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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

包丁仮面

作者: らすく
掲載日:2026/03/19

 今日は高校時代の級友の結婚である。そして新郎新婦とも、自分の同級生なのだ。他の同級生・当時の担任も出席していた。ほぼ同窓会となっていたのであった。

 「久しぶりだね。」

 「うん。元気にしていた?」

 あちこちから同級生達の会話が聴こえてくる。勿論この私も同級生・恩師との、久しぶりの交友を楽しんだ。


 式の場は教会だった。私は皆と整列し、讃美歌を歌った。そして間もなく新郎新婦の入場である。

 

 ===== ドアが派手に開いた =====

 

 まずは新郎の入場である。皆起立し、彼を迎えた。


 ===== 新婦の入場 =====


 父親にエスコートされ、新婦が入場してきた。

 新郎のところまで進む。

 そして新婦は父親から、新郎の元へと移った。そして腕を組んで牧師の前へと移動したのだった。


 とまあここまでは、どこにでもある光景なのだったが、ここらからが違った・・・。


 ===== バタン!! =====


 その扉を開ける音は、限りなく激しかったのであった。

 「・・・・!!」

 「きゃああ!!」

 「ひいいいい!!」

 あちらこちらから悲鳴が沸き起こった。

 勿論この私の眼にも、その光景は映った。それはにわかに信じられがたい事であった。

 包丁を持った覆面の男が乱入していた。その男の体術は物凄く、次から次へと、担任、級友、式場スタッフを殺害していった。そして新郎新婦も死んだ。


 気がつけば殺された人間、逃げた人間以外で、会場に残ったのは自分と包丁の男2人だった。

 呆然と立ち尽くす私の前に、男はツカツカと近づいてきた。もう私は、そこから動けなかった。

 「あなたは・・・。」

 そこで辛うじて、私は言葉を発したのである。問答無用の殺人鬼に対してである。我ながら、こんな無謀な事は無いであろう。しかし彼の反応は本当に意外なものであった。

 「うーん・・・。」

 少しの間、包丁の男は首をかしげた。しかしそれでも、彼の返答は速かった。

 

 ===== 包丁仮面 =====

 

 「は?」

 見た目そのままの名乗りだ。全く芸がない。だが、まだそれで終わらなかった。その包丁仮面は話を続けた。

 彼はズイッとお互いの鼻同士が接触しそうになるくらいに、私の目の前に接近した。そして・・・。

 ===== ガシッ =====

 いきなり彼は左腕で、私の右肩を強く掴んだのだった。因みに痛みを感じない程度の手心はあったようだ。

 「ひいっ!?」

 流石に私は驚嘆した。しかし何故か恐怖は感じない。明らかに彼は私に対して殺意を持っていない、と確信が持てていた。根拠は全く無いのであるが・・・。

 そこで彼は一言・・・。

 「君もまた包丁仮面。」

 「!?」

 訳が分からない。これは何かの比喩表現なのであろうか。でも根拠はないのであるが、この男は大真面目に発言しているようにみえる。人を殺しておいて、真面目も糞もないのであるが・・・。

 「うっ。」

 突然、私は意識が朦朧として意識を失った。それは現実からの逃避を意味するものであろうか・・・。

 

 ~~~~~ ここはいつであろうか ~~~~~


 私は幼い頃から内気な少年だった。

 そんな私を気にかけてくれる女の子がいた。

 度々、彼女は同級生に苛められている私を助けてくれた。

 彼女は私とは全く正反対で、運動も勉強もできて社交的な女の子であった。

 私は彼女に好意を持っていた。できれば交際したいと願っていた。しかし一方で、それは叶わぬ願いである、と思っていた。勿論その理由は私と彼女が、人としてつり合いが取れない、という引け目があったからである。

 こんなジレンマを感じながら、運よく(?)私は彼女とは中学・高校も同じ学校に通うことが出来たのだった。何故なら彼女は進学校を選択せず、地元の公立校を選択してくれたからなのである。


 とうとう高校を卒業するまで、私の内なる想いは彼女に対して閉じられたままであった。


 高校を卒業後、私はアルバイトしながら空手などの武術を習得した。何をやっても呑み込みの遅い自分だが、根気だけはあった様である。

 その理由は勿論、彼女への想いを抱きつ続けたからである。そしてそれは衰える事は無かった。


 ~~~~~ 月日は流れた ~~~~~


 そして数年後、自身を深めた私は、彼女を訪ねた。住所は探偵を使って調べた。彼女はまだ独身だった。彼女は東京都内で商社で経理を勤めていた。

 私は意気揚々と彼女の住むアパートを訪ねたのであった。


 ===== ピンポーン =====


 「どちら様でしょうか。」

 インターホン越しの会話である。

 「覚えていますか?高校まで同級生だった・・。」

 「・・・・あ・・・・!」

 どうやら彼女は私の事だと思い出し、認識してくれた様である。

 知人であることが分かった彼女は、私を部屋に入れてくれた。


 ===== 話は早かった ===== 


 私は彼女に交際を申し込んだ。しかしあっさりと断られた。彼女は婚約中の身であると言う。そしてその婚約者の写真をみた瞬間、私は驚愕した。


 ===== 何故コイツと =====


 何と写真に写っていたのは高校時代、私を苛めていた同級生だった。

 彼は有名私立大学に進学し、卒業後に大手企業に勤めていると言う。

 勿論、私は彼女を説得した。彼女のコイツの結婚を阻止するために・・・。

 しかし彼女の答えは、私の予想を裏切るものであった。


 「貴方は彼の事を誤解しているわ。」

 何と彼女はコイツの良さを力説し始めたのである。こともあろうに学生時代に私を虐めていた、この男の事をだ・・・!

 失望した私はフラフラと彼女の元から去って行った。


 もうこれで未練は吹っ切れた・・・・?いやとんでもない。いかなる手段を用いても私は彼女がコイツと結婚するのを阻止するつもりだ。本来は私と幸せになるべき女が、正に悪党とも呼べる男の毒牙にかかるのを見逃すわけにはいかない・・・。

 そうだ。私には苦労して手に入れた、この強靭な身体があるではないか・・・。


 同級生周りから彼女が結婚式を挙げるという情報が舞い込んできた。

 しかもこともあろうに私には招待状は届いていなかった。まさか郵便の手違い・トラブルであろうか・・・。いずれにせよ同級生・当時の担任を呼んでの式となるらしい。


 ~~~~~ 私には怒りの感情しか残っていなかった ~~~~~


 <<<< 意識がはっきりとしてきた >>>>

 どうやら私はトイレの洗面所にいるようだ。流しには血が付いた包丁が置かれていた。

 鏡の中に不審な男がいた。

 そこには返り血を浴びた作業服姿の包丁を持った男が、ただ一人だけ立ち尽くしていた。

 

                              ~ 包丁仮面 ~ <終>

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