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連理の誓い

ぎりぎりーセーフ。あれだね、歓送迎会というものどうしては纏まらないのだろうか。


注意・雄の三毛猫の存在並みに珍しく連日更新しております。ご注意ください。

 計4騎の武者達は下から見上げでもしたら首を痛めそうな急勾配などまるで無いように、平地を走破するがごとく駆け上がる。

 現実には不可能なそれはいうまでもなく〈馬術〉系の上位スキルである〈小笠原弓馬術おがさわらきゅうばじゅつ〉の効果の一つであろう。

 その突進の威力は野戦で瞬く間に全軍を壊乱させたほどである。


 普通なら槍を重ねて壁を作るがごとく兵を固め騎馬の勢い毎を殺すところだが、そんなもので止まるとも思えない。


「まともに付き合ってられるかよ。カリン!」


「はい、なのです!」


 俺と同じく門の前から退避していたカリン。

カリンは諏訪の町民に再度、投石や射撃そして、丸太などを落とす指示を与える。


 先ほどに倍する勢いで、さまざまな攻撃が小笠原湖雪とその随伴の三人に殺到する。

 いかんせん、的が少なくしかもとんでもない速さで動きまわっている。こちら側の腕が悪いのと合わさって、みるみる彼我の距離が縮まっていく。


「どうにも、錬度が足りないな」


 まぁ、兵士じゃないし当たり前。

 しかも、カリンの術で綺麗さっぱり障害物を麓まで押し流してしまったため、遮る物の殆ど無くなった参道を効果的に使い、左右に不規則に馬を走らせつつ的を絞らせない。

 こりゃ、あたらんわ。

 あっさり使わされてしまったが、盤面を一度にひっくり返すための奥の手の一つだったからな。バリケードを壊滅させるほどの勢いはマイナスに働いてしまっている。


 それでもみな手を止めず、なんとか一つでも当てようと攻撃を続ける。


 ごく間近で豪と不穏な風切り音がした。

 心臓が若干口から零れる程驚き振り返る。

 大の男でも苦労するだろう大弓を打ったのは蓬さん。ついでに、放たれた矢は、スコンと小気味いい音を立てて、石段に突き刺さっている。


「……」


 矢羽根が風に揺れた。

 当たったら、中身毎吹き飛ばしそうな豪弓だが、命中率に難がある。射手をじっとみてみる。


「…ううっ」


 耳の後ろまで真っ赤になってしまった。

 夫婦だもの、こちらの言いたいことが過不足なく伝わったのだろうよ、俺の嫁。親父殿は一流の狩人でしたが、娘様は控えめに言ってどうにもあまり上手くない。

 いや、小さな体で、あんなでかい弓当たり前のように弾けるだけすごいんだけどね。


「いやー、根元まで突き刺さっているな。凄い威力だったぞ蓬―」


 あかん。涙目になった。自分すらだませない嘘というのは人を怒らせるか傷つけるだけとかなんとか。

 というか、ちょっとまて、万が一手元が狂ったら、俺の頭消し飛んでいたのではなかろうか。

 

「こ、今度一緒に練習しような。取りあえず、今は投石に切り替えよう」


 今日一番の冷たい汗を背中に感じつつ、今後の命の保全のための提案をしておく。

 そして手元のアイテムボックスに手を入れてもらって中身を取ってもらいつつ、俺も手ごろなのを投げてみる。


「丸太が整いましたです!」


 流されたバリケード以外に、参道脇に寄せてあった物の用意が終わったみたいだ。


「よしいけ!」


 合図とともに何本もの丸太や岩を時間差でころがす。

 さすがに参道を広く使った回避は取るスペースはなくなる。

 空中にでも逃げないと回避はできない。

先ほどの2段ジャンプで逃げ場のない空中に跳びあがったら、撃ち落とせと。飛ぶユニットはどんなゲームでも弓に弱いのは鉄則です。

 

 左側をかけていた武者が弓を投げ捨て、石段に片膝をつくと、腰の刀に手をかける。


「ほう、〈抜刀術ばっとうじゅつ〉じゃな」


 いつのまにやら虎千代がこちらの傍にまで来ていた。

 知っているのか虎千代と言おうとして、ネタが通じないだろうからやめた。


 〈抜刀術〉珍しいというか使いにくいスキルだ。

 後の先を取る。いわゆるカウンターの剣術というか刀術。威力はそれなりにあるが、射程が短い上に、移動ができなくなるか極端に遅くなるので愛用者は少ない。何よりも構えに入るまでの準備に隙があるので近距離戦では使いにくい。向こうもうかつに飛び込まなくなる。


「ただ、唯一活躍の場があるとすれば」


 狭くはあるが、一定のゾーンの内側を守護できる。飛び道具が相手だろうとだ。


「そうじゃ、単純に役割を限定すること、迎撃じゃ」


 防御役に徹し、攻撃役を他のメンバーに任せる。

 何十、何百人という部隊対部隊の戦いでは到底追いつかないが、小人数の防御役としては十分だ。湖雪の突出した武勇を最大限に貸すための、小隊規模の運用になれているな。

 できること出来ないことの線引きが敵ながら実に見事。


「小笠原家中、侍大将が一人、草間肥前くさまひぜん


 さっきのカリンが仕留めた泉石見いずみいわみと似て非なる名乗り、対抗意識なのか。連携が取れているわりには仲が悪いのだろうか。


 そんなものとは関係なしに仲間の先頭に立ち、正確に丸太に真剣を走らす。


 一瞬の白いエフェクトと共に、転がってくる丸太が音もなく両断された。

 カチと納刀の鍔鳴りだけが響く。


「騎場武者のわりには良い太刀筋じゃ、間合いも広く、威力も申し分ないのう」


 軍事評論家にして第一人者であるところの謙信さんから合格が出るほどの腕前と。

 

