第3章 ⅩⅠ幕 物色
「あ、ちょっとまってよ!」
クレンが止めるが既に遅し。
「んぉ? まだ何か用事があったのか?」
返事をしたのはフォーゴだった。
フォーゴは頭をボリボリと掻きながらイデアへと顔を向ける。
「なぁイデア、一体全体何がどうなってやがるんだ? この時代に魔物や魔法、さらにはイーグニスまで存在が知られていないなんてよ。そのくせ、そこかしこに魔力の残滓が漂ってるわ魔物もホイホイ沸いてくるわでどっちが本当なんだ?」
さっぱり分からないというように肩をすくめるフォーゴ。
「私もそこが理解に苦しむのですわ。この神殿には例え残滓といえど魔力が流れております、魔物は恐らく時空の歪みが原因なのでしょうが……」
うーん、と考え込むイデアとフォーゴ。
その横でうーん、と真似をするアウラ。
そんな二人と一匹を眺めながらクレンはこの世界には何かがある、漠然とだがそう思い始めていたのだった。
「それにしても暗いな、何でここだけ明かりが無ぇんだ?」
じっと部屋の暗がりを見つめるフォーゴ。
「明かりつける?」
そう言うとクレンはイデアを見る。
クレンの言わんとする事を察しイデアは魔法の詠唱を始める。
「【ルーイヒリヒト】」
詠唱を終えたイデアがぽつりと術を発動させる。
「明かりの魔法か、助かる」
フォーゴがイデアより生まれた掌の光を見る。
「あれ? でもこの程度じゃ多分明るくならないよ?」
とクレンが横から言う。
「ご心配なく。私に任せて下さいませ?」
不敵にニヤリと笑うとイデアは掌の光を部屋の奥へと投げ入れた。
ふよふよと漂うその光はやはり部屋全体を満たすには程遠かった。
「【グロース】!」
イデアがそう唱えると空中で漂っていた光の玉がまばゆい輝きを放ち始めた。
輝きが収まるとその光はバスケットボール程の大きさまで膨らみ、それが煌々と部屋全体をあます所なく照らし出していたのだ。
「ふわぁ……凄いやぁ……」
クレンが感嘆の声を上げた。
「先ほどの爆発魔法と同じ要領なのですが、今回は時間差で出力を上げたのですわ」
イデアがふふんと胸を張って言った。
「ここは……倉庫みたいだな」
フォーゴが明るくなった部屋をぐるりと見渡す。
部屋には木箱や袋、金属で出来た重厚な箱などが積まれていたのだ。
「ちょうどいい、何か使えるものは無いか見てみるか」
そう言うとフォーゴはガサガサと物色し始めた。
「ちょっ、ちょっとフォーゴ! それって窃盗になるんじゃ無いの?!」
慌ててクレンが止めようとする。
「そうですわね、為になる様な物が有ると良いのですが」
王女であるイデアまでもがフォーゴの言葉に賛同し手近な木箱や袋を漁り始めたのだ。
漁ると言っても実体が無いイデアでは箱を開ける事など出来ないので顔を突っ込んだりして中を確認するという光景になるわけだが。
「イデアまで! そこは止める所じゃないの?!」
一緒に止めてくれるだろうと思っていたクレンはイデアの行動に戸惑っていた。
「今は非常時ですし……細かい事を言っている場合では無いと私は思うのですが」
しれっと言い切るイデア。
「そうだぜ、 それに俺達が死んじまったら元も子もないだろうが、第一こんな所誰も管理しちゃいねぇよ」
そばにあった木箱を蹴り倒しながらフォーゴが付け加える。
(うーん、まぁそれも一理あるかなぁ)
クレンが腕組みをしながら考えているとフォーゴが突然大きい声を出して二人を呼んだ。
「おい! こっちへ来てみろ。いいもんがあったぜ」
フォーゴの方を見てみると木箱の上に腰を下ろしふたの空いた金属製の箱をガンガンと蹴っていた。
「なになに? おたから?」
クレンが目をキラキラさせて近寄る。
先ほどまで漁るのを止めていた者の言葉とは思えない。
「この箱はなんなのですか? 他にもいくつかあるようですけども」
イデアもフォーゴの元へと近づいて行く。
するとその箱の中には一振りの剣が収められていた。
「こいつは結構使えそうじゃないか?」
言いながらその剣を手に取り光にかざす。
その剣は光に照らされてキラキラと輝いていた。
まるで久しぶりに光を浴びた喜びで体を震わせるかのように。
「他にも何本かあったんだがこいつだけ金属の箱に入ってたんだ。意味深でそそるだろう?」
キラキラと輝く剣を見ながらニヤっと笑うフォーゴだった。
その剣は特殊な形状をしていた。




