第二十一教 大乗⑩〜誰でも救う
「死ね!!」
逆上したエンゾがナイフを思いっ切り振りかぶった。絶体絶命!
アーサーは、目を閉じ覚悟を決めた。
…ここまでか…。
★★★
(やっと、こいつらを殺せる)
逆上しきって、思考力を奪われたエンゾ。
ナイフを思いっ切りアーサーに突き立てようとした、その時!
「ガッ」
「!」
エンゾは急に誰かに腕を掴まれ、振り向こうとした時に左頬を力任せに殴られた。
感じたことのない想像を絶する痛み。そこでエンゾの意識は途切れた。
★★★
レオは、父親アーサーにナイフを振りかぶる男を見て、無意識に身体が動いていた。
怒りのあまりまだ手が震えている。
「おお。レオ。儂を助けてくれてありがとう」
裸のアーサーがひしとしがみついてきた。
「親父! どいてくれ! 俺はこいつが許せねぇ!」
「止めろ! レオ。こいつが死んでしまうぞ。もう気を失っているようだから、その辺にしとけ」
「でも、何でこんな…」
「儂にもよく分からんのじゃ」
★★★
レオとアーサーは、一緒のベッドで仲良く眠り、仏様とパトラッシュは、危機一髪に間に合ったことに安堵しつつ家路を急いだ。
「仏様、ありがとう。俺の大事な親父を助けさせてくれて」
レオは、仏様に深く感謝しながら、小さくなった親父の身体を抱いて眠りに就いた。
(仏様…本当にいらっしゃった。儂を助けてくれて本当にありがとうございます)
アーサーも、また仏様に深く感謝を捧げて眠りに就いた。
★★★
「ここは…?」
エンゾが目覚めると、そこは見慣れない白い天井だった。
「いっ…」
身体中が痛い。誰かに手を握られているのを感じた。握られた手の方を向くと、そこには、慈愛に満ちた微笑みでエンゾを見詰める仏様がいた。
「どうして…俺を…」
「ここは、病室です。貴方の歯が全部折れていたので、急激に強い回復魔法を掛けたのです。身体に相当負担がかかったはずです。今は安静になさい」
エンゾの目から涙が溢れて止まらなくなった。
「お、俺は、本当にどうしょうもない奴で…。さっきも、レオの親父を刺そうとして…」
自分のことを思い出せば思い出すほど、情けなく、惨めで…。エンゾは、しゃくり上げながら、懺悔の言葉を口にした。
「ううう…どうして…どうして…この俺を…俺なんか助けても…俺の親父だって俺を…」
「エンゾ。大乗という言葉を知っていますか? 大乗は大きな乗り物のことで、それは誰でも乗れる。つまり、誰でも救われるというのが、真如苑の教え。貴方がどんな方であっても、私は貴方を救わずにはいられないのです」
「…ううっ…そん…そんな…ことって…本当にありがとう…ございます」
滂沱の涙を流しながら、エンゾは仏様の手を握り返して、感謝の言葉を返す返す述べていた。
仏様の温かな手から、エンゾの心に温かいものが流れ込んできた。
「エンゾ!」
その時、バタン! と大きな音がして誰かが入ってきた。
★★★
レオとアーサー、無事で良かったね! エンゾも、仏様が救ってくださったようです。誰か迎えにきてくれたみたい。
さて、次回からはエンゾが立ち上がる番です。お楽しみに! あなたがどんな方であって、どんなことを思おうとも仏様は、あなたを救わずにはいられません。さてご一緒に。南無真如!