「だがのう、私はこんなものではないぞ。先ほどは構えに入る隙を突かれなかったが、本気を出せば矢よりも遠くを切り裂けるのじゃ」


 なに、その魔王横一文字まおうよこいちもんじ

 ゲームだとしてもデタラメもいいところだなこの壊れ性能の人。

 

「おおおっ!!!」

 

 裂迫の気合と共に、納刀、抜刀を繰り返す。大根に包丁を入れるよりもたやすく小気味よく丸太を両断していく。


「あらら、戦のあとで建材として再利用するはずだったんだけどな」


 やめて、守矢さんたちの住むところがなくなっちゃう。

 負けても勝っても、家がなくなるという鬱展開だこれ。まぁ、いいか、俺んちじゃないし。


 だが、そんな杞憂も、七本目の丸太を断ち割ろうとした時解消される。


「あ、それ当たり」 


 太刀は弾かれ掌から零れる、そして武者は丸太の転がる勢いのまま下敷きになる。後続の騎馬は辛うじて巻き込まれなかったが、足を止めることには成功した。


「な、なんだ」


 下半身が半分以上巻き込まれたままの不格好な虜囚となり、刀を失いながらも、起き上がろうとする敵武将に素直に感嘆する。

 まだ息がある上に動けるのか、頑丈なことで。


「説明しよう、建材の丸太の中に【御柱おんばしら】を混ぜておいたのさ」


 旧来の御柱祭で転がしたものが、各社に保管されていた。四方と鬼門に配備され、社の絶対的な守りとして屹立していたもの。折角なので再利用。信仰という堅い鎖は、刀一本で断ち切れるほど柔ではない。堅い守りは相手にぶつけたらそりゃ痛いさ。


其方そなたほんにえげつないのう」


 なぜか、虎の人にジト目を向けられる。


「いやぁ、それほどでも」


 色々、えげつない逸話満載の人にそんな風に褒められた。


「まぁ、一応、もともと祭りで転がすものじゃし良いか……良いのじゃろうか?はて?」


 首をかしげて考え込んでしまった。ないかおかしことでもあったのだろうか。


「よし、動けないうちにとどめだ――――って、蓬さん、それ石でなく岩」


 俺の嫁がおもむろにアイテムボックスから取り出したものは、拳大とは到底言えない、塊。いや、確かにバリケード作る過程で運搬する際入れてたけど、ただの出し忘れだよ、それ。

 だが、あたりまのように両手で振りかぶって、軽々と投げた。

 石を投げろとは言ったが、それは投石というものの範疇を超えてマスヨー。


「あっれー?」


 だがしかし、嫁の握るっと小ささが分かるミニチュアサイズの両手から投げられたものは丸太に押しつぶされている相手武将に正確に飛んでいった。

 よくよく考えてみると、かぼちゃを水平方向に飛ばせる御仁である。傾斜のある角度で岩を投げ当てるなんてできてあたりまえだったのかも知れない。

 ひょっとしたら、弓より、こっちの方が適正あるのではないだろうか。


「ぬうっ」


 下半身を半ばはさまれつつ、それでも、草間何とかは脇差を引き抜き、岩を両断した。

 無理に動いたものだから、更にどこかを痛めたらしい。アイテムボックスであるずた袋を差し出し、攻撃の手を続けさせる。


「えいっ」


 戦場に不釣り合いな可愛らしい(それでいて俺の後頭部がなぜかじんじんするトラウマを刺激する)掛け声とともに、第二撃が、同じ軌道で正確に飛んで行った。


 態勢を崩したが、寸での所で、握られた刀を飛来物に合わせる。

 また防ぐかとその光景に舌打ちをしかけたが。

 投げつけたものは、今度は両断されることなく刀ごと、相手の顔面を押しつぶした。


 蓬の投げたものをよくよく見ると、砲身が爆発した所為で無用の長物と化した、大砲用に鋳直した鉄の塊、ちょっと急造りで不格好な砲弾である。


 電子音と共にシステムウインドウが開く。


一行パーティ一員メンバー・【蓬】が敵ユニーク武将・【草間肥前】を【戦闘不能】にしました』


 泡を吹きながら白目で痙攣しているのが遠目に分かる。


 続けて勝利条件の兜首の数字が7に減る。

 うちの嫁は世界一だということは知っていたが。ひょっとすると力持ち的な意味でも結構上位に来るのではないだろうか。重たい武器毎お姫さまだっこで運ばれた忘れたい思い出がよみがえる。いつまでたってもあれこれ小さいままなのだが、守護霊的な意味でグリズリーマッスル敵な親父殿の血筋を確かに感じた。


「あれだな、うん」


 この先どんなことがあっても、二人仲好く、睦まじく。

 そう、どうしてもという時であっても、投げやすそうな物の多いところで夫婦喧嘩は絶対しないように、俺はいのちだいじにと心に深く誓う今日この頃である。


サブタイは変えるかもしれません

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