第二救〜先を明るく見よ〜
「ただいま〜」
俺は家に帰って違和感を覚えた。
食卓から漂う、得も言われぬ肉の焼ける匂い。
「あふぁ~」
隣のパトラッシュは、余りのいい匂いに気を失いかけている。
俺は、恐る恐る食卓に向かった。そこには、笑顔の母親が。
母親、プリシラ・ラ・ブローニュ伯爵夫人も、もちろん敬虔な真如教徒な為、貧乏なりに上手くやれてる。普段は、周りの人の相談に乗る事で、報酬や食べ物を得ている。
「あら、ジルベール遅かったわね。お肉が冷めるから早くお食べ」
食卓の上には、見たことないくらいの見事なサシのステーキ。厚さも、五センチはあるか。見たことないくらい美味しそうである。
「A五ランクですってよ。アナスタシア様からいただいたの」
…アナスタシア様…。アナスタシア・ラ・ランカスター公爵。女公爵当主にして、今世界一の富豪とも言われる。
革命が起きて、税率がぐーんと下がり、俺達のように領地経営だけで食べていた貴族達は、瞬く間に没落した。
今や、貴族より商人や豪農の方が断然金持ちである。
アナスタシア様は、商売から農業からやることなすこと大当たり。物凄く頭が良くて美しい方なので、生きてるうちから銅像すらある。
…しかし。アナスタシア様は、無類の「美少年好き」。「美少年倶楽部」をつくって、美少年達を囲っているのだ。
美少年達は、適材適所の職を与えられ、希望すれば実家に仕送りとかもできる。アイドル部門の売り上げが凄くて、劇団にアイドルグループに、俳優部門に…。数え上げたらきりがない。
特に、「品のある美少年」がお好みのようで、俺のような没落貴族達は、喜んで息子を差し出すといった有り様。
美少年達は、結婚も許されるし、嫌なら辞めてもいい。
だが、未だかつて辞めた人はいないという。
…アナスタシア様は、人心掌握の天才でもあるからだ。
もちろん、時々家に来るのも、アナスタシア様から「美少年倶楽部」の一員として勧誘されているからだ。
…しかし、俺には夢がある。
一心不乱に肉にむしゃぶりつくパトラッシュに話し掛ける。
「パトラッシュ。これ食べたら、散歩行く振りして家出しよう」
「クゥン(またぁ? 行くとこ決まってるくせに)」
俺は、家出をすることにした。
輝かしい未来の為に!
真如苑では「先を明るく見よ」と教えられる。どんなに悪い状況も、永遠に続かないし、神様からの試練と捉えれば、さらなる幸福を望める。
信心を磨いて、希望を捨てなければ人生は楽しい!
「仏様、俺達をお守りください」
俺が祈ると、腕の仏様が頷いてくれた。
さて、ずらかるとするか。
続きます!




