神降ろし
更新さぼっているのに一日でお気に入りが20件ほど増えて早く更新しなきゃとビビる小心者がどこぞにいるそうな。
ちょっと、わたわたな状況ですが頑張ろうかと。しかし何事でしょうか一体。それでは、視点の人未だ不在のシステム説明回とあいなります。
「〈顕現〉せよ」
湖雪が〈一張弓〉を天に掲げる。梨をもぐような柔らかな動作で矢を番え一直線に真上に放つ。
「〈天神〉」
夕立の影もない、透き通るような晴れた夏空に突如一条の雷が光る。
どこまでも高く昇ってく矢に合わせる様に落ちた。
眩しい稲光が辺りを覆うと。矢は形もなく消え失せ、その場に顔を黒い面布で覆った黒い古めかしい束帯姿の半透明な男性が代わりに現れた。
男は長い裾を翻しながら中空より身を躍らせ、そのまま湖雪に重なるように消えると、薄い雷と同じ燐光が湖雪とその愛馬を覆った。
そして、その光が淡く輝くたびにじりじりと湖雪の術力のゲージが減り始める。
やがて彼女の配下にも光は伝播していく。
それは〈神降ろし〉と呼ばれるシステム。
オールキャラクター、オールユニークをコピーに掲げる『戦国online』を彩るの要素の一つである。
ステータス項目に守護霊という項目がある。(注・二話参照)
普段はステータス補正や独自の技能をスキル枠とは別に覚えるといったものだが、各PC・NPC問わず〈顕現〉と云うコマンドで加護を受ける御霊の力を短時間ながら現世の身に宿し振るう事ができるのである。
その加護を得られる神。精霊。妖怪などは異教のものも含めてその種類は呆れるほど沢山存在する。
それはこの東方の弧状列島は古来より八百万の神と共にあったことから来ている。
今でもコメの一粒にまで神様が宿っていると思えという言葉を聞かず育った子供は珍しいだろう。それほどごく身近な親しいものとして敬い怖れ親しみ隣人として暮らしている世界的に見ても特異な民族だ。
そしてまた、舶来のものも受け入れたり、新しい神も妖も今もまだ想像や創造されたりしながら、時代を経ることで新たな側面を増やす者もいる。例えば、インドの神々がローカライズされて仏教にとりこまれたり、〈ぬらりひょん〉は妖怪の大将にされてしまったりトイレの神様だったり本当に色々だ。
そのせいで、師走には基督の誕生日を祝い、年の瀬に寺に参り、明けると神の社に詣でるという留学生が見たら顎が外れるか噴飯もののレベルの風習になってしまっているのはまた別の話。
勿論、種類が多いと言っても、神たちの格もそれぞれで、大大名の持つ壊れ性能から、一般的に推奨されるもの、ネタ神さままで多岐にわたる。
稀にではあるが、中には〈獣つき〉や〈御霊つき〉といわれる守護霊のステータス項目がない代わりにキャラクターそのものが神である武将も存在する。運がよいプレーヤーは低確率でランダム初期設定される事もあり、それが羨望とトラブルの的になる事も多かったりもする。
小笠原湖雪の守護霊の名は〈天神〉
彼の菅原道真公である。
彼女固有の守護霊であると共に、大名である彼女の小笠原家中の独自ボーナスといわれるものまでも司る神でもある。
日本に坐す神は西洋のそれと違い、二面性を持つものが多い。一概な善と悪だけでは片づけられない複雑な顔を持つ寓話や言い伝えもよく目にするだろう。
各キャラの持つ属性にも〈表〉と〈裏〉の二種の意味合いがある。
例えば〈火〉属性は全てを燃やしつくす脅威としての〈破壊〉と、人の営みを支える暖かさである〈再生〉の二系統がある。
術系のキャラのビルトはどちらを伸ばすか、二系統とも上げるか、それとも五行の〈相剋〉や〈相生〉も考え二属性以上を覚えていくかなど、常日頃から議論や罵り合いが繰り返されるのだ。
湖雪が加護を受ける道真公もまたそういった二面性を持つ。誰もが知る復讐の悪霊と学問の神さまのふたつである。
湖雪の〈神降ろし〉は本拠地の深志城に北の天満宮より勧請した天神を産土神として祭ったことに由来する。
藤原氏との権力争いに敗れ、京都を追われ復讐の怨霊となった荒ぶる雷神ではなく、学問の神として祭られているそちらの側面の顕現である。
ちなみに〈雷神〉の側面は遠く九州の大友氏に仕える立花道雪の二つ名であり彼自身の〈御霊つき〉の名でもある。
湖雪の〈天神〉は現実では圧倒的な知名度ではあるが、性能の評価は高くない。知力に大きな補正がかかるのは優れているが、肝心の〈神降ろし〉が使いにくいとされる効果範囲は一行で自分と同じ技能を所持するパーティメンバーの技能のレベルを一時的に同じ数字に上げる。つまり『学業』の『成就』だ。
お分かりであろう、そもそも、アメフトのように役割の分業化が第一にあるオンラインゲームでは、同じ役割の人間は多数必要ない。
それにより同じ技能持つ者がパーティを組む機会自体が少なく、効果の対象であっても同じレベル帯の仲間で冒険することが基本なのでたとえ恩恵が受けにくい。
そういった理由から、プレーヤーキャラとのみ一行を組むことをメインにしているプレーヤーはまず使われない加護になる。
