第二十三救 大乗⑫〜誰でも救う
「エメ…」
エメは、リンに婚約を解消されてしばらくしてから、パパが連れてきた新しい婚約者だ。
ショートカットで、金髪青目のエメ。雀斑はあるが凛とした美人で、スタイル抜群だ。
初めて会ったのは、小学校高学年の時。身長が高く、細身のエメにフリッフリのピンクのドレスは激しく似合っていなかった。
…俺がリンを好きだったから、親に強制された格好に違いなかった。
羞恥で頬を染めたエメは、美貌が引き立って良かったが、俺と同じ雀斑があるのが気に入らなかった。
…というか、その当時の俺は、リン以外の女に興味がなさすぎて、他の女の粗を探してばかりだった。
それから、エメは金魚の糞みたいに俺を慕って付いてきた。
…俺はそれが余計気に入らなかった。
散々冷たくしたが、エメは学校すら俺の同じところを選んで付いてきた。
エメは、とにかく頭が良く、俺より全然上の学校を狙えるのにも拘わらず、俺と同じ学校を選んで入学してきた。大学すらも。それが妬ましくて、疎ましくて、俺は余計エメに冷たくした。
エメは、入った学校では案の定、常にトップだった。…それが余計に俺の劣等感を刺激した。
入学式、卒業式の答辞は必ずエメ。圧倒的な学力と、卓越した運動神経。美人でスタイルもいいエメは、男女化関係無くモテた。…教師すらにも。
…俺は、何回も同級生やその他生徒達、教師すらからも、エメと婚約を解消しろと迫られた。
「勝手にしろ。俺は、エメのことは好きでも何でもない」
…俺のお決まりの台詞。しかし、エメは俺との婚約を解消したがらなかった。
数多の男女からの求愛にも拘わらず、エメは俺を選んだ。理解不能だった。学年一のイケメンと、学校一の美女が、エメに求愛したのに。
しかし、パパの会社を追い出されてからは関係が変わった。
…取巻きが居なくなった俺には、エメしかいなかったのだ。
そんなに「ロベール自動車の奥様という地位」が欲しいのか?
…世間知らずだった俺は、パパの会社が傾いていたことと、エメは両親からも、俺との婚約を解消するように説得されていたことを知らなかった。
エメが、頑に俺との婚約解消をしたがらなかったそうだ。
エメは、「ロベール自動車の奥様という地位」よりも、常に俺の隣を選んでいたのに…。
パパの会社を追い出され、小さいボロアパートに転がり込んだ俺。隣の部屋には、何故かいつもエメがいた。
俺が落ち込んでいる時に、エメは、手料理を持って部屋に来てくれた。
超が付くお嬢さん育ちのエメ。
指には、絆創膏ばかりが貼られ、料理は焦げてて美味しくもなかった。
…エメが初めて持って来た目玉焼き。焦げてて、黄身もぐちゃぐちゃで、味付けもされてなかった。
…でも、一口食べて俺は、涙が止まらなかった。
あんなに俺の機嫌取りに一生懸命だった取巻き達は、パパの会社を追い出された日から、誰も居なくなった。まるで最初から誰も居なかったように。
だが、エメが、エメだけが傍に居てくれた。目玉焼きは全然美味しくなかったが、俺の心が温かいもので一杯になった。
…あんなにご飯を食べて幸せな気持ちになったことは無い。
俺はその日、初めてエメを抱いた。エメは、あんなにモテたのに処女だった。その事実に驚くと共に、俺はその日からエメをとても大事にした。
…まさか一緒に、アンジェ特別養護老人ホームまで行くことになるとは思わなかったが。
★★★
初めての本当の愛を知り、父親や母親にも愛されていたことに漸く気付いたエンゾ。
次回。エンゾ再生の物語最終章。
仏様がいて、生きていたら大丈夫さ☆
南無真如!
今週も読んでいただきありがとうございました。




