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籠城戦

 まるでハリケーンにでも行き会ったような虎千代が戻ってきた。

 草鞋も長衣の袖もあったりなかったりでところどころに穴があいている。


「地味に死ぬかと思ったのじゃ」


 他人事のように笑顔にのたまう。

 まぁ、そうですかーとか、さらっと流してしまいそうな晴れやかさだが、誇張や見栄を話に織り込むタイプではないので、素で死にかけたのだろう。


 山の上から見ていたらゲームの種類がRPGではなく、殆ど弾幕シューティングみたいになっていたからな。ビーム怖い。

 残機が残っていること自体が奇跡的にすら思える。


 結果的に、町民主体とはいえ士気の高い軍を単騎で崩すほどの相手に、味方が退却するのを戦場に最後まで残って助ける殿軍でんぐんの役割をきっちりこなしてくれたのは助かった。

 勿論、自発的にという但し書きがつくので、うん、俺の責任ではないな。

 

 やはり、貴志が言っていたボクより強いというのは、測り違いではなかったかと内心舌打ちをする。

 相手の土俵で戦ったら、最強の一角でも役者不足か、実に面倒だ。

 弱小大名家といえども武者達は決して侮れない、いや、逆に考えると家がつぶれても武名を残した武将だからな、そこがストロングポイントなのだろう。少数同士での勝負なら、大勢力にも十分張り合えるだけの力はあるな。



 はわわっとした蓬さんが、ボロボロの虎千代を見て慌てて駆け寄ってくる。


「すぐ縫い合わせますからね」


 案の定破れた装束が気になるんだろうなと当たりを付ける。


「えーと、どなたか〈巫術ふじゅつ〉に長けた方御手をお貸しください、お湯は沸いてますか、あと清潔な布はどちらですか」


 てきぱきあわあわ指示を飛ばしながら、戸のついた建物の中に消えていった。


「勝ちの勢いのまま駆け上がってくると思ったのですか」


 俺たち諏訪勢の立てこもる社の小山を包囲するように軍を展開させている。


「こっちも崩れたが、あっちも大将の突出で崩れたからな」


 改めて、状況の意味わかんね。


「それよりも、とてもまずいのです」


「あー、まずいな」


 突貫作業で、町大工や〈宮大工みやだいく〉に頑張ってもらった、陣柵が小笠原勢に再利用されている。橋を架け直す材料になったまではいいが、諏訪湖に沿って社の前を通る南北の街道を塞ごうとしている。元々、後ろを山に囲まれた社の、外部との動脈を絞めつけようとしているわけだ。


 単純に包囲されているなら、騎馬で蹴散らす格好の的なのだが。柵があるとそうもいかない。

 攻城戦で怖いのは、包囲した軍が二重包囲されること。それでもう殆ど勝負ありだからな。ユリウス・カエサル率いるローマ軍のアレシアの戦いとか。

 特製の〈馬防柵〉なのが裏目に出ている。小笠原の包囲の外を囲もうにも、彼らの騎馬を防ぐために用意したものが完璧な防御として機能してしまう。

 向こうにもプレーヤーはいるだろうし、初期の諏訪の兵力配置が騎馬で300なのは完全に把握されていると思っていい。

 今頃、ほくそ笑んでいるに違いない、その情報は今となっては間違っているともしらずに。


 こっちの騎兵は開戦前にすでに半分に減っているのだ……うん、駄目だこりゃ。


「防御が完成する前に手を打ちましょうかです?」


 土木で勝つ(キリッ)とか言っていた〈青いの〉は確信犯的に空とぼけている。ぽっぽっぴーなんて口笛吹いてやがる。

 

「いや、旗印をみると、左右の柵のそばで作業しているのは、藤沢ふじさわ勢と西諏訪にしすわ衆。中核の小笠原と仁科は山門前にきっちり配置している。諏訪の騎馬を境内に上げていたならともかく打通力が不足している」


 さらに厄介なのは『戦国online』のゲームのシステムの『家中固有技術かちゅうこゆうぎじゅつ

同盟を結んでいる村上家の〈家中固有技術〉である〈三間半槍さんげんはんそうによる槍衾やりぶすま〉を劣化版とはいえを共有技術として使用できるはずだから、近づいた騎馬が柵を引き倒そうとしても問答無用で柵の向こうから針鼠にされかねない。

 武田の騎馬軍団を破っただけあって対騎馬には効果の高い戦術なのだ。

 村上め、2013年末に出た信長の○望で即効滅ぶ草刈り場だったくせに生意気な。


「密集しているし、また火砲を打ち込みたいところではあるんだがな」


 だがしかし、某戦車ゲーみたいにこんがりエビフライ化した蘇芳すおうは隅に転がされていた。

 急ごしらえで耐久力にやはり難のあった木砲の自爆に吹っ飛ばされて、社の池に浮かんでいた。相方であるカリンは、脈をとって外傷が大したことがないのを確認したら、意識がない蘇芳をあっさり野ざらしにした。

 死ぬほど痛いらしいが、割と日常の光景なのですということらしい。


 それに、大きな音を出すのは、もうマズイ。


「予定通り、急勾配の石段を使い防ぐ」


 登ってきた兵士にぶつけるための伐採した木や岩石などは十分に用意がある。


「了解なのです」


 返事をして、防御の備えの方に向かう。

 細かいタイミングとかの指揮はカリンに一任してあるのだ。貴志の所は、籠城戦のスペシャリストぞろいなので、門外漢が口をはさむ必要はない。


「あ、待った、カリン。守矢もりや娘にアレも転がすけど構いませんねと念を押しといてくれ」


 首だけ振り向くとこくりと頷き、小走りで石段の傍まで去っていく。


 向こうの配置に合わせた細かい調整を指示していると、蓬と虎千代が戻ってきた。


「見よ。見よ」


 左手でブンブンと大きな布を高速で振り回しいてる。見えねえよ。

 そんなこっちの心の声に気付いたのか、こちらの目の前で片手でばっと、肩にかけつつ大きく翻した。


「ふっ、虎じゃ」


 白い外套にはデフォルメされた虎縞の肉食生物が縫い付けられていた。

 伝え難いのですが、すごく、にゃーんって感じです。


「カッコいいじゃろ」


 満足げに鼻を鳴らす虎千代。

 評価は分かれるかなと思ったが、蓬さんメイドだろうし素敵ですねと褒めておいた。


 破れた白の長衣の代わりに、カラフルな小袖に諏訪氏の家紋の入った打掛を羽織っていた。こうみると普通の大人しい町娘に見えないこともない。

 そして、問題はその誇らしげに誇示した外套ではなく。

 中身の右袖を落とされた着物。

 添え木で固定された上にぐるぐる布で巻かれていた右手。


「縫ったって、もしかして」


「はい、腕です。まだ縫合したばかりなので数日は安静にしなくてはいけません」


 虎はおまけか。

 お湯は洗濯用できれいな布で服でも仕立てるのかと思っていたが、そんな平和な話ではなかった。


 俺の嫁縫物の仕事速ェー、と首元を二、三回掻いてため息を吐いた。後で蓬さんに聞いたが若干、白目気味だったらしい。


籠城戦始まっ……た?主人公たち年内には出せてよかった。キ○肉マン王位争奪戦のゼブラ・パルテノン戦のタッグマッチ中に、ゆでた○ご先生が腰痛のための休載のためロビンマ○クが待ち疲れてコーナーにハンモックつるして寝てたの思いだしました…連載中に読んでないですが。


それでは、よいお年を。

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