005 【作風】架空戦記、【科学】ロケット
「ロケット兵器があったら……、戦争はどうなってただろうな」
「そんなもの、あるわけないだろう」
「仮定の話だ。ロケットに大量の爆弾を積んで、宇宙に打ち上げた後、落下させるんだよ。これ、かなり強力じゃないか?」
「確かに、実用化できるならかなりの戦略的価値は生まれるだろう……。ピンポイント攻撃が可能。他国も迎撃手段を整えられていないだろうしな」
「技術に予算に運用設備に、と手間はかなりかかるだろうが、もし実現していたら……」
「合衆国の侵攻を食い止める、同盟国の援護をする、とか……」
「そんなレベルで済むものか。敵の中枢を直接叩くことだってできるんだぞ?」
「ああ……そうか! なら、かなり早期に決着がついていたかもしれないな」
「しかも我が国がかなりの発言力を確保するに違いない」
「もしかしたら、世界の支配者になってるかもな!」
ひとしきり笑いあってから、ふぅ、と一息ついた。
「……さて、そろそろ現実に戻ろうか」
男は軍服の襟を正しながら、机上の地図に目を落とす。首都は、敵軍を意味する記号に取り囲まれていた。
「もういっそ、ロケットで逃げるか?」
「それか架空戦記の妄想に、だな」