ただ、小笠原では、大名である湖雪の所持技能の〈小笠原流弓馬術〉のレベルの高さと同じ技能を揃える事が容易な家中と云う環境のコンボで多大な効果を発揮する。
もともと遠距離職で壁を必要としない弓馬兵で構成する場合。敵が限定された状況であれば安全地帯から一方的に攻撃することができる。それに大名クラスの高い技能を持たせることが出来るのだ。
大規模な戦インベントの運用でも、歩兵を壁として使い、弓馬兵をパーティレベルの別働隊として強襲に運用するやり方は効果的であり小笠原の戦術の要となる。
問題は知力補正が死に加護の大将や有力武将が少数部隊指揮や個人技能にだけ突出している事だが、この場合は虎千代一人が相手なので全く問題がない。
「悪く思うな」
殺気のこもった声で小笠原の主は告げる。
虎は呵呵と大笑する。
「一騎打ちしとったのに、なんじゃこのいけずの阿呆はとおもっとったがのう」
虎千代は基本的に怒りっぽく恨みがましい。酒か戦で発散する以外は鬱屈している。
圧倒的な戦闘力のため本気で剣を合わせる機会が限られる。強者との心躍る戦いを楽しみ切れなかった虎千代は少々不機嫌になっていた。
折角、あの変わった巫女の申し出を受けたというのに、女武者以外の実力は越後で言うなら中の上程度。今後は伸びる余地はありそうだがまだ青く、危なげなく立ち回ろうとする弓馬兵たちの中で、背筋を寒くさせるのは小笠原の女大名だけで他は煩わしいだけでしかなかったからだ。
しかし、この〈顕現〉により戦況は変わる。辺りに伝播する存在感ともいう重圧が女武者と同等まで引き上げられる。
「なるほどのう。それが其方の在り方じゃったか」
人馬一体が小笠原最大の特長だ。それを更に進め、少ないながらも湖雪が確かに信を預ける付き従う者たちと一体になる事こそ真の姿なのかもしれない。それは打算ない味方は影しかいない事と比べ心から羨ましく思った。
「ではこちらもみせるとしよう。さぁ、二幕をはじめるの――――」
何やらもぞもぞと懐の中を探り出そうとするが、その言葉尻を待たず、ユウキが一矢を放つ。
じゅっという音と共に、焦げ臭いにおいがあたり立ち込める。
「――――じゃ?」
不思議そうな顔でその匂いの元をたどる虎千代。
ビーム状となった矢が一瞬で虎千代の右の袖をかすめ、布地が一瞬でこの世から消失していた。
袖だけにとどまらず斜めに突き刺さった地面がプスプスと煙をあげながらどろりと溶けている。特製の矢を使わないために射程距離は乱戦のときにはなったものほどではないが、威力は決して劣るものではない。
この次に来るだろう状況に思い当たり虎千代の全身の毛孔がぶわっとなった。
もちろん予想違わず、ユウキに続き湖雪を除く他の武者も次々に光線状となった必殺の一撃を雨あられの様に打ち出した。
その場からなりふり構わず回避しようと地面にぶつかるように最速で転がった。たった今いた場所に次々とビームが突き刺さり戦場を穴だらけにしていく。まるで絨毯爆撃だ。
虎千代は逃げ出した。
もうこれは戦では無い、たとえ最強の武将であろうとも結局のところただの個人。パーティレベルの構成で武田の大軍に対しても威力を発揮できる運用を続けてきた小笠原の切り札が個人に向けられ場合、それはただの蹂躙である。
「其方ら洒落にならんのじゃぁあああ!!」
当たったら、骨も残らないだろう攻撃に、這いつくばってぎりぎりで避ける。そこを狙った一撃からスキルを使った反動で無理やりに体を動かす。それでも避けきれず、爆撃状になった矢に吹き飛ばされた所で地面に刀を突き刺し無理やりブレーキをかける。
口の中の泥を吐き捨てる。自分に向かい性格に飛来するあまたの矢を見てこう叫んだ。
「長実どこじゃぁああ、主の危機なのじゃから弁慶のように立ちはだかるべきじゃろう、常識的に考えて!」
日本史史上有数の常識という言葉を使ってはいけない人物がそう叫ぶ。
そして、それは『影』の役目で泣くではなく『盾』の領分である。上杉が誇る鉄壁の大盾の武者はまだこの時は配下にいない。
虎千代は完全に涙目だった。
閑話の走馬灯はこの後ですね。そのうち次かその次の更新時に順番入れ替えます。
〈神降ろし〉はよくあるリ○ット技とかトラン○ムとかV-M○Xとかそういう系列のイメージとなります。
注・二話自分で笑った、うん、凄くワロエナイ。ちなみに二話に書いてあるヨシのステータスの天鈿女命の読みはアメノウズメです。
踊り子職の初期設定神様。天岩戸のダンサーです。装備が少ないほど〈舞〉などの効果に補正がかかるネタ効果になります。
もし、ヨシが使うとすれば、蓬さんはどういう反応になるのでしょうか。
1、顔を隠して指の隙間からガン見
2、外人四コマ
3、慎みというものについてマジ説教
4、脱がせるのはわたしのお仕事ですリテイク
恐ろしい事にまだ、実はチュートリアル部分が終わらず、主人公が何もやってない作品となっとりますが、お付き合い頂けると幸いです。評価感想頂ければ励みになります




