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War Dress

 麓の陣内の狂騒が終わるころ。

いつの間にやら、門を防御していたこちらの町民たちも、残りひと桁余りまで減らされてしまっていた。

 いくら、相手の兵を制圧したとしても、結局のところゲームであり明確に定められた勝利条件を満たせば、ひっくり返ってしまうわけで、かなりヤバい状況でもある。

 だが、それについては問題ないだろう、破壊的な円陣が回りだしたときには、ひとり輪より抜け出して、坂を駆け上がるその武者の姿を俺はしっかりと確認していたからだ。


 彼女はゲームのステータスにものを言わせた全力以上のスピードで空を飛ぶがごとく長い長い石段を走破した。

 そして、最後の一歩は目測を誤ったのか、勢い余って必要以上に高く飛んでしまう。慌てて空中で一回転して着地するが、それでも勢いを殺せず、金属製の靴に履き替えた足元で年月を刻んだ石畳の表面をガリガリと削り、ようやく止まった。

 そして、にっかりわらって、遅れてきた最後の役者は舞台に残った全員に宣言する。


「ヨシ、ボク来たよ!」


 ……訂正しよう、俺一人に告げた。


 ご存知、俺の幼馴染こと貴志雛姫である。


 口調はいつも道理であるが、雰囲気は一味違う。


 肩口で結わいているだけだった髪は、気合を入れるときにするポニーテールよりも1段階上の本気モードとでもいうのだろうか。カリンの手により蘇芳よりも複雑かつ華麗に結い上げられている。

 その銀色の髪の輝きが神聖さを一層増すように、永遠に咲き誇る月下美人の髪飾りが添えられていた。

 戦化粧により普段より何割増しかはっきりした目鼻立ちで、のんびりとした雰囲気は口調を除きかき消され、すぐ目の前の姫武将にも劣らない近寄りがたい存在感がある。


 言うならば、首から上の完全武装。

 しかも、装いもまたそれに負けず絢爛だ。

 芸術的な細工や刺繍が施された戦装束。繊細で華やかな芸術品の中に、武の力強さが同居している。


 いつもゆったり着ていた真紅の着物をきっちり着用し、その上にこの場に似つかわしくない西洋鎧を着こんでいる。

 更に現代風のフードつきのコートのようにカスタムされた陣羽織を羽織っていて、和洋折衷というには少しばかりこんがらがった感じだが、均整のとれた長身には不思議と似合っていた。


 銀よりも白く輝く、真銀鋼で作られた軽鎧。

 鋼より硬く、羽のように軽く、術系の防御力が特に高い一品だ。

 カリンの伝手で遥か遠くミズガルズユーラシアの地より手に入れたものを、鍛冶師プレイをしている奴が貴志用にアレンジしたものである。

 もともとはフルプレートの全身鎧であったが、苦しい・暑い・動きにくいという本人の所感から一度バラバラに分解され、打ち直しも含めた全面改装をされた。

 結果、首から胴を保護する部分と、膝から脛を覆うすね当ておよび靴、そして手首から肘までを保護する部分のみに限定された軽鎧になった。

 貴志の自由過ぎる動きを極力阻害しないように稼働域を広げて、着たままストレッチができるレベルまで作りこんだものになったワンオフの専用防具。

 結果として上等なブリガンダインのようになったので、プレートで構成されたもともとに比べると鎧としての堅牢さが低くなったり、可動部分が極端に多くなったのでガチャガチ喧しくて隠密行動に向かなかったりと欠点は多々できてしまったが、最大の長所である身軽さを殺すことなく、高い防御力を得ることに成功している。


