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発端

通字と偏諱の所為で人名が交錯してまいりました。頼なんとかさんが山の様にでてきますが、最後の人だけでOKです。まぁその人も、あんまり重要なポジションではありませんが。

 十日で十三回。

 はてさて、何の数字だろうか。


 まぁ、もったいぶる必要もないので正解を言うと、信濃に入った後山賊に襲われた回数である。


 想像のナナメ上の悪目立ち具合だ。

 客観的にみるならば、カモがネギ背負っているのだけじゃ飽き足らず、ナベまで持参しているレベルだから仕方ない。


 ただいま六日間連続試合安打記録更新中。昨日なんて、三安打の猛打賞だ。

 諏訪のある中央に入ってから一層ひどくなっている。

 なんとか、規定打席に達する前に早くこの国を抜けたいものである。


「信濃は想像以上の荒れ具合だぞ」


 いささかゲンナリして、貴志がそう呟く。


 ゲームの時からNPCは基本的に死んだら生き返らない。

 当然、山賊であろうともポップしないのでストックにも限りあるはずだが、蔵の中にいくらでも埃をかぶって出番を待っているようにも思える。


 まぁ、勝手に山賊と云う括りにしてはいるが、己が何者かというのは彼らにもそれなりに言い分があるだろう。

 小豪族かもしれない、飛騨でお世話になった落ち武者崩れかもしれない。

 勢力間を孤立させるための大名配下の可能性だってある。

 それが例え農民だとしても、只の農民ではなく、戦国農民なのだ。

 紛いなりにも天下に居座った、某明智あけちさんだって打ち取る落ち武者狩りのプロデューサーさんなわけで。戦闘機だって気持ちで落とせるといわれる万能兵器・竹やり標準装備の戦闘集団なのである。


 ところでその時期の明智家と丹羽にわ家の名字の読みが未だにごっちゃになる。

 と、どうでもいい事は置いといて、山賊がひとつ団体様ではなく横の関係性の無い複数の勢力なのは間違いないだろう。


 現在の信濃はあまりに混沌としていた。


 元々、信濃は盆地ごとに別の国の様なもので。

 一国を統べるだけの強力な大名がおらず、歴史の長い家が多いので分家も多く、婚姻政策も東北地方並みに活発だ。

 加えて、外勢力の後ろ盾や、その他の小勢国人・豪族も含め、文字通り力関係が複雑に入り乱れている。


 暗黙の了解で、盆地ごとになあなあでやってきたのが、異分子武田が入ってきた事で敵味方の色分けが急速にシビアになったのだろう。


 以下読み飛ばし可的に状況を整理するが。

 

 信濃四大将を始めとする有力諸氏はいたずらに兵を動かさず自領の統治に専念する者も、対武田の戦略を進める者もいる。


 諏訪に近い、大井おおい望月もちづき藤沢ふじさわ笠原かさはらといったその他の周辺の有力豪族も武田により従属か滅亡に追い込まれている。

 ちなみに、その中の諏訪氏分家の藤沢頼親ふじさわよりちかは生涯、武田晴信に三度降伏して三度裏切るが、上田原での敗戦を機にその二度目の裏切りに突入した所だ。己がぶれない人って素敵。


 武田自体も諏訪郡代・板垣信方いたがきのぶかた討ち死により、後任の郡代は乳兄弟である奥近習六人衆おくきんじゅうろくにんしゅう長坂光堅ながさかみつたかとなるが、現在は諏訪南方の上原城に信方の実弟・諸角虎登が城代として僅かな兵と共につめるだけ。

 更に、その上原城と武田の本拠地甲斐かい国を結ぶと命綱ともいえる動線の高遠城。

 動揺を抑えるため、諏訪氏庶流である高遠頼継が武田配下として、その自城に戻っているが旧自領を押さえる以上は出来てはいない。

 もしくは、野望の雄たる頼継は未だ諏訪氏惣領を諦めず蠢動しているのかもしれない。



 とまぁ、色々書いたがぐちゃぐちゃな状況が伝われば、こまけぇことはいいんだよな訳で。


 地元民であろうとも道で行きかう者同士が、敵か味方緊張しなければならないほどの状況と云う事が伝わればOK。いわんや旅人はをやとばかりである。

 要は、これ幸いとばかりに有象無象さんたちのいわば稼ぎ時なわけである。


 どこか武田の先代信虎のぶとらが統一する前の甲斐に似ている。


 ここまで一蹴してきた山賊どもがどういった勢力なのかはわからない。

 問題はそれが、どこの導火線に繋がっているかが分からないので、こちらの後ろ盾もない以上なるべくなら関わらない方が本当はよいのだが。


 そんなはめになったのは、カモネギナベ以外にもう一つ原因がある。


「命だけは御助けを!!」


 今日もどこかで誰かの悲鳴が響いている。


 デスゲームが始まってから、すっかりくせになってしまったためいきひとつ。


「じゃあ、また多数決」


 現状、俺、よもぎ貴志きし、カリン、蘇芳すおうの奇数人数なわけで、円滑で迅速な意思決定のために、民主主義の代名詞っぽいが、実は全く異なる採決方法を採用している。


 投げやり気味に決を採る。


「助けるのに反対の人」


 おざなりにふたつの手があがる。


「賛成の人」


 元気よくみっつ手があがる。


「はい、可決」


 常に結果は同じ。ひどい出来レースを見た。

 実際、決を採る前から、皆で声の方に皆で走り出していた。

 

