第3章 Ⅲ幕 強硬手段
「どうするー? この先は埋まっちゃってるって言うし後ろも多分埋まっちゃってるんだと思うよ? ねー? アウラー」
言いながらアウラを指先でつんつんと突く。
「あぅあぅ、クレン様おやめ下さいです。くすぐったいのですよー」
突かれるたびに体をウネウネさせるアウラが可愛くてついいじってしまう。
だが横でイデアが何やらぶつぶつ呟いていたのをクレンは聞き逃さなかった。
「何をぶつぶついっているん……ちょっ! ちょっとまって何する気!?」
見ればイデアの体はほのかに光を強めていた。
そしてイデアが一言。
「【ヴェニガ・エクスプロズィオ】」
キュドドドドドッ!!
遅かった。
イデアは壁に向けて魔法を解き放っていた。
「うきゃああああああ!!」
奇声をあげてクレンは数メートルほど爆風に吹き飛ばされた。
幸いとっさに体を丸めたので軽傷で済んでいた。
「んなにすんのおおおおお! ボク生身の体なんだよ!? そんな至近距離で爆発魔法つかわないでよ……ってあ、あれ……?」
目の前でイデアがじとーっと薄眼で見下ろしていた。
先ほどの距離から数十センチしか離れていない。
実際の所吹き飛んでなどおらず、爆発の反動ですこし尻もちをついた程度だった。
「貴女は何を仰っているのですかクレン……?」
半ば呆れた表情でイデアは言った。
「今凄い爆発しなかった……?」
クレンが首をかしげながら尋ねた。
「生身の人間が側にいるのにそんな爆発魔法など使いませんわ、今のは爆発の威力を最小限まで落としたもの。古い神殿なら壁も薄く少なからず風化もしていましょう、その程度この威力で十分でありません事?」
もくもくと土煙をあげるその向こうにはぽっかりと穴が開いていた。
「わぉー穴が開きましたですよイデア様ー」
アウラは特別驚いた様子も見せずその穴へ飛び込んで行った。
「あ、ちょっとまってよアウラ!」
続いてクレンも飛び込む。
「あの二人は本当に緊張感と言う言葉を知らないようですわね」
ため息交じりに呟き後を追うイデアであった。
穴をくぐるとそこは先ほどとは若干趣が違うものの、やはり神殿の中のようである。
中に入ったクレンはグルリと辺りを見回した。
「あれー、どうして明かりが点いているんだろ」
ここは埋もれていて誰の手も入っていないはず、それなのに明かりが点いているのだ。
「これらもやはり古代の遺物、おそらくこの神殿内部にはこういった類の物がいくつも配置されているのでしょう。周りの大気から魔力を吸い上げ自動で炎へと変換する、もっとも魔力を持たないこの時代の人間達には理解不能と思われますが」
ランプをいじくり回しながら話すイデア。
「それってつまり永久機関て事じゃん。魔法すごー古代すごー」
おぉーと言いながらイデアと同じようにランプを見るクレンだった。
「いえ、永久と言う事ではないのですよ。術式を組み込んだ所で効果が続くのはせいぜい五十年程度の物ですわ。それがこの時代になってまで稼働していると言う事はこの神殿自体に大規模な魔法が掛けられている可能性がありましょう」
イデアはそこで一度言葉を切り一瞬考え込む仕草をした後、
「他に考えられうる事は……呪い……それも時間軸を捩じ曲げる程の強力な呪い……」
イデアは考えうる限りの事をクレンへ話した、それがクレンに恐怖を与える事になったとしても。
「……ふぅん、呪いね……」
先ほどとは打って変わって小声になりうつむくクレン。
(怖くはない……むしろ少しワクワクして来てる……)
変な事が起きれば起きるほどレミに近付いている気がする。
レミが消えた事自体異常な事なのだ、ならば異常な事を追っていけば何か分かるかもしれない。
クレンはそう考えられるぐらい強くなっていた。
『立ち止まっていては何も変わらない』イデアの言葉がクレンの胸の中に繰り返す。
「イデア様ークレン様が何だか怖いですよー……」
そう言ってアウラがイデアの後ろへ隠れる。
「クレン、進みましょう。よろしいですね?」
イデアはクレンへ返答を促した。




