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ふたりの時間

タイトルで悩み中。現在進行形。多分変えます。


秘儀・時系列すっとばし。どこまで開示するか正直迷っているので、保留するという暴挙に出ました。

風邪引いて真面目な話を書くパワーが足りない。


貴志が出張中なので、帰って来てから開示ぅるという手法をとろうかと。

 点数をつけるとすれば、百点満点の夕焼けであろう。


 火で打った鉄のごとく紅く光る暮れゆく陽、たなびく雲のまだらな帯は赤子を抱く母の細腕のようで。


 誰彼たそがれ時。

 薄暮はくぼ

 夜と昼の境界。

 マジックアワー。


 呼び名は数あれど、今日のそれは逢魔ヶ刻に違いないだろう。


 まつろわぬもの。そう名乗りしあやかしの黒の少女との予期せぬ邂逅は終わった。

 それは短かったか、長かったか。もはやそれすら定かでない。


 夕暮れの風を肺腑一杯に吸い込む。幾分、昼間の熱気の和らいだそれは混乱する頭に一掴みの清涼さを運び入れる。

 彼女の賢者とも愚者とも似つかない口調、その怪しい毒気に俺はすっかりあてられてしまっていた。

 其は人を惑わし、帰り道を隠す童話フォークロアの妖精そのもの。


 人としてあるべきものが欠けた不完全さ、それゆえ完成された魔道のヒトカタ。

 なまじ人と近いあまり、拭い去れぬ違和感は、ともすれば嫌悪感に繋がりかねない。


 白痴の如き少女の笑みを思い出す。


 それでも、人にあり得ぬ美しさは抗えぬ強烈な力で、誰も彼も引き付けずには居られないだろう。


「当代、最弱の英雄」


 彼女の声が脳裏にリフレインする。


 その言動をどこまで信用していいのかは分からない。

 どこまでが本当で、どこまでが嘘かすら曖昧にて不確か。


 夢か現か幻か。


 妖精は砂金よりも貴重な情報を俺に与え、来た時と同様に音もなく去っていった。

 彼女の言う取引というよりは、むしろ先行投資に近かったのだろう。この死にまみれた檻のなかでは 彼女もまた、ただのか弱き蝶でしかない。

 手番に制限は無いのなら、俺が彼女だとしても打てる手はどんな悪手でも打つべきと考える。


 彼女が与えたものが正しければ、俺たちにとっては大きなアドバンテージにはなりうる。

 おとつい、みんなが生き残ったのは、まぐれでしかない。

 大した敵ではなかった。ただ、イベント出現のタイミングが悪かっただけ。最悪というにはあまりにも程遠い。そんなサイコロの目でさえ殺されそうになったのだ。

 これからナイフのエッジを歩くような状況に、また否応なく置きこまれるはずだ。


 だから、次に備えるための、ランタンと杖は喉から手が出るほど欲しかったもの。


 しかしながら、ニンフの二つの顔の危険性は神話の頁をめくるまでもなく分かるつもりだ。

 彼女の甘言の真偽を載せた審議の天秤は揺れたまま何も示せない。


 暗い沼地にを歩むようにずぶずぶと足取りは重く家路につく。


 不安。焦燥。緊張。期待。歓喜。疑念。


 そのどれでもあり、そのどれとも違う。交わした言の葉と、手持ちの情報とをすり合わせる。推測と仮定の思考の網を巡らせる。

 何をすべきか、どうあるべきか。大切すぎる人達の安全と、リスクをかけて得られるものの利益。

 

 答えを決められぬまま、帰るべき場所に歩みを止める。


「おかえりなさい」


 その笑顔だけで、昏い意識の底から俺は救いだされる。


 例の大木で作りなおした、戸口の前でわざわざ帰りを待っていてくれた。

 乾ききった思考の澱に、彼女が優しく染みていく。泣きそうになるほどに。

 ただいま、と俺は笑っていただろうか。

 

