第7話 戦闘
……早いな。
槍を振るって攻撃を仕掛ける。
その一撃は楽々、避けられてしまった。
相手は距離を取る。
深追いはせず、その場で構えて様子を伺う。
……攻撃は防げる――いや、本気を出してるとは限らないな。
今のは、あくまで先制の一撃。
仕留める気で来てるとはいえ、相手が本気とは限らない。
こちらを舐めているから、まだ力を隠している可能性が高い。
時間を稼ぐのが目的の俺にはありがたいが、底が見えないという点は厄介だ。
「ならこれならどうだ?」
誘拐犯の姿が消える。
いや、消えたと錯覚するほどの高速移動。
ガギッン、と近くで音が響く。
短剣が障壁に当たった音だ。
……まだ反応できてるがきついな。
想定よりも早いスピードアタッカーだった。
攻撃が当たる直前に障壁を張り、何とか身を守れている。
だが一瞬でも、反応が遅れれば死ぬ。
……子供に防御魔術を張りたいが余裕がない。
巻き込まれないように防御魔術を張って保護をと思っても、連撃でその隙がない。
下手に使えば、防御が間に合わない。
障壁に攻撃が当たった瞬間に、槍を振るうが空を切る。
今は、当たらずとも良い。
とりあえず、1人でも戦う意思があると示す必要がある。
「防御魔術は得意のようだな。力よ呼応せよ、ブースト」
「重ねがけか」
……身体強化の魔術か。あれより早くなるのか。
ブーストは魔術の中では倍率は低いが、身体能力を全体的に強化できる汎用性の高い魔術。
身体強化系の中でも基本の魔術。
あの速度的に、魔導具か別の魔術を使っていたはず、それに重ねてきた。
かなり厄介だ。
障壁に2つの衝撃が走る。
2本の短剣で、切りかかったようだ。
槍を突き出した後、大きく横に薙ぐ。
空を切る。
誘拐犯は高速で壁や地面を蹴って、移動しながら攻撃を仕掛けてくる。
速度が衰える気配はない。
これでは、俺が攻撃を当てるのは無理だろう。
……速度は上がったが、何とか反応はできてる。
反応ができてる間は、俺に攻撃が届くことはない。
速度は早いが、一撃がそこまで重くない。
俺の防御魔術なら割られない。
安心した。
貫かれてないのなら問題はない。
これならメレアが到着するまで、時間が稼げる。
「なんだその硬さは」
「防御魔術には自信がある」
相手の驚きの声が聞こえる。
すぐに倒す予定だったのに、防御魔術を突破できず、焦っているようだ。
「お前じゃ俺を殺せない」
俺は冷静さを欠かせるために、煽る。
怒れば怒るほど、人は理性的ではいられなくなる。
「抜かせ!」
大声とともに、地面が砕けた音が聞こえた。
即座に障壁を展開する。
展開した直後、一層、甲高い音が周囲に響いた。
障壁に短剣が当たっている。
……危なかった。
ようやく、誘拐犯の姿が目視できた。
強い踏み込みからの突進、速度を生かした攻撃だ。
本気の一撃に見える。
しかし、障壁は健在、砕けてはいない。
「な、んだと……」
自慢の一撃を防がれた事に驚いた誘拐犯目掛けて、槍を振るう。
誘拐犯はハッとして、大きく距離を取り槍を避けた。
……くっそ、外れた。
間違いなく、絶好のチャンスだったのに逃してしまった。
次、また同じチャンスが来るか分からない。
「ナイス〜」
聞き馴染みのある声が聞こえた瞬間、誘拐犯の身体が地面から生えた植物によって縛られる。
植物操作の魔術だ。
メレアが到着したようだ。
俺が苦戦した相手を余裕で捕獲した。
「なんだ、クッソ離せ!」
誘拐犯は暴れるが、さらに強く縛られて身動きが取れなくなる。
そのまま絞まる力が強くなり、意識を失った。
「遅かったな。死ぬかと思った」
「近くにいた兵士への説明が大変だった。この程度の賊なら余裕でしょ」
「いや、かなり早いスピードアタッカーだったぞ。障壁が破壊されなかったから何とかなったが」
「お兄の防御魔術突破できる人そうそういない」
「Bランク以上なら行けるだろ」
「どうだろ」
数分後、数人の兵士が到着して、子供を保護し誘拐犯を捕縛する。
「ご協力感謝します」
俺たち2人は、誘拐犯捕獲した事を感謝された。
どうやら、常習犯だったようであの速度で逃げ回られて手を焼いていたようだ。
確かにあの速度で逃げられると、捕まえるのは難しい。
一件落着して、2人で家に帰る。
俺は、作り途中だった料理を完成させないとならない。
料理途中でやめたから、再開して上手く行くか分からないのが怖い。




