンに鞘に収まった小振りの剣を投げるフォーゴ。
「っとと」
それを慌てて受け取ったクレンは鞘からスラリと抜き放った。
シンプルなショートソードといった所だろうか、特に変わった所も無い剣だった。
「こんなの渡されても困るよ、ボク剣なんて生まれてこのかた使った事も握った事もないんだから……」
チン、と剣を鞘に納めてからクレンは戸惑ったように言った。
「んぉ、そうだったのか。この時代は甘ちゃんばっかりかよ、まったく情けない話だぜ。まぁでも護身用にぶらさげとけ、何かあった時にきっと助けてくれるはずだ」
ひらひらと手をふりながらフォーゴは言った。
「う、うん。わかったよ」
クレンはその言葉にとりあえず適当な返事だけを返しながら剣を腰脇に紐でくくりつける。
「あれ、そういえばアウラは?」
物色するのに夢中で気付かなかったがアウラの姿が見えない。
「アウラでしたら、ほらあそこですわ」
そう言うとイデアはもぞもぞと動く大きめの袋を指差した。
ちゃっかりアウラも物色に加わっていたのだった。
「アウラー出ておいで。何かいいの見つけたー?」
ピタっと袋の動きが止まり中からアウラが出てきた。
「クレン様ーイデア様ーこれ何か分かりますですかー?」
アウラは自分の頭と同じくらいの小さな物体を抱えてふよふよと飛んできた。
その物体は小さな石ころのようだったが短い紐が付いていた。
「これって爆弾?」
クレンは昔これと似たような物を文献で見た事があった。
紐に火を点けその火が本体まで達すると爆発するという代物だった。
「アウラ貸して、それと炎の矢一本だけ出せる?」
「はいですー」
アウラからそれを受け取ると炎の矢で紐に火を点けると開いていた穴の外へ放り投げた。
「あれはなんですの?」
不思議そうに投げた先を見つめるイデアとフォーゴ。
「まぁ見ててよ、ボクの思った通りならもうすぐ……」
クレンは言いながらニヤリと不敵な笑みを向けた。
そして数秒後……。
チュドォォォン……
穴の向こうで小さな爆発音が響いた。
「ビンゴ!」
やはり思った通り爆弾だった。
「「「おおおお!」」」
イデアとフォーゴ、アウラまでもが歓声を上げる。
(でも長い年月が経ってるはずなのによくしけらなかったな……)
ふぅ、とクレンが息を吐いたその時だった。
グガァァァァアア……
遠くで獣の吠え声がした。
「うわ……今ので気付かれちゃった??」
「いや、この声は遠い。音に反応したのは事実だがここまで来るってこたーねぇだろうな」
その言葉を聞いて胸をなで下ろすクレンだった。
「しかしこれはボクでも使えそうだ。この袋ごと貰って行こうっと」
クレンは爆弾の詰まった袋を背中にかけて言った。
「んじゃそろそろ行きますかね?」
フォーゴも先ほどの剣を片手に早く試し切りしたくてたまらないといった表情だった。
かくてクレンは学生らしさなど欠片もない立派な冒険者となったのだった。
「こうしているとイーグニスを思い出しますわ」
歩きながらイデアがぽつりと言った。
「どうしてあんな事になってしまったのでしょう……グランツは騎士団のよき手本でした、そしてグランツと共に騎士団と王朝を支えてくれていたフォーゴ。都には活気があふれ笑いに満ちておりました。それが……何故なのでしょうね……」
悲しそうに前を見つめぽつぽつと語るイデア、涙こそ見せていなかったものの未だに自分の国が戦火に巻かれ滅びた事を悔やんでいた。
「うるせぇ、あんたがどうこう言って悔やんでもイーグニスはもう無ぇんだ。それにグランツは裏切った、あんな男の事思い出すだけ不幸ってもんだぜ」
ぽりぽりと頬を掻きながら冷たく言い放つ。
だがそれが彼なりの優しさなのだろう、どうにか慰めようと言葉を選んでいるのがクレンには見て取れた。
「フフフ、そうですわね。相変わらず手厳しいのですね。しかし何度も言っておりますが騎士たる者、女性には優しくすべき事もあるのでございますよ?」
そう言うイデアの横顔はそのやりとりさえも懐かしんでいるようだった。
「…………」
イデアのその言葉には反応せず無言でフォーゴの歩みが止まる。
「どうした……ん……」
クレンが問いかけようとしたがフォーゴの手でクレンの口が塞がれる。
「何か……来る」




