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第2章 Ⅴ幕 新たな出会い

「ねね、イデア。この術消すときはどうすればいいの?」

 クレンは手の上でふよふよと漂っている明かりをイデアへ投げながら尋ねた。


「あぁ、それは消えろ、と念じれば消えますわ」

 イデアはそう言うと目の前に来た魔力の明かりを指でつん、とクレンの方へ押し戻した。


「そっか……ちょっとだけだったけどありがとね、とっても助かっちゃったよ。ごくろうさま」

 クレンはその明かりをあやすように指で二、三度なぞり消えろ、と念じた。

 フシュッと空気の抜ける音と細かな光の粒を残し明かりは消えた。


「なんか寂しいな、ただの明かりとは思えなかったよ」

 消えた光の粒子を追いながらクレンは呟いた。

「やはりイーグニスの血を継ぐ者、これだけで魔法の本質を見抜くとは」

 驚いた顔でこちらを見るイデア。


「本質?」

「はい、私が使う魔法の本質。それはイーグニスの血より流れ出る魔力で精霊へ働きかけるのです。その時使う魔法のイメージを強く意識しながら力ある言葉を術式に組み込む事により具現化、使役するのでございます。ですのであらゆる魔法には精霊が宿っている、と考えて頂いたほうが分かりやすいかと。しかしこれが一般の方や従者の扱う魔法となるとまた少し違ってくるのでございますが」

 人差し指を鼻の前でピンと立て説明するその姿はとても先ほどまではしゃいでいた人物とは思えなかった。


「て事はさっきのにも精霊がいたって事だね!」

「そうなります。しかしクレンが期待しているのとは違い、先ほどのはただ明かりとしての言葉しか組みこんでいませんので意思はありませんのよ?」

 

 うっ……っと言葉に詰まり下を向くクレンだった。

 はっと顔をあげると何か閃いたようにイデアへ詰め寄った。


「じゃあさじゃあさ! 意思があるように組み込めば精霊さんとおしゃべりできるんだね!?」

「えぇ、まぁそうなりますけれど……何故です?」

 怪訝な表情を浮かべながらイデアが聞き返す。


「だって精霊さんとお友達になっておしゃべりしながら行けば3人で進めるんだよ? 賑やかでいいじゃない!」

 まくしたてるクレンにイデアは切なそうな表情を浮かべた。


「何さ……その顔……」

「ひょっとしてクレンは友達が少ないのですか?」

「い、いるよ! 今はちょっと友達を増やしたい年頃なの!」

 つい先ほど友人から存在を忘れられたクレンとしては少し心に刺さった。

 イデアはその言葉に対して蔑みや憐れみと言った表情を浮かべる事は無く。


「さようでございますか……」

 切なそうな表情を崩さぬままだった。

「イデア、お願いできる?」

「は、はい。それはかまいませんが……どれくらいの大きさがよろしいのです?」

 

「大きさか、考えて無かったなぁ…………んじゃまぁ、適当な大きさでいいよ。あえて言うなら羽が付いた妖精さんのような感じに!」

クレンにとって精霊とはそんなイメージだった。

「コホン……では」

 イデアの空気が変わった。

 恐らく集中しているのだろう、切れ長の瞳を閉じ両手を広げ祈るように言葉を紡ぎだした。


「我が体に流れたるイーグニスの血よ、それに導かれし精霊よ、我の祈りに力を与えよ、そして明瞭なる汝の存在と意識をここに現わせ! 【クラインガイスト】」

 詠唱を終えるとイデアの体からまばゆい光が溢れだし、その光がクレンの目の前で集中していく。

 やがて光はグレープフルーツ大まで縮まりしばらく震えた後、ポフッという音と共に羽の生えた小人が宙に浮かんでいた。


「「出来たっ!」」

 イデアとクレンが同時に歓声をあげた。


「ん?イデア何今の出来たって」

 目を細めながらイデアに問いかける。

「いえ、その……。なにせ初めての術式ですので……私としても成功するか……あの……ごにょごにょ……」

 

 イデアはしまった! とでも言いたげに口を両手で塞ぎ、うつむきながら呟いていた。

 さすがは王族。

 上目遣いを忘れていない。

 そんな顔をされたら問い詰める事は中々出来ないだろう。

 これが人心掌握術というやつか。


 などとクレンは勝手に納得していた。


「イデアさっきから不安、不安て言うけど不安じゃなかったの最初の明かりだけじゃん! もしかしてイデアってあんまり魔法使った事無いの?」

 それでもクレンは疑いの目でイデアを見る。


「ち、違いますっ! そんな目で見ないで頂けませんでしょうか! あーゆーのは特別なのですわっ! 死んだのだって初めてなのですから……」

 

(怒ったり悲しんだり忙しいお姫様だなぁ)

 死んだ事を思い出したのかしょんぼりするイデアを見ながらクレンはそう思っていた。


「ご、ごめんよ。じゃあさこの妖精さんに名前をつけようよ!」

 急に湿っぽくなってしまった雰囲気を紛らわそうとクレンが提案する。


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