「えーと、流人ルートさまはどちらに」


「国元から、家人呼び寄せている。国境くにざかいまでに迎えに行っているから戻るのは日を跨ぐかな」


 とりあえず人数で安全を確保するための家臣団。できれば近隣の知り合いがいれば呼んでおきたいのだが、PCが来ない事に定評がある飛騨山中なので期待できない。

 慎重を期して、安全な獣道を使用しているので、一日、二日じゃきかない筈だ。


「そうですか、おとうさんも今日はこの前の件で村の寄り合いです。多分帰りませんね」


 なんというか酒が入る会議ほどタチの悪いものは、この世に無いだろう。

 蓬さんは立ち上がり、食事の支度をしようと、炊事場に向かう。

 手持ちぶさたな俺はなんとなく、その後についていってしまう。


「今夜はふたりきりですね」


 なん…だと。


 今日一番の衝撃が俺の全身を貫く。

 頭の中身が全部飛んだね。さっきから考えていたデスゲームとかとか二重存在ダブル・エキステンスとかエトランゼとか、もはやどうでもいい。


 今日が俺の関ヶ原かもしれない。


「ご飯はふたり分の用意で大丈夫ですね」


 続く言葉より蓬さん的には主婦的な確認で他意は無いと分かったとしても、もはや俺のシナプス結合は勝手な回答にたどり着いており、それどころではない。


 例えるなら、男子中学生が消しゴム落としたとき拾ってくれた女子と偶然席替えで隣の席になった時「これからよろしくね」と言われたらなるだろうテンションとよく似ている。

 表面だけは平静を装おうとしても、完全にそわそわで、心は今すぐ戸外で全力ダッシュでも始めたい心境である。


「えーと、ヨシ様なにか、不安な事がありましたか?」


 じゃぶじゃぶと手を洗いつつ後ろ姿な蓬さんが訊ねてきた。


「え、なんで?」


 内心どきりとする。


「あら?ご存じありませんでしたか。心配事がある時、わたしの後をついてくる癖があるんですよ」


 うわーっ!!なにそれ、無意識のうちにストーキングとか。俺ってそういう人間だったのか。

 それを見透かされていた事と相まって、あまりの衝撃に、ずーんと肩を落とす。


 そんな俺の様子と手元の包丁と野菜を見比べた後。それらを置いて再度じゃぶじゃぶと手を洗い直す。


 呆然と立ち尽くす俺の横をすっと通り過ぎて板の間に上がる。

 俺は目でゆっくり、それを追うことしかできなくて、呆然と見送る。


 ゆっくり俺の方に向き直り正座をすると、にっこりと笑う。


「はい」


 両手を広げて、いらっしゃいのポーズ。


「どうぞ」


 強烈な誘惑にあらがえるはずもなく、導かれるままに、ふらふらと足元に歩み寄る。

 お腹周りに頭をうずめる様にぎゅっと腕をまわして、うつぶせに寝そべる。

 間違っても、だらしないであろう今の表情を見られたくなかった。


「まぁ、随分大きい猫さんですね」


 くすくすと膝から大きくはみ出るそれを、手櫛で優しく、毛並みを整える。


 ふたりきりという魅惑的な言葉には程遠い。ロマンもマロンもどこにもあったものじゃない。


 母に甘える子供とはこんな感じなのだろうか。


 あまりの心地よさに、すわ天竺かと、ふにゃっと精神の輪郭が崩れていく。

 日向みたいなあたたかさに目を細める。自然と、幸せな空気をかき集めようと、鼻の奥を動かしてしまう。


「もー、くんくんしないでください」


 途端に肩を掴んで引き剥がそうとする。

