表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/60

004 【人物】アンドロイド、【心理】ノスタルジー

 最新鋭アンドロイドの発表会は、白けた雰囲気のまま進んだ。件のアンドロイドはデザインに真新しさがあるわけでもなく、機能上もたいしたことができるわけでもない。居並ぶ記者達は欠伸をかみ殺していた。電子手帳に落書きする者もいれば、人工鼓膜の音楽再生機能で暇を潰す者もいる。

 それでも途中で帰らないのは、開発会社の名誉会長が自ら進行を行っているからだ。介助ロボットに支えてもらわねば立つことすら叶わない老人は、人工声帯を精一杯振るわせ、アンドロイドの紹介を執り行っていた。何か裏があると考えて然るべきと、皆が思っていた。

「さて、皆さん。本機の最大の見所は内部構造にあります」

 機体の腹部にあるハッチが開け放たれた。スポットライトで照らされたその中身に、会場中の視線が釘付けになる。そこには無骨な箱がいくつか押し込められていた。電子回路らしきものは一つも見当たらない。空洞の多さも目立った。会場が俄にざわつき始めた。

「そう、一見すればガラクタを詰め込んだようにしか見えない。それなのにアンドロイドとして動く。内部デザインにも拘った一品です」

「なんというか……、まるで大昔の漫画のようですね」

 一人の記者が漏らした一言に、会長は大きく頷いた。

「私は元々、このようなものが作りたかった。百万馬力を備え、自由自在に空を飛び、優しき人の心も持っている。お尻に機関銃を仕込むのには苦労したよ」

「しかし、どう見てもそのようなスペックを持てる構造には見えませんが? 電子回路や内蔵型炉心はどこに?」

「それらが存在しないかのように見せるのは、なかなか大変だった。蓋一枚開けたら最新の精密機器、なんてのでは興醒めだからな」

 鼻を啜ってから、言った。

「非現実的なメカニズムで実現される、非現実的なスペック。私が子供のころ憧れたロボット、今でいうところのアンドロイドは、そうでなくてはならん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