 なお、内訳を性格的な分類ですると。

 属性カオス側の二人。俺とカリン。

 属性ロウ側の三人。蓬。貴志。蘇芳。

 二択でくっきり分かれるわけで。

 無視すれば、山賊遭遇件数の数字を半分どころか、三分の一くらいには押さえられたが、積極的に、どこかの誰かのために動いてしまっているのだ。


 善良な人間と云うのは、正しいが故にブレーキが壊れがちなんだよな。

 まぁ、人は自分に無いものにこそ魅かれる事わけで、そんな嫁だからこそ好きになったのだろうとも思われる。

 恋愛は考えが近い人や分かるたぐいの人とするのは楽だが、決して諸手を挙げて楽しくは無いものだろうなと。

 価値観が同じであれば、考えの差異はスパイスだろう。俺も、偽悪的だなんて言われた事もあるが、殊更に悪を良しとする価値観はないしな。

 


『ありがとうございます』

 と助けた側に言われるのは、まぁ気持ちいいものだ。積極的に言われようとは思わないが、もらっていやなものでもない。かさばらないし。


 だけど、昨日のあれは辟易させられたが。

『是非、うちの息子の嫁に!』

 ってやつ。ここに相手がいますのでと丁寧にお断りさせて頂いたら。

『じゃあ、うちの娘の嫁に!!』

 いやいやいや。俺の所為じゃないのに、背後に剣山の如き何かが冷たく刺さって涼を取るのにこと欠かなかった。


 あと、初めは『3、山賊に加勢する』を一応提示してみたが、名もない村落に到着した時点で、地面に正座させられました。


『おっかあ、なんであのお姉ちゃん地面に座ってるの?』

『しっ、見ちゃいけません』

『なんで、別のお姉ちゃんに怒られてるの?』

『こらっ!』

 なんとことがあったりなかったり。

 だって、端から選択肢絞るのって思考が硬直してよくないじゃん。


 神官風の高そうな身なりをした男が、十数人の無頼漢に囲まれている。

 神官風の供廻りの者は既に倒れ伏している。

 距離は未だ遠い。刀を振る速度にはとても間に合わない。


「やれやれなのです」


 おっとりした口調だが、動作は機敏に腰元の短弓を取り上げると、空手のまま射る。


 ヒュゥッ


 奏でる様に弓弦が鳴いた。

 瞬間、一番神官に近い男が悲鳴と共に刀を取り落とす。

 

 二度、三度と続くたびに、山賊たちは順番に腕や足を押さえて蹲る。

 そこでようやく彼らもこちらに気づき警戒の視線を送られた。


 その瞬間貴志が飛び出し、傍らの高く伸びた檜にカンフーキック。

 その蹴り方はレッドカードだろサッカー部。


「エリック・カントナ・アタック!」


 いやいや、サッカー史の一部だけどさ。それはダメ。


 大檜はめきめき倒れるかと思いきやどう見ても樹齢百年超のそれは、横にすっ飛んだ。檜的にはとび蹴りのテイクアウトならぬテイクオフだったみたいだ。


「は?」


 ジーザス。思わず真顔になっちまったさ。


 神官風の男と、山賊の間に、轟音を立てて命中。両者を隔てる。

 この世界で生きる以上、町の外では奴をからかいすぎたらやばいと再認識。

 ギリギリのラインを攻めるだけにしておこう。動揺する山賊もついでとばかりになぎ倒してく心の友の姿を見ながらそう思った。


ヨシさま」


 その声に、阿吽の呼吸で、物干し竿をパス。

 受け取ったそばから、遠心力で次々なぎ倒していく。おー、わんだふぉー。


「うじゅうー」


 火縄銃禁止の蘇芳は、指をくわえてみている。最近目に見えて元気がない。


 そんな具合に制圧完了。


 武器を捨てて次々、命乞いに入る山賊たち。一瞬前の立場が急展開。茫然自失の態だ。


 さて、ここから先は俺のターン。首領と思しき男の前に立ち。白刃きらめく、大太刀を引き抜く。


「座れ」


 ドカリと不満げにその場に胡坐をかかれた。誠意を持って、立場を分かって頂こう。


「誰が足を崩せと言いましたか」


 慌てて正座。


 逆手に持ち、柄にある武田家紋・四菱を見せびらかす。


「武田の者だ、諏訪での狼藉は許さない」


 手首をくるりと返し、白刃を首元にひたりと当てる。


「一度は見逃す。いいな、次はない」


 笑顔を作り、精一杯、冷たく言い放つ。


 ゆっくり白刃を離す。

 山賊の棟梁は声も出せずに首を何度も縦に振る。


 これで、余分な恨みも買わないし、責任や事後処理は武田行き。実に天下太平である。


「おら、持ってねーわけがあるかです。その場で跳ねてみろです。ほら、小銭の音がするじゃねーですか、ああん、なのです」


 後ろで順番に、昭和的の不良的なカツアゲしている青いのは気にしない事にする。


 悪い事する人は必ず因果応報がありますと、初めに遭遇した山賊チームに人道とはなにか正しく生きるとはなんとすばらしいかを説教していた蓬さんも今は苦笑するだけ。

 己の不用意な発言がブーメランで、悪行を止めるに止められないのである。

 すぐさま、これ幸いと人罰を下す悪童がいるとは予想の範疇外だったらしい。

 一応、当初は何度も止めはしたんだが、いつの間にやら口先の魔術師に舌三寸で丸めこまれてしまいました。丸めこむコツを知りたいとか思ってないんだからね。


 神官風の男が、涙ながらにこちらに礼を述べる。


「あ、ありがとうございます。わ、私は諏訪上社・神長官。守矢頼真もりやよりざねと申すもの」


 つまりは武田の被官ひかん様なわけで。

 俺の星周り的に、関わってはいけない者と関わってしまったとさ。


 ようやく下ごしらえおわり、状況開始です。

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