 腰元に抱きついて離れまいとする。

 もはや、ただのだだっ子だった。


「畑仕事したばっかりですので、わたし汗が…もーう!」


 だが、それがいい。すごく良い。

 青林檎の香りを鼻孔一杯に吸い込もうとする努力を貫き通す。


「きゃーっ、なんで深呼吸してるんですか!」


 なんでって、膝枕の時の選択肢は、うつ伏せになって深呼吸言一択でしょう常考。

 ぽかぽか、背を叩かれる。

 それもなんとなく心地よくてもぞもぞと、より収まりのよさそうな場所に、頭を動かしていく。


「く、くすぐったいです!止めて下さい」


 長い髪が、薄い夏の紬のあちこちをくすぐりたまらず逃げるようにする。


 そして、はじめは蓬の反撃のいたずらだった。

 言う事を聞かない俺に抗議のように、首筋にふーっと息を吹きかけた。


 背筋を羽箒でなぞられたみたいに、ぞぞぞとした。 


「ひゃんっ」


 たまらず身をはねあげたと同時に、とんでもない悲鳴が口から出た。

 首筋を両手で押さえ縮こまる俺。

 一拍遅れて羞恥心が大挙してやってくる。

 口をふさいで目を泳がせるが時すでにおそし、どうやら誰かさんのドS心に火をつけたみたいでした。

 いつもの、にこーっが、更に口の端がつり上がって、にまーっとなっていった。

 あ、オワタ。


 即時撤退を敢行。だが、全力で逃げ出そうとした所を背中から優しく捕獲された。


「うふふ、人の嫌がることはやってはいけないと体に教えて差し上げますね」


 はい、良い笑顔頂きました。


「ぎゃー、蓬さん。やめて、それシャレにならないっ!」


 首と肩とのはざまに柔らかい唇を押しつけられて、大きく息を吹きつけられる。

 自分ひとりでは決して、出来ないあり得ない感覚。再度、体に電流が走る。


「…んっ、あっ」


 口を噤むが体までは堪え切れず。為す術なく無様を晒してしまう。


「ふふふ、恥ずかしいですよね。わたしの気持ち分かりましたですよね」


 暗黒面に堕ちた蓬さんは、可愛らしくも邪悪な声で嗤う。

 もはや何も言う余裕のない俺に満足して、勝ち誇る。それは、一瞬の油断となった。

 閂みたいに締められたホールドが緩んだところを見逃さなかった。


 全く、同じように、着物の隙間、首の付け根に反撃をしかける。


「ふ、ふわぁっ」


 どきりとする声をあげて、こんどは蓬さんが身を捩じらせる。

 

 おもいしったか、ぐへへ。

 ななな、と首筋を押さえ真っ赤になる様が超気持ちいいデス。

 しかしうちの嫁の負けん気は、人の百倍強。きっと表情を作り直すと。


「もう勘弁なりませんです!」


 同じように強く、息を吹き返してきた。


 そう、初めはそんなただの意地の張り合いだったのは覚えている。

 何度も反撃の応酬を繰り返すうちに、いつしかやめられなくなってしまった。




 蓬がゆっくりと俺の首元から離れる。


「んっ、はぁ…」


 聞いた事もない官能的な声に、指の先まで震えた。

 長く深い口づけを終えたその小さな口の端から、銀の糸が静かに引いていく。

 よく知る少女の見せる想像もした事もないみだらな光景に目を離せなかった。

 まだ火照る首筋に身をよじらせた。


ヨシさま」


 はやく、と上目遣いで次をせがむ。わたしがやったからそちらの番ですと俺の着物を引っ張る。

 それでもなお、普段の清楚な面影が失われてないのは不思議だった。

 

