第十九教 大乗⑧〜誰でも救う
「全っ然」
また、エンゾの一つの恋が破れた。…いや、恋とは呼べない。小学校高学年になって、かなりモテるようになったエンゾは、言い寄ってくる女の子と、手当たり次第に付き合った。
しかし、リンに嫉妬してもらいたかったのに、肝心のリンは、いつも違う男の子と楽しそうに喋っているだけ。
エンゾは、好きでもない女の子と、デートだなんだのに付き合わされ、苦痛以外の何物でもなかった。
…リンといた時は、目に映る全てが輝いて見えたのに。今は、全てがモノクローム。灰色の世界だ…。
灰色の世界で、エンゾが機嫌悪そうにしていると、女の子達は決まって同じ台詞を吐く。
「ねぇ。私のこと好き?」
その頃には別れたくて堪らなくなっているエンゾは、いつも、
「全っ然」
と言っては、女の子達に別れを告げられていた。
びんたはかなりマシな方で、