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007 【科学】VRMMO、【肉体】髪の毛/体毛

「ヘッドセット、なかなか完成しないな」

「納期を考えると、そろそろどうにかしないと」

 二人の技術者はぼやいていた。とあるゲーム会社から、最新のVRMMO専用機器として発注されているのだが、開発にかなり難航していた。

「従来型だとシンクロ率が足りない、だなんて言われてもなぁ」

「これ以上伸ばすとしたら、もう頭全体をピッタリと覆う、くらいしかないぞ」

「となると、髪の毛が邪魔になるんだよなぁ」

「客に禿になれ、って言うのもなぁ」

 はぁ、と溜息をつきあう。

「禿だ何だといえば、気苦労が多いと髪が薄くなるよな」

「そういうの、やめろよ。……ん?」

 片方が何かを閃いたらしい。携帯電話を取り出しながら、にやりと笑った。

「そうだ、逆に考えてしまえばいい」

「というと?」

「ゲームの方を変えてしまうんだよ、いっその事。ちょっと交渉してみる」


 後日サービス開始となったVRMMO「ゴッドグロウス」は、前代未聞の「禿の人専用RPG」として一世を風靡した。その内容も、モンスターとの戦いや国家間の戦争ではない。いかに自分の髪を伸ばし、維持し、綺麗にするかを競う、育毛ゲームとなっていた。当初こそ色眼鏡で見られていたが、主に高齢層に人気を博し、予想を上回る売り上げを記録することとなる。

「新規ユーザーも獲得できた」

「禿の人の『髪の毛がほしい』っていう望みも、まあ限定的にだけど叶えられた」

「ついでにわしらも、フサフサ気分をまだまだ味わえるのだ」

「それで会社にも利益があるのだから、もうウィンウィンどころではないな」

 定年退職した元技術者の二人は、仮想空間上の喫茶店でしみじみと語り合った。春風が彼らの髪を、ふわりふわりと靡かせていた。

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