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第3章 Ⅳ幕 歪み

「うん、呪いが何さ! 魔法が何さ! どうせならモンスターでも魔物でも出て来くればいいじゃない! その方が盛り上がるよ!」


 おー!とばかりに拳を突き上げずんすんと先へ進みだすクレン。

 こういう状況の場合、そのような事は極力言わない方がいいのだが。


 イデアはふとそんな事を考えていた。

 生前は魔物がはびこり、争いが絶えず、死が溢れていた時代。

 悪い出来事を言ったりそれを助長するような事を言うと、多かれ少なかれその通りになってしまう事例がよくあった。


 スタスタと前を行くクレンを見ながらイデアは軽い胸騒ぎを感じていた。

 しばらく歩き通路らしき所を抜けると天井の高い大きな広間に出た。

 正面にはランプで照らされたステンドグラスがキラキラと輝き、広間には朽ち果てた長い椅子、壁には絵画がいくつか吊り下げられており荘厳な雰囲気をかもし出していた。


「ここは……大聖堂でしょうか……」

 イデアが少し興奮した様子で言った。


「荒廃していますわね、当たり前なのでしょうけど……すこし見ても宜しくて?」

 遠慮がちにクレンとアウラに尋ねるイデア。


「「どうぞなのですよー」」

 アウラとクレンは口調を合わせて答えた。


「ありがとうございます、少しで終わりますのでお待ちくださいませ」

 フフッと小さく笑いながら少し離れた絵画の元へ移動するイデア。


「ボクも見てくるからアウラは適当に休んでていいよ」

「はいですー」

 言われたアウラはそこにあった朽ち果てた椅子の一部に羽を休めるように降り立った。


 ゆっくりと歩きながらクレンは掛けられた絵を近い順に見て回っていた。

 そこには首が二つあり、背中から蛇の頭を複数生やした犬の姿が描かれた物。

 天使が描かれた物。

 牛の頭をした人間が獅子の頭をもち体は蟻という不気味な生物が戦っている様子が描かれた物。種類や画風がまるで違う様々な絵が吊られていた。

 

 やがて他の絵を数枚合わせた大きさの絵の前にたどり着いた。


 その絵には巨大なトカゲ――いや、これは龍だろう、と城と兵士達が描かれていた。

 どうやら争っているようだ、龍が城を襲い兵士達が迎え撃っている、そう見て取れた。


「これは邪龍ですわ、人々に仇なす存在。自らこそ生物の頂点と奢り人々を虫けらのように叩き潰す。そんな邪悪な龍……」

 後ろから突然イデアの声がした、この絵を説明してくれていたのだ。


「こういった龍達は幾人もの多大な犠牲を払い討ちとめられ、その魂は封印されたと聞き及んでおります。中には複数の龍の魂をまとめて封じた個所もあるそうですわ」


「ご説明痛み入ります、我が姫よー」

 ははぁーとおどけて頭を下げるクレン。


「そうかしこまらずとも良い、おもてをあげよ」

 プッと吹き出しながらクレンは言われた通り顔を上げた。


「何故笑うのですか! クレンがやるから付き合ってあげたのですよっ」

「いやぁ、イデア王女様も随分柔らかくなってきてくれたなぁと思いまして」

 うひひひと変な笑いをしながらクレンは言った。


「正直な所堅い話し方は好きではないのです、ですがなにぶん体に染み付いてしまっておりまして」


「王女様だもんねー大変そう。所でこの龍達はどこに封印されているの?」

 クレンは素朴な疑問をぶつける。


「そうですね。洞窟や祠、後はお城の地下深くに封じられていると聞き及んでおります」

 記憶を辿る様にお得意のピンと人差し指を伸ばすポーズをしながら話すイデア。

 その時だった。


 ュオン! ヴァヴァヴァヴッ


 先ほどとは比べ物にならない悪寒がクレンの体を駆け抜け、全身が硬直する。


「イデア様クレン様! 上ですー」

 離れた所にいたアウラが叫ぶ!

 

 ハッとしながら上を見上げるクレンとイデア。

 天井の近く、大聖堂の明かりで照らされたその空間が歪んでいた。

 ぐにゃりと空間が捻じれ、まるで絵をぐちゃぐちゃに書きなぐったような光景を二人は見た。

 歪みは周囲の物を巻き込みながらどんどん広がり、その周りにはバチバチと紫色の電光が走っていた。


「んなっ! なにこれぇ!」

 クレンは後ずさりしながら驚愕の声を上げた。


「これは……時空間が捻じれております! すさまじい魔力が放出されておりますわ!」

 イデアが歪みを睨みつけながら答えた。


 あわててアウラの元へ駆けよる二人。


「ここに居ては危険ですわ! 逃げましょう!」

「異議なし!」

「逃げるのですー、すたこらなのですよー」

 二人と一匹は急いでその場から逃げ出した。


「でもどこへ?! さっきの所は埋もれてて行き止まりだしここまでは一本道だったのに!」

 クレンの考えは現代っ子だった、その言葉に答える者はおらず、


「【グロース・エクスプロズィオ】!」

 返答の代わりにいつのまに唱えていたのか、イデアの魔法が発動する!


 イデアの周りに中くらいの火球が浮かび上がり、前方にある壁に向かい一直線に飛んで行った。


 そして…… 

 

 ゴゴゴウン!


 轟音を立てて火球が弾ける、そしてガラガラと壁が崩れる音。


「こっちですわ! 急いで下さいませ!」

 未だ粉塵舞う即席の道へとイデアが誘導する。

 

 穴へ飛び込む一瞬、クレンは雷光あげる歪みから複数の何かが落下したのを見た。

 良い物ではないだろう、と直感したクレンはそのまま走り大聖堂を後にしたのだった。


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