戦国最強になんとかな人
あげるの忘れてました。
さて、戦イベントの話をしよう。
簡単に定義するならば、PC・NPC入り乱れた超規模の戦闘である。
過去最高では十万を超す軍勢同士がぶつかり合った事もあったりもする。
『人工知能研究所』の採算度外視の姿勢が産みだした古今類のない、この『戦国online』の華である。
ここまでの道中繰り返してきた、このゲームのパーティレベルの戦闘ではある程度王道的なセオリーが存在する。
それは他のゲームからの乖離はあまりないものだ。
前衛と後衛に分かれて、壁役、火力役、支援役、回復役などのそれぞれの役割をこなす事。
あらゆるゲームの歴史で洗練されてきたそれは正解とされる選択肢はやはり少ない。
各国ごとに設置された迷宮を攻略する事を主眼に置いたプレーヤー達を見てみると職業や技能の構成に大きな逸脱は見られない。
勿論、少数の無茶な人たちやロールプレイングにこだわる人達などのユニークな例外は除く。効率と安定性こそ最優先となり最強よりむしろ最良が求められる。
それは、妖怪や堕ちた神仏や霊獣、さらには外来の怪物の特徴を把握し、一定の型の中でそれぞれに対応していく戦術を構築していき、素材を集め情報を増やし己や仲間を強化していく。分かりやすいスタイルである。
俺や貴志は大名家に所属しつつ、必要があれば迷宮にも潜るスタイルだが、プレーヤーレベルだけに専念して天下の趨勢など気にも留めないプレーヤーは多く全体の三割強とも言われ、かなりの割合を占める。
天下を目指すスタイルは必然的に対人戦闘が増え、それゆえ厄介事に巻き込まれる事も多いからだ。
そして、戦イベントを文字通り主戦場とするプレーヤーは、個人的武力を高める事とはまた異なるセオリーも考えてゲームをしていくことになる。
それは、面白くもありまた面倒で他のMMOに慣れ親しんだユーザーでもとっつきにくいというのが、今回はいささか変則的ながらも五年目に突入した俺の素直な感想だ。
MMORPGの役割とは究極的にすなわち職業に基づく技能といえる。このゲーム的に言い換えると兵種である。
『戦国online』では上級職は大名などの例外を除き実装がない代わりに、その種類は死ぬほど多い。
大名。侍。足軽。雑兵。忍者。剣豪。商人。陰陽師。坊主。茶人。儒者。医者。山伏。僧兵。巫女。姫君。公家。薬売り。鍛冶師。水軍。海賊。かぶき者。農民etcetc。
戦闘に向くもの向かないもの、内政に役に立つものたたないもの、全てに長所があり短所がある。
大名家やその他勢力に仕えたり自らの勢力を立ち上げたりすると、数多くの人材からその人物のもつ特性を見極めて雇用していくのだ。
それら長所を伸ばすよう、短所を補うよう複数の兵種を組み合わせてプレイヤーは自分なりの家中を作り、そして軍を編成する。
更には、それらが特性の事なる武装を選択する。
刀。槍。薙刀。弓矢。金棒。槌。手裏剣。寸鉄。棒。杈。鞭。言葉。礫。鉄砲。大砲。方術。法術。陰陽術。符術etcetc。あと、素手もか。
その組み合わせは職業の豊富さと相まって、千差万別千変万化であり。そして、なにより正解がない。
今日まで鉄板だと思っていた組み合わせが、あっという間に新編成・新戦術で破られてしまう。突然常識を覆す運用が生まれる。使えない組み合わせが少しのエッセンスで猛威を振るう。
その化学変化は誰にも全く読み切れない。
日々、外部の掲示板などを用いて、検討研究改良発明が繰り返される。最良の構成というのはいまも暗中模索が続けられている。
実際、一つとして同じ家中は見たことない。更に大名はそれら特性の違う臣下の家中をまとめ上げ、天下を目指すのだ。このシステムは全くもって複雑怪奇である。
パーティレベルの戦闘が算数だとすると、戦レベルの戦闘は数学ほどに違う。
大きな原因としてあげられるのは、そもそも基本職である兵種が覚えきれないほどある事だ。
騎馬武者一つとっても、片手を超える種類があり、それに加えて66ヵ国全てに固有兵種が用意されている。
例えば、今までの関係ある所で話すと、貴志の今川の内の駿河は〈蹴鞠師〉。武田の甲斐は〈金堀衆〉。上杉の越後は〈軽装騎兵〉など。あと、最初にいた蓬さんの所の飛騨は省みられないマイナー地域すぎてよく分からん。
その国で所定の手順を踏めば他勢力でも使用可能だが、そこを領有している勢力にはボーナスが付くので戦闘向きの職種であれば、大名の麾下の構成もその兵種が中心である事が多い、従ってそれに合わせた構成を考えていく事が一般的だ。
それぞれ異なる歪な形の積み木を積み上げるように、安定した戦力を作っていくだけでもなかなか骨が折れる。
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で、なぜこんな話をしているかというと。