 一応、それらも含めてゲーム的な表記をすると装備アイテムは頭部。胴部。上衣。下衣。腕部。脚部。の五か所になる。

 ちなみにヒナキチ君の今の装備はこんな感じ。


 頭部・『悠久の月下美人髪花飾り』

 胴部・『真銀鋼のブリガンダイン』

 上衣・『紅梅』

 下衣・『夕月夜ゆうづくよ襦袢じゅばん

 腕部・『真銀鋼の手甲』

 脚部・『真銀鋼のグリーブ』 


 それに加え装飾品がプレーヤー共通で3枠ある。

 ちなみに現在1つは俺もこいつもパンツ固定になっている。


 『白梅の下着』

 『幻陽炎の陣羽織』

 『紅玉月の雫石』


 中には、小笠原湖雪の『一張弓』に近いレアリティのものもあるが、それなりに手に入るものもある。

 選択の基準は本人が使いやすかったり、気にいっていたりとなっているので効率とか安定とか求めるプレーヤーからすると眉をひそめるかもしれない。


 ちなみに、この前までは、武器も装備していなければ、半分以上空欄のままだった。

 もともと普段から本人的には自分を鍛えるという目的が第一にあったので、戦の最中はともかく、普段の狩りや、一対一形式の試合では装備品をあまり装備しないというとんでもないプレースタイルであるからだ。 

 しかも、デスゲームなってからも蓬さんの村まで慌てて身一つで来てしまっていたのでそのままになっていた。

 装備・消費アイテムのほとんどは、ボックスに入れずに普段は自領の倉庫内に置きっぱなし、こいつの100キロ入るアイテムボックスは基本的には釣り竿と、釣った魚を入れるぐらいにしか活用されていなかった所為である。

 そして、いまは境内でこんがり焼けたまま放置されている蘇芳が、国もとよりはるばる装備を運んできたので、今回の戦にはこうして完全武装で参加できているのだ。

 なんというか、ホントやめてほしい、蓬さんところで危うく死ぬところだったしな。


 こうして、そんな遠目にも眩しい銀と赤の目を引く存在に、戦場は一瞬にして緊張した。

 緊張したのだが。

 

「いやー、あんな全力で馬走らせたことなかったから、びっくりしたぞ。もう少しで、お尻が二つに割れるかと思った」


 本人はどこ吹く風。

 人間誰しも生まれたときから割れています。

 どうにも本人の緊張感が致命的に足りてなかったりする。

 はい、貴志君、もうすこし空気読んでね。と、アイコンタクトを送る。

 おおって表情をした後、大きくうんと頷いた。そして任せてよ、どんと白銀の鎧を叩いた。


「言われた通りやったよ。気分上々だぞ。ヨシ、見てたでしょ。大将も含めて三人もやっつけたぞ、えへへー」


 ほめてほめてーと、しっぽがついていたら、大きく左右に振れていたことだろう。

 あかん、まったく通じていない。そして、たぶん、首尾は上々と言いたかったのだろうと察する。


 そこでようやく、呆気にとられていた一人の武者が我に返り、呑気な闖入者に刀を向ける、一足飛びで乗馬ごと間合いを詰めると、袈裟掛けに斬りかかった。


 俺に見えたのはそこまでで、一瞬後には、武者は馬から投げ出され仰向けにひっくりかえり、後頭部を石畳に打ちつけられていた。

 顔には、貴志の鎧の余りで作成された、ガットレットの掌底がめり込んでいた。

 ただでさえ、拳の骨と同等に打撃に向いた箇所で鼻先を打たれただけでも痛烈なのに、とびかかった自分のスピードと馬の高さが上乗せされたら、それはもう必殺の一撃にひとしい。


『一行の仲間【ルート】が小笠原家武将【神田将監かんだしょうげん】を戦闘不能にしました』


 近隣に武名を鳴らした小笠原の勇将は見せ場もなく、この戦いより退場した。

 きゃー、殿素敵なのです、とごく一部から歓声が飛ぶ。


 なんだろう、誰かに問いたい。緊張感とかはどこに旅立ったまま、いつになれば帰るのだろうかと。


もう少し先で切った方が良かったかもしれないので、末尾は弄るかもしれません。


 真銀鋼は、いろんな作品によくでてくるあれですね。灰輝銀というか魔法銀とうかモ○ア銀。この固有名詞が普通に出てくるとみんな伏字にしなくていいのかと不安になります。ミズガルズは中○くにです。

魔法系は避けるの大変なので、耐性の高くて軽いの探していたらなんか貿易で変なものゲットしてしまった感じ。


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