「…ああ」


 胡乱な頭でそれにぎくしゃくと応じる。


 お互いの首筋に口づける。お互いの体温を分け与える行為。

 くすぐったいような、気持ちいいようななんともいえない感覚。

 それはひとりじゃ得られないもの。

 それを手さぐりで、一つ一つ試してみる。

 口をすぼめて、細く長く吹いてみたり。大きく開いて短く、雪の日、掌を温めるようにしてみたり。手を変え品を変えて何度も繰り返す。

 そのたびに未知の感覚が体の底から這いあがってくる。


「…はぁっ」


 耳元で酷く生生しく呼吸が聞こえる。それが段々とリズムを乱して、熱く荒くなっていくのが分かった。

 あの、良く知る蓬が、こんなことをしているという非日常の光景。

 それだけでも俺の心臓をはどこまでも上限知らずに加速していっただろう。


 幼い性のいたいけな慾望。

 俺も蓬もそれを満たす術を知らず。

 小さな快楽にもならないものを求めるにしても、こんな酷く不器用な行為しかできなかった。

 これ以上進むのは怖くて、でも離れる事も出来なくて。お互いを強く感じたかった。

 蜂蜜に漬けた小さな匙で、ミルクを撹拌したみたいな時間だった。


 初めは恐々とやっていたことも、次第に数をこなし心なしか大胆になっていった。

 首筋から肩口にかけて、着物は露わになってしまっていた、そこから零れたお互いの肌は、唇のみならず、舌や歯の軌跡で秋の森みたいに真っ赤に色づいている。


 生まれて間もない子犬の喧嘩みたいにじゃれあいつづけた。

 相手にやられた行為をそのまま返していく。

 そうして同じ感覚を共有しているという思いが一層行為を強く加速させる。


 気付けば、いつしか襟元がお互いの匂いのする液体で湿ってしまっていた。

 それはまるで自分のモノだと主張するように、真新しい教科書にマジックで名前を書く行為に似ている。


「…えと」


 いつのまにやら、床に引き倒していたらしい。

 蓬の肩越しにぼんやりと床の木目が映った。


 まるで俺が体重をかけて逃がさないようにしているみたいで、ひどく興奮を覚えた。

 しかし、実際には蓬の方も俺の背中を離すまいと、これ以上ない力で上着を押さえつけている。

 そして、俺の右足を両太ももで挟み込むように、ゆっくり閉じたり開いたりしている。

 それが初めは何を意味するのかが分からなかった。

 気付いたときに、気恥ずかしくも、たまらなくなって、頭から振り払うようにより深く首筋に舌を這わせた。

 とてもじゃないけどもう顔は見られなかった。頭がどうにかなってしまいそうで。

 ぴったりと体をくっつけて、お互いの境界線がなくなってしまえばいいと、俺も彼女の背を強く抱きしめる。

 だらしなく、気崩れてしまった着物。小麦色の健康的な肌と、透明な色をした隠された部分の境目に舌を這わせようとした。

 今までとちがう、震えが蓬に走った。


「そ、それ以上はこ、こわい…です」


 背中から手を離し、ぎゅっと襟元を正してしまう。


 怯えの色に、急速に俺の熱は冷めて、慌てて離れようと上半身を起こそうとする。

 しかしそれでも、俺を離そうとする気配はなく。ぎゅっと囚われたままだった。

 寧ろより大胆に、舌を、吐息を、肌に絡ませる。

 それでいて、自分の方は絶対防衛線を設けてそこからの先の侵入をゆるさない。それでいてそこから遠くに行こうとすると、爪や歯で抗議をする。


 ずるい。ずるいよこの子。


 攻撃>防御の実に彼女らしい悪魔の所業。

 

 それでも、目の前の少女の体を貪るのをやめられない。


 この日初めて俺は知った。

 綺麗な想いも、どうしようもない劣情も、それは同じものだと。

 

 できれば、この世の終わりまでこうしていられたらと願わずにはいられなかった。

 でも、歴史上沈まなかった太陽は一つもない。終わりは唐突にやってくる。

 あと、白夜なんて見たこと無いんでしらないよ。

 

 切れ切れの吐息。いままで見た事もない蠱惑的な笑み。

 新しい彼女の面は俺をまた魅了する。


「ごめんなさい。わたし、はしたない子だったんですね」

 

 まるで、礼節を何よりも大切にする彼女はそれをまるで罪悪のように言う。

 逆に言うとそれだけ禁断の実はとろけるように甘いということだ。

 背徳感は一層の喜びを伴って蓬の小さな体を震わせた。


「目に映る場所を重ねただけでこんなにもなってしまうんでしたら、もし……」


 自分の言葉から何を想像したのか、全身を真っ赤にして、小さくなると。


「ふわぁあああっ」


 と短い悲鳴を上げて、ついには布団を引っ張り出して籠城してしまった。

 そのまま、きっかり丸一日出てきませんでしたとさ。


「…………はえ?」


 あまりの急展開に溶けてしまった脳みそは反応しない。

 我に返ると手のうちには蓬さんの残り香しかなかった。とりあえずくんくん。


 そして、あとには、ただひとつの後悔。

 ヘタレてないで初チューくらいはさせていだただければ良かったという未練だけ。



 あ、ついでに『変態』の称号が『変態淑女』にいつのまにかレベルアップしておりました。


というわけで、サービス回。


えーと。もげろ。

いやさ、もうもげてましたね。爆発してください。

某マンガの刑部のように。



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