第五救 利他③〜他の為に尽くすこと
俺は早速、パトラッシュと交番所長、ラファエル・ラ・ベルジェと三人で、作戦会議に入った。
纏めると、掏摸の容疑者は、
・女子供、老人を狙わない
・ほとんど半径十キロメートル以内で犯行がなされている
・そんなに大金は狙わない
・単独犯である
・髪はグレーで、身長は百八十センチで細身。髪が長く、バンドマンっぽい
ということらしい。
「…所長。捕まえるの止めましょう」
俺は思わず言った。
「何故だ」
所長は、「訳がわからん」と言いたげな目で俺を睨んだ。
「この人、良い人なのでは?」
「まぁ、女子供、老人を狙わない時点でそうかもな。でも、掏摸は立派な犯罪だぞ」
一番多い手口は、身なりのいい商人や貴族の子供の護衛で、一番下っ端っぽいのを狙うそうである。
とてもすばしっこく、それなりに訓練した護衛でも捕まえられないとか。
「うーん。とりあえず、明日の出没場所を占いましょうか」
★★★
「おん あぼぎゃ べいろしゃのう まかぼだら…」
俺と仏様とパトラッシュは、祈りに入った。
パトラッシュは、沢山修行して、仏様と祈りを深めると、占いができる。
まぁ、でも占いというより、百発百中のものなので、近未来予知と言った方が正しいか。
「…パトラッシュ。どうだ?」
パトラッシュは、おもむろに地図を指さした。
「ワンワン(明日の朝十時くらいに、犯人はここに潜んでいるから、ここに行って囮捜査をしよう)」
「ふーん。大通りの傍か。人通りが多い割に目立たない裏路地だから、隠れるのに最適かもな」
★★★
その日の夜。
ユークリッド様が、にっこにこで夕飯を召し上がっていた。
「こら、ジルベール。お前のせいで一か月分のお米が一週間持たなそうじゃないか」
コック長にたしなめられるが、コック長は別に怒っているわけではない。現にコック長も、丼飯を掻き込んでいる。
ここ、セラフィム孤児院に限らず、この世界の孤児院はかなり裕福だ。
商人や貴族の中に途方も無い金持ちがいて、その人達が「社会貢献」の為に挙って浄財をくれる。もちろん、アナスタシア・ラ・ランカスター公爵様は、一番の寄付者だ。
◯統一教会のように、生活を苦しくしてまで浄財を抛たなくていい。
真如苑では、「自分にできるだけ。気持ちの分だけ」でいい。
仮に貴方が金銭的に余裕がないなら、一円も寄付しなくていい。縦令百万円持っていても、「寄付する気分ではない」なら、一円も寄付しなくてもいい。
だけど、寄付すると、その分どこかからお金が戻ってくる。アナスタシア様も、浄財を抛つ以上の売り上げがいつも押し寄せてくるらしい。
今日の夕飯は、秋刀魚の混ぜご飯と味噌汁と肉じゃが。
皆凄い勢いで食べているが、ユークリッド様が一番食べている。普通に嬉しい。
「?」
味噌汁を一口飲んで俺は、違和感を感じた。確かに美味しいが、この味は◯ュウジのレシピと違う。
「コック長。味噌汁が…」
「ああ、それは…」
コック長が気まずそうに口を開く前に、物凄くかわいい女の子が俺の前に座った。
にっこり笑うと、俺の耳元に口を寄せる。
「…悲劇の第三王女ジャンヌ。見つけた」
「!!」
俺は、その子の顔をまじまじと見た。艶々の金髪に青い目。整いすぎた顔だからこそ、恐怖が募る。どうして俺の前世の名前を。
「…びっくりしてるわね。私は、前世で貴女の護衛だったリアムよ。今はシェリーちゃんって呼んでね」
…そういえば、リアムは前世でいつも、
「俺は、かわいい女の子に生まれ変わってモテモテのウハウハの生活をする」
って言ってたな。
リアムは、護衛が暇だからって、いつも料理人達に交じって料理ばっかりやってたな。
「お前みたいな第三王女を狙う奴がいなくて助かるよ。リスクしかないもんな」
前世でいつも言われてた言葉。確かに、前世の私を殺したところで、王位継承権は無いわ、王宮で放置されていて、人望も無い。それでいて、殺せば「王女を殺した」として、前王家に命を狙われるだけ。
…リアムは、いつも暇そうにしてたな。
そう言えば、料理上手かったな。
リアムは、革命時にどさくさに紛れて直ぐに殺されてしまったとか。「日頃の訓練を怠った」ことを後悔したが、死ぬ直前に仏様に「生まれ変わったら、かわいい女の子になって、ジャンヌの下へ行きたい」と願ったそうだ。
そんでもって今という訳だ。
「シェリーちゃんってお料理上手だから、厨房の手伝いに入らせてもらっているの」
シェリーは、可愛くウィングすると、俺の隣でご飯を食べ始めた。
さて、来週は大捕物! 「良い人」?な掏摸の正体は如何に?
続きます! 南無真如。




