表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/58

第3章 Ⅷ幕 ヒーロー

 キュドドドドドッ


 ミノタウロスの背中が突如として爆ぜた!

 

 ォオオオオン!


 ミノタウロスが一瞬身を崩した所をイデアは見逃さなかった。


「【フランメシュペーア】! アウラ! 行きなさい!」

 あらかじめ唱えておいた魔法を解き放つ!

 イデアの周りに十本程の小ぶりの炎の槍が出現しもだえるミノタウロスへ突き刺さる!

 そしてその槍に交じりながらアウラが飛んだ。


 槍が体に次々と突き刺さりそして爆ぜる。

 身を焼かれ怒りの咆哮をあげるミノタウロスの口の中へアウラが飛び込む。

 至近距離で炎の槍が炸裂した為クレンにも熱風が届く。


「熱い熱い! ってアウラ食べられちゃったけど……?」

 イデアの方を向いてあっけに取られるクレン。


 しかしイデアは表情を変える事は無くアウラが飛び込んだ口を見据えていた。

 ミノタウロスはしきりに喉を掻き毟っていた。


 やがて胸から上が膨らみ、


 ゴパンッ!


 という音と共にミノタウロスが弾けた。


 眼球や弾けた脳味噌、肉や内臓などが血飛沫と共にボトボトと降り注ぐ。


 それと同時に後ろで唸り声を上げていたミルメコレオが突如襲いかかって来た。


「うひぃぃぃ気持ち悪いぃぃくんなあああ」

ミノタウロスの血と肉が降り注ぐのもお構いなしにクレンは走り出す。


「クレン様ーヤツの体の中で炎の矢を乱射してきましたですよー必殺アウラカノーネなのです! だいじょぶですかなのですよー」

 

 死骸となったミノタウロスからアウラが飛び出してきた。


「血みどろだけどなんとか大丈夫だよおおお」

 上半身が弾けながらも立ち尽くすミノタウロスの横をひいひい言いながら走り抜けるクレン。


 そして魔法でミルメコレオを牽制しながら追従するイデア。

 その時だった。


「こっちだ! 早くしろ!」


 ミノタウロスが開けたのであろう壁の穴から一人の男が二人を呼んでいた。

 クレンはその男の元へ走り寄りそのまま穴へと飛び込んだ。


 穴の中は暗くてその男の顔はわからなかったが……


「喋るな。息も殺せ」

 男はそう言うと壁にぴったりと張り付きブツブツ言っていた。


 ミルメコレオの足音が近づき、そして壁の穴から獅子の頭が覗き込んで来た。


「~~!!」

 

 クレンは漏れそうになる自分の声を必死で押し殺していた。

 

 ミルメコレオはこちら側を窺っていたがしばらくして諦めたのかスッと頭を引き抜きカサカサと去って行ったのだった。


「もう喋っても大丈夫さ」

 言われたクレンはぷはぁーと息を吸い込んだ。


「助けてくれてありがとう。でも貴方は誰?」

 まさかそんなはずはない、ここに居るはずが無い。


 淡い期待を必死で押し殺し謎の男に尋ねた。


「嫌だなぁ、この俺を忘れちゃったって言うのかい? こっちじゃ暗いからそっちへ行ってもいいかな?」


 クレンに話しかけるその声の主は少しためらっていた。


「そ、そうだね、顔も見えないんじゃわからないから」


 そういわれた男はありがとう、と言ってこちらへ近づいてきた。


「あ……あ……」


 言葉が出て来なかった。


 言葉の代わりに涙が止めどなく溢れて来た。


「ヒーローは遅れて登場するものだろう? だから俺は常に皆の後ろを行くのさ」

 

 聞き覚えのあるセリフ。

 うんざりするほど聞かせれたセリフ。

 自分と同じ制服。

 人を小馬鹿にしたような喋り方。

 間違い、無い。


 そこにいたのは誰でもない。


 幼馴染のような、毎日遅刻して一緒に走ったカイルがそこにいた。


「分かってくれたかい? 無事だったようだねクレン」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