長尾虎千代こと上杉謙信は戦国最強の将である。軍が最強に至る術を体得しているひとりであり、軍を動かす感覚を持ちにくいプレーヤーや、他の大名を圧倒するだけの戦闘の才能がある。
めんどい家中で培われた畏怖を与える統率力。
矢の雨の中でも酒が飲めるクソ度胸。
動物的直感で読み合いや駆け引きは神の領域。
野戦は不敗。籠城戦も不敗。攻城戦は気が短いのでちょっぴり苦手。でも、名だたる堅城名城を数多攻め落としている実績は十分だ。
そして、その才で持って史実でも、5度のゲームを通じて一度も上杉は滅んでいない。
プレーヤー間の合言葉の「上杉とは安易にことを構えるな」は多分、どんな歴史ゲームでも通じるであろう。
では、逆にその割には史実およびこのゲームで一度も天下を取れていないのはなぜか。
最強であっても無敵では無いのだ。内外にそれこそ様々な問題があるからである。
同じく最強の一角・武田信玄との五度にわたる川中島での対峙。
二正面の戦。
気づいたら訳分からないスピードで膨張している織田。
迷惑極まりない一向一揆。
調略下手。
困った人や弱みに付け込めない妙な正義感。
まとまりがなく言うこと聞かない小謙信が沢山いる困った部下たち。
そしてなによりも、どのようなセオリーで動いているのか、俺の様な理屈屋には理解不能な謎君主。
特に最後のそれは、ご存じのとおり良い方にも悪い方にも切れすぎる名刀のようなものだ。
それがどのタイミングでどんな方向に抜かれるのかは分からなく、被害もあらゆる方向に甚大である。そういったものは、本来関わらない方が良い。
所詮、人の喧嘩だから、失うものないし、という事で今回はひっぱりだしてはみたが。
俺の寿命とか胃の耐久力とかがガリガリ減っていっている。
本来ならば、その代償を補って余りある必勝のカードであったのだが、彼女のその稀有な戦闘の才能とはつまるところ用兵の才能である。
彼女は、最強の将であるが個人武力として最強の大名かと言われると実はそうでもない。
個人的武力という観点で言えば、塚原卜伝に奥義を教わりし剣聖将軍足利義輝。剣豪大名北畠具教のツートップになるだろう。
謙信も単騎駆のエピソードがある為に、強キャラとは設定はされてはいるて、一般の兵士相手に無双するだけの力は確かにある。
ただ、この前の調練を例にしても、まず頭の千野を排除し、指揮系統をマヒさせた事が大きかったのだ。
頭を潰し思考力を奪う→混乱させる→立て直す暇を与えないで各個撃破というコンボにはめた頭脳戦であったのだ。騎馬兵が少し冷静になれば、足を止めて包囲して終わりだっただろう、少なくとも俺が指揮していたらそうしていた。
まだまだ、肉体的には御歳9歳と完成には程遠い発展途上の姫武将なのだ。
現にステータスだって体力・術力を除けば精々上位プレーヤーの2倍でしかないのだ(ただし、俺の現状をものさしとするなら10倍以上だが)。
先程驚いたのはパーティに加わったキャラのステータス上限が突破されていたことであり、それもよくよく考えてみれば、そんなの当たり前だ。
RPGのボスがこちらの上限にあわせてくれるようでは、ちゃんちゃらおかしいしな。
飛騨であやうく死にかけた時の、武田の下級指揮官だって、複数パーティを前提としているボスなのでステータスだけなら虎千代の数字を明らかに超えていたはずだ。
個人武力を産出する場合基盤となるステータスは極めて重要だが、それだけで決定的とは言い切れない。
白の少女は加えて、最上の装備、苦情を入れたくなる鬼スキルの山、能力を余すところなく使えるAIの精度などなどで構成されている強キャラなのだ。
ただ、先程、言った通り、個人戦でと限定すれば上回る事は十分に可能だ。
例えば、貴志雛姫。
貴志が虎千代に一対一で負けたのも当時はゲームを始めたばかりで、今の俺よりも精々マシといった数字であった時の結果である。
そんな状態で全滅に近い軍勢で最後の一人まで生き残っていたのは、偏にあいつのポテンシャルの賜物だろう。
今の彼女の年齢や蘇芳がこの場にいる今の状況を加味すると。断言できる。
今一対一で戦うならば、貴志雛姫は上杉謙信を倒せると。
結局のところ、白の少女は兵を率いて勝つ事こそ絶対の本分なのだ。
決してでたらめな飛び抜けた個人戦力からの〈軍神〉という異名ではないのだ。
「で、私はどこの指揮を取ればいいのじゃ」
で、肝心要の兵がいないと。
だから、死ぬほどピンチなんですばってYO。
操る手足のない最強の将などきゅうりの入ってないちくわにも劣る置きものでしかない。
「ご覧の通り、私が煽りまくったせいで、戦意に火が付いている諏訪の民しかおりません」
