表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/98

デスゲームはじめました

一話目読んで頂きなしてありがとうございます。続けて二話になります。

 さて、脱出不能のデスゲームがはじまっちゃったわけですが。

 現状を一言で表すと、山の中でボッチ。なんだこれ。

 自然が綺麗で、空気がうまい。まあ、そんな冗談にもならない妄言はさておき。

 なんで、いきなりフィールドに放り出されているのかは、よく分からない。『☆をみるひと』かよ。

 ただ、周囲の山々にどことなく見覚えがあった。飛騨の国(岐阜県北部辺り)にあった昔のプレイヤーホームの近くだろう。

 状況を確認するために見渡せないほど植生が深い所でなくて助かった。この格好で木に上るのは考えただけでも重労働だ。


 そこで改めて、袖を上げて、きょろきょろと自分の服装を見てみる。

 緋袴に純白の打ち掛という。いわゆる巫女さんスタイルである。時代考証大丈夫なのかこれ。

 前からゲームらしい、いい加減さはそこら中で跳梁跋扈してたしな。まあ、いいや。


「しかし、見事に誰もいない」


 周囲が取り乱すなか、一人だけ冷静な俺カッケーに憧れてたんだけどな。

 こんなところまでボッチにしなくてもいいじゃないか。

 益体の無い事を呟きつつ、意外に余裕のある自分に驚く。ただ単にどんずまりで開き直っただけかもしれないが。


 まずは、とりあえず現状把握。


 ゲーム開始前に決めた花押(自分を示すサイン)を空中に書いてシステムウィンドウを開いた。

 一応確認するが右下のログアウトボタンは影も形もない。


「ですよねー」


 苦笑しても一人。

 事前に設定した少女の涼やかな声が一層のせつなさを演出する。


 気を取り直して、ぞんざいに『ステータス』の表示を押す。こういった所も某冒険の書みたいに、世界観に合わせればいいのにとは思う。


『ステータス』


 名前・桜姫

 職業・白拍子


 出自・清華家

 称号・駆けだしの踊り手

 守護霊・天鈿女命

 属性・水


 名声・0


 官位・なし


 体力 112/112

 技力 11/11


 腕力  1

 術力  2

 器用さ 2

 素早さ 2

 丈夫さ 1

 幸運  1

 魅力  12


 スキル 舞Lv1 華道Lv1 茶道Lv1


 俺は1ページ目のみ確認してそっと閉じた。俺だって、ネットゲーマーのかなりはしくれ、デスゲームで無双を夢想したことは一度や二度ではない。

 今だって、ついにこの時が来たかと湧き立つ物は無いわけではない。しかし。


「わかっちゃいたけどなぁ」


 数字が電柱さんとあひるさんしかいらっしゃらない。自由に振れたなけなしの5だけの初期ポイントも魅力に全振りしちゃったしな。狸と戦っても負けるぞこれ。

 鍛え上げたステータスだけではない。レアな愛刀も、一糸乱れぬ家臣団も、綺羅星の如き称号やらもどこにもない。

 この手にあるのは初期装備の木製の扇。そして、リアルでないゆえに実感に乏しい絶望だけ。

 

「……どうしてこうなった」


 あまりのやけくそ具合に、思わず〈白拍子〉(踊り子職)らしく踊り始めた。


 どうしてこうなった!

 どうしてこうなった!


 かくして、記念すべき初の舞は『どうしてこうなった!』でしたとさ。


「……空しい」


 何でやってしまったんだろう。数秒で自己嫌悪のステータス異常が発生し、我に返った。

 人間は本当に追いつめられると訳のわからない行動に出てしまうなぁと、実感した今日この頃。



 チャチャーチャーン ラララ~



『『舞』がLv2にあがりました』


 今の気分にそぐわない軽快な電子音とともに、システムメッセージが目の前を横切る。


「うるせえぇ!!」


 肺腑を目一杯使った叫び声は、夕暮れの近づく飛騨の山々に山彦となって響き渡る。雅やかな怒鳴り声になっていたのが更なる寂然を誘う。


 そんな俺の苦情を華麗にスルーしシステムは気にせず機械的に仕事を続ける。


『素早さが1あがりました。魅力が1あがりました。名声が1あがりました』

 

 ステータス以外に、疲労感も心なしか重さがあがって両肩にのしかかる。

 どんな名声が付いたんだよ、今の行動に。明らかにろくな評判じゃねえぞ。


 ちなみに『戦国Online』はスキル制ではあるがスキルにLvが設定されている。これを上げる事でステータスも上がっていく。

 セットできる枠が限られているので、有益なスキルを持っていた方がいいわけだが。(ちなみに初心者(ニュービー)PCは三枠)


 様々な支援スキルのある『舞』はともかく、『茶道』『華道』とか完全に、趣味スキルを選んでしまった。

 ゲームの初心者を装おうとしたわけだから仕方ないがやるせない。


 戦闘系スキルが一つもない状態でデスゲームとかもう笑うしかない。


「システム上、個人の武力はそれほど重要じゃないとはいえ、さすがにこれはキツイ」


 戦国ものという事で、基本は多人数対多人数での戦が前提である。

 ソロプレイ無双はできないのである。いくらステータスが高くても囲まれたら間違いなく死ぬ。

 日常的に斬り合いをしてきたNPCの侍たちは超怖いし、超強い。


 VRゲームで動くのは、所詮、現代人である自分の意識。システムの補正があろうとも使いこなすのはなかなか難しい。いくらフィジカル的な数字が上がれども、昔憧れた、超人的な動きは、大多数はまず出来ないのである。


