トラブルシスターズ
また間あきました。なでしこ最後の最後で自分たちらしいサッカー出来ましてなにより。どっかに書いた金が嘘っこなんで直さないと。
男子もこの世代としては上々です。
「ただいまー!」
国元の駿河(静岡県東部辺り)まで、出張中だった貴志が戻ってきた。
蓬さんがステータス異常から完全に復帰してないので俺が代わりにお出迎え。
「おー、麗しの我が家ー」
とかなんとか、のたまっているがお前の家じゃねえ。俺も人の事とは言えないけどな、家無いだけに。すまん、魔がさした。
「むー、なんか空気が浮ついてるぞ」
ぎくりとする。普通にしよう普通にしようと頑張った結果、朝から嫁とは目が一度も合わせる事が出来ていない。ふいに、じーっと見られてる気配があるのだが、振り向くと向こうも目を逸らすので何とも決まりが悪い。
まぁ、普通にしようと努力が必要な時点で駄目だこれ。
「え…そ、そうか?」
まさか、こうこうこういったわけでと説明も出来ないので空とぼけてみる。
「何て言うか、例えるなら初デートで張り切り過ぎて空回った中学生カップルが翌日学校で何話せばいいか戸惑っているみたいな」
的確な表現ありがとうございましたっ!。事実はそこから、一足飛びしすぎましたのが問題でして。こそこそ蓬さんが隠れる音がする。
「まぁ、いいや。ジャジャーン」
低予算なのか効果音を口で高らかに読み上げる。
ふたりの人影が控えていた。両方女性。少女とも言い変えてもよい年頃。貴志家臣団は戦国女子サッカー部なので、士分の家臣は皆女性である。
貴志が脇にずれた所に、進み出て、二人は跪礼を取ろうとしたがこっちに気づくといぶかしげになり礼を途中で止めた。
「なんだこのおちび。とのの親戚どこよー」
ぽむぽむ。頭を叩かれた。
「初対面の方に失礼ですよ。お嬢ちゃん、飴ちゃん食べますですか?」
なでなで。頭を撫でられた。
ピキッ
「家臣連れてきたぞ!」
誇らしげに胸を張る貴志。
「間に合ってます」
家の中に戻り、後ろ手で戸を閉めた。
ピシャリ
すぐさま勢い良く開かれる。
「なにするんだよ!」
貴志が抗議の声を上げる。
「なんで二人しかいねーんだ!アホか!」
あとしっかり教育しとけ。そもそも礼なんぞ取る必要はないが、無礼者はお呼びでは無い。大して背丈変わらないのに初対面でチビ呼ばわりとか死ねばいいのに。
いやはは、と苦笑いしながら頭を掻く。
「なんか、長雨で富士川や大井川が氾濫して大洪水とかで国元が大変なんだよ。おまけに疫病まで発生しちゃってとてもじゃないけどこっちに人数さけなかったぞ」
もう領内大混乱。義元様なんか某脚本家が将軍を演じたときみたいな怪演みたいになってたでおじゃるとのこと。
今は代替わりする前の織田家との国境争いが大詰めだからなピリピリしているんだろう。
「っておい、お前も自分とこの差配取らないでいいのか」
「家老に追い出されたんだぞ。殿はいい子だからお外で遊んできて下さいと」
「あー、言いそうだ」
相変わらずだなあの人。うちの筆頭家老や娘様と素で張り合えるだけの食わせ者っぷりは健在と。
それだけにこっちに動員できないのが惜しい。
「やっぱり、いきなり国元ほっぽり出しちゃったの怒っているかな?」
「怒らいでっか」
こいつの事だから、デスゲーム開始時に、家中になんの指示もなく、全力でこっちに駆けだしたのだろう。直情思考。思い立ったら吉日性格。補佐する方もあれくらいのたまでないと。
「うわー、薄薄そうじゃないかと思っていたぞ。あと十年くらいは何かの度にネチネチ言われるぞー」
大げさに頭を抱える。
「しかし、よりによってこいつらかよ」
「おいおい、お前、黙って聞いていれば、とのにむかってなんだその口のきき方は、さっきから失礼なおちびだな」
失礼なのはお互い様である。
燃える様な紅い髪を複雑に結いあげている。気の強そうな青い瞳。攻撃的な八重歯。袖の部分が妙にゆったりとした長衣に、腰周りは太もも辺りまで剥き出しになった虎の腰巻。その周りに沢山の袋をぶら下げている。
最も目を引くのは、女性に不釣り合いなごっつい火縄銃を背負っていること。
「顔は良くても、礼儀が良くないとお里が知れるです」
丁寧ならば、何言ってもいいというあれもないんだが。
前者とは対象的な紺碧の髪。赤い目は細められていて今は近距離からでも判別できない。人のよさそうな笑みを浮かべているが言葉の端々に攻撃性が見え隠れしているのはご覧の通り。
女性風にアレンジした狩衣。可愛らしい南蛮帽をかぶっている。こちらは短弓を腰元に付けている。矢筒がどこにも見当たらないのが目を引く。
紅いのが蘇芳。碧いのがカリン。通称トラブルシスターズ。
例えるなら、赤い炎と青い炎。
事の規模をレベルアップさせたうえで、周りを巻き込み所構わず飛び火させた上に後にはペンペン草一本残さない厄介さん達である。
そちらの主観では初対面かも知らないが、こちとらはよく知っているんですよ。
「うるさい、戦力外通告ども」
「…うっぐっ」
「な、なんのことなのかしらです」
二人が目に見えて狼狽した。
貴志家臣団内政オンチ三傑(当主含む)揃い踏み。
戦闘と外交要員なので、領内のトラブルに関しては狸の置き物よりも役に立たないことに定評がある。
まあ、疫病発生で、万が一に備えて主君を外に出しておきたいという意図があるだろう。あの家老、ツンデレだから。
しかし、非常時に大将外に出すとか、ばれたらまた主家から減封食らうな。
「もう、みんな喧嘩しちゃだめだぞ。ほら、ふたりとも、こちらはボクの親戚なんだから挨拶はぐらいしっかりするんだぞ」
後で怒られるのはボクなんだから。うんぬん。
「え、凄く性格が悪い男じゃなかったのか」
「もっとこう、血も涙もない残虐な方を想像してましたです」
びっくりするふたり。
「えー、貴志君、後で積り積もる程のお話がございます」
「うぅっ…はい、ごめんなさい」
まぁ、装備見ても分かる通り、結局前衛がいないのでタゲ取りをこいつ一人で賄ってもらう事をもって罰とするか。
さて、新キャラが続々と増えてきます。ちなみに通称なんて姉妹ではないです。さあ、どこから書きわけが出来なくなるかが問題です。




