第2章 Ⅵ幕 アウラ
もとはと言えばクレンが悪いのだが。
当の妖精はと言うとそんな二人をじっと見つめながらふわふわと宙に浮いたままだ。
「何て名前にしようかなー、イデア2号とかどう?」
イデアの反応を見るクレン。
「素晴らしいですわ! この私の名前を受け継ぐ事が出来るなんてとても光栄な事ですのよ!」
(あぁ……言わなきゃよかった……)
「じょ、冗談だよ! もっと違う名前にしようよ!」
イデアには冗談が通じないのだろうか、クレンは少し不安を感じながらあわてて訂正する。
「あら? そうですか……とても良い名前だと思ったのですが……」
王族とはみなこうなのだろうか。
「あのぅ……」
消えてしまいそうな声がきゃあきゃあ騒ぐ二人に割って入る。
「「はい!」」
またしても同時に声をあげる二人。
その声の主はもちろん妖精だった。
「あの、自分は何をしたらいいです?」
妖精とはいえ魔法で生成された存在だ。
何かしら役割を与えられるのだろうとこちらをじっと見つめてくる。
色合いはやはりイデアと同じ白みがかった淡いオレンジ。
耳はピンととがり、せわしなく背にある羽を動かしていた。
「えぇと、ご用件はそちらのクレンに聞いて下さいまし」
「えぇっ! ボク?!」
元はと言えばクレンが願った事、そうなるのが道理だった。
促されたクレンがおずおずと妖精の前に進み出る。
「えぇと、じゃあ初めに自己紹介するね。ボクはクレン、それでこっちのオレンジっぽい人がイデアだよ、よろしくね」
クレンは簡単に二人の自己紹介をした。
だがその紹介に不満を持つ者が一人。
「オレンジっぽい人とはいかがなものですか! 私はイデアリーベ・シュテイレ。イーグニス王国20代目国王クラウス・シュテイレが娘でございます。以後お見知りおきを」
イデアはそう言うとドレスの両端をつまんで広げつつ、軽く膝をまげて挨拶をした。
「はい、よろしくお願いしますです」
ぴょこんとお辞儀で返す妖精。
イデアの血からの魔法だろうか、この妖精にも少しながら気品を感じる。
その光景を見ながらクレンは思っていた。
「シェルムなんて名前どうかな?」
思いついた名前を口にし同意を求めるクレン。
「悪戯っ子ですか。でもこの子は悪戯する感じではありませんわよ?」
妖精をつんつんと突く仕草をしながらイデアは言った。
「う~~ん。じゃあ何がいっかなぁ……」
イデアに遊ばれている妖精を見ながら真剣に考える。
「決めた! アウラにしよう!」
一瞬の閃きをクレンは言葉にしていた。
「オーラですね、それなら宜しいかと思われます」
にっこりとクレンに笑顔を投げかけるイデア。
「よし! 今から君はアウラだよ! よろしくねアウラ!」
ビシッ! と妖精を指差し背後に効果音さえ見えてきそうな勢いでクレンは言った。
「アウラですか、わかりましたです」
握手ね。と言いながらクレンはアウラの小さな手をキュッと握りる。
「それで自分は何をすればよいです?」
アウラは命令を求めていた。
「うーん……めいれいー……」
クレンは困ってしまった。
特に意味も無く呼びだしてしまったので何をして欲しいとも無いのだ。
「うぅ……いであぁあ」
助けを求めるようにイデアを呼ぶ。
「クレンが希望なさったのでしょう。ご自分で解決なさいな。ある意味これは魔法を使えるようになる練習としてお考え下さいませ。ひとつヒントをお伝えしましょう【命令は命令であらずとも良い】、ですわ」
しかしイデアは謎かけを出しただけで明確な助けはくれなかった。
「魔法を使えるようにって……それに命令は命令にあらずとも良いって矛盾してるじゃん……。お友達になってじゃダメなのかな……?」
クレンが自信無さ気にアウラを見る。
「クレン様、ご命令をくださいませ」
こめかみを押さえながらうんうん唸るクレンをアウラはただその一言のみで見つめていた。
「よし決めた。ボクの友達になってボクを助けてください!」
アウラに向かってぺこりとお辞儀をしながらクレンはそう告げた。
「わかりましたですよ、しかしクレン様トモダチとはどういった内容なのです?」
クレンの言った事はアウラにとって少し難しい表現だったようだ。
「仲間、もしくは従者と言う意味でございますわ。アウラの能力でクレンと私を助けてくれればよいのです」
イデアが横から説明に入る。
どうやら合格だったようだ。
「イデアありがとうううう助かったよう」
実際の所アウラに友達とはなんぞや。
そう問われてもクレンにはどう答えていいか分からなかったからだ。
少しクレンの意図とは違うが妖精に理解させるのにはそう言った方が伝わりやすいのだろう。
「わかりましたですよ、仲間=トモダチとして認識するのです」
アウラは目を伏せながら軽く会釈をしその命令を受理したのだった。