 ただ、一応は例外的なプレーヤーもいるにはいる。『三人目の剣聖』佐藤一刀斎とか『謎の忍者』サスケとか。

 前者は噂でしか知らないが、後者はパーティを組んだ経験もあるのだが色々な意味で凄い。


 まず、おそらくはメリケンの本職の軍人さんで、銃器の扱いが鬼の様に上手い。火縄銃で綺麗にヘッドショット決めていく。

 問題なのは、町の中でも、全身が黒の忍者装束で二丁の火縄銃を抱えている事。

 本人はNINJAのロールプレイをしてるつもりなのが、全然これっぽっちも忍べてないのだ。

 兎に角目立つ。戦闘中も火薬使いなので死ぬほど喧しいし、片言の日本語でHAHAHAと笑いながら先頭に立って突っ込んでいくわ、なにかが間違ったスシテンプーラ的忍者なのだ。


 まあ、普通は、剣の達人とかごろごろいないし。銃なんて撃った事ない奴がほとんどだろう。まして、ゲームに興じる様なインドアな人種ばっかりだしな。


「生き残るにはまず人数。そういうわけで知り合いがどれだけINしてるかなんだが」


 普通のMMOならここで颯爽とフレンドリストを見るところであるが。


「そんなものはねえ」


 このゲームでよく悪い点でやり玉に上げられるのは、情報の取り扱いである。 


 まず、通信機能が恐ろしく制限されている。

 メールも無ェ、チャットとも無ェで、おらこんなゲームいやだと逃げ出した人も多い。一応、原始メールというかふみが存在するが、確実性がないうえにとーーーっーーーても時間がかかる。

 時代設定的な世界観からか、他に徹底するところがいくらでもあるだろうにと。

 実装は幾度となく大きな声で叫ばれたが、ユーザーの意見を止揚してよりよいゲームにと、すぐ反映する運営側も絶対に譲らなかった。

 臨場感のある戦がこの『戦国Online』の売りであるし。戦争では情報の伝達の精度と速さは必殺の武器に勝る。仕方ないとは思う。


 戦イベントは途中でログアウトすると、その戦いに参加は不可能だし。なまじ他のゲームに慣れているとストレスがかかる事間違いない。

 馬や鳥やらでの通信網の構築をメインにやっているユーザーもそれなりの数に上る程なのだ。


 そのおかげで、INする前に綿密に打ち合わせしておかないと、仲間と連絡がつかない事も多い。

 そんな不便なシステムでもこの状況では得難い機能。とりあえず、町や村に着いたら、片っ端から文を送るしかない。


「……いや、それよりも前にだ」 


 絶対にやらなければならない大切な事がある。

 ひょっとしたら、生死なんかよりもずっとずっと大切なこと。


 俺が、毎回新シーズンが始まった時に、最速でやらなければならない事。 


「嫁取りからだな」


 ゲームを始めてから四シーズン。俺はずっと同じ相手と婚姻してきた。

 もし、その相手が、他の誰かとくっつきでもしたら、俺は確実に精神的に死ぬ。NTR展開とか誰得。

 幸い彼女はシステム的な恩恵は殆どない、山の中の普通の農民だ。そうなる可能性は低い。

 履歴を確認しても一ゲーム目には生涯未婚だった。俺がいなければ、二ゲーム目でも、せっせと畑を耕していた事だろう。

 

 それでもだ。あいつが別の奴に取られる。たとえその可能性がごく低かったとしても、ありえないことはありえないのだ。

 最悪の未来予想図に考えただけでも、恐ろしい勢いで血の気が引いてくる。


 初めは軽い気持ちだった。

 婚姻システム試してみよう。なんか、身分の高い姫と会話とかハードル高すぎるし。身分上がったら、他の嫁迎えればいいしな、とかその程度でした。

 酷いなんて言ってくれるなよ。だって、どんなにリアリティがあっても、全てはバイトで表せられるデータの塊だろ。当時の俺もそうとしか思っていなかった。


 このゲームは、ただのNPCではなかったと知ったのは、後の事。それは詳しくは次の機会に。


 とにかく。

 いつもニコニコ楽しそうなあいつを見ていると、ささくれだった心が癒された。

 初めて家族の幸せを教えてくれた、俺の恩人なんだ。


 帰ったらおかえりって嬉しそうに迎えてくれて、時々苦いが暖かいご飯用意していて、戦に出る俺の無事を必死で祈ったりしてくれた。

 一緒に笑って、泣いて、時々喧嘩して。怒る時には容赦の無く。いくつかの悩みもあれば、望みも持っていた。

 一緒なら幸せになれるのレベルは通り越して、不幸な事でも一緒に乗り越えていけると思えるほど。

 最早大切な、俺の人生の一部なんだと思う。

 

 システム的には新シーズンで、嫁のありなしは選べる。前の嫁特典はどちらにしろ持ち越せるし、子供も育った状態で臣下として残るので、新しい伴侶を探した方がいいという多くの意見はゲーム的に正解だろう。


 けれども、どうしても俺はそういう割り切りが嫌だったのだ。


 幸い、ここは元プレイヤーホームのある彼女の故郷の近く。 

 俺は拳を握ると、飛騨の山を駆けはじめた。


修正・武家官職と位階でやろうと思いましたが調べるのが面倒なので統一します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