杉の木で作られた突貫にしてはそこそこ堅牢な陣の中、がるると唸る一般市民。
守矢娘に言った兵力の当てとはこれのことです。
いや、さすが荒っぽい祭りの信望者だけあってどの方たちも無駄に迫力あるなぁ。
前に社に詰めかける民を焚きつけた事を油マシマシでやりました。立てよ、国民とかなんとか。
もとより、自分たちの家を守る為に残る様な気骨であり最も荒っぽい祭りを取り行ってきたメンタルにそれを邪魔された状況が加味されて、ちょっと形容しがたい狂戦士達になってしまった。
しかも海兵隊式でやったせいで、蓬さんがこちらに一定距離以上近づかなくなってしまった。どうしよう。ちょっとやりすぎた。
弓矢が届かぬ距離で離れて展開している敵軍より、こっちの方に脅威を感じてしまうほどに。
だがしかし、所詮民である、何の訓練もなしにとても、虎千代が率いるに足りる規律正しい軍事行動など出来ない。
「なんじゃつまらんのぅ」
その物言いには、流石に、腹が立ってくる。必勝の切り札の騎馬隊が、影武者先導とかどう収拾つけるんだこの状況。
「では、仕方ないのじゃ」
納刀されていたそれを引き抜く。
何度か抜かれた時には状況的には大変だったので、そんな余裕はなかったが、目が自然に吸いつけられる。
それは世にも優美な刀だった。
刃紋は山鳥の長々しき尾のように大仰に乱れている。
僅かに浅く反った刀身は、少女の腕で今かと飛び立つ時を待ちわびているようにも見えた。
その刀。名を『山鳥毛一文字』。
銘は無い。
上杉謙信並びに、その継嗣である景勝は日本刀の収集家として高名であった。
数多の名刀を集め、またそれを振るう事を好んだという。
中でも、景勝は2代にわたって収集した数百本の名刀から選りすぐり、『上杉景勝公御手選三十五腰』を記している。
これはさらにそのなかでも最上の10口のひとつ。
ゲームの暦より進めて、8年。
1556年。白井城主・長尾憲景より贈られたひと振り。
現在も国宝に指定されている絢爛たる宝刀。
上から2番目のレアリティが設定された古遺物級の宝重。
「ん?」
僅かな違和感。
すぐその正体に思い当る。刀の持ち主と同じくらいに人目を引く黄金造りのそれ。
なぜか、先程まであった鍔がなくなっていた。
そして、俺は一瞬それに気を取られて問題児を押しとどめる機会を逸した。
小柄な少女の体は柵の隙間からをするりと潜り。そのまま、てくてくと敵に向かって何ともなく歩み始める。
慌てて、マフラーを掴もうとするが、本来あってはならない胸元2つのふくらみが途中で柵の隙間につっかえた。
伸ばした手は空しく空を切る。
「あれ、あれれ?進むも引くも出来なくなったでござる」
白饅頭がいいかんじにはまって個人の力ではどうにもならない。
蓬さん助けてー、超助けてーとなんでも鑑○団のOP調に助けを求めた。
Help me if you can!
「それは自慢でしょうか、それとも遠まわしな嫌みでしょうか」
ドブの水でも映した様なすごい冷たい目で見られました。やだ、ゾクゾクする。
って、そんな被害妄想から始まる新たな境地を開拓している場合では無く。
無謀にも両軍の真ん中にむかっていく奴をなんとかしないと。
でも、結論から言うと時すでに遅し。
「聞けいっ!」
小さい体を目一杯膨らませ、戦場全てに大音声を気炎高らかに叫んでいた。
戦には本来作法がある。言葉合戦からの弓矢の打ち合い、そして石つぶてのぶつけ合いという形だ。 まぁ、それはゲームの作法ではないが。
「音に聞こえし、安曇武士。臆病にも馬首を揃えて何するかと思えば、降るを期待するだけじゃとは何とも浅ましい性根!其が武名を惜しむなら我こそはと思わん輩こそ打ち掛って参られぃ!!」
一騎打ちとか源平合戦か!確かにあんたどこぞの平氏の末裔だけど、それ四百年前の武士の作法だからっ!
武田のあれよりもでかい、いかにも腕自慢な武者が、世紀末覇王が乗っていたみたいな馬にまたがりカッポカッポとやってくる。
虎千代は面白そうににやりと笑った後、脂汗をダラダラとかき、顔色を青から紫まで一気に変化させる。
「急に声出したから、更に頭痛くなったのじゃ」
抜き身の刀を杖代わりに膝をつくと。
「うっ…レロレロレロレロ」
折角の外見だけは涼やかな美少女キャラを台無しにする暴挙に出やがった。
俺は白木の扇子を、袖から取り出して目元に広げることで坂を転げ落ちるように悪化する現実から目をそむけた。
諏訪の人達の煽った内容書いてあるのですが、某キン○ダムで民衆の力で籠城戦とか凄い涙目な展開になったので没になりました。質で勝負になりませぬ。
それよりやばいのが某○リフターズ。ネタかぶりで早大に吹きましたが、こちらは大切な所なので避けられなかとです、今後出た時、気づいても薄い目で見逃していただけると幸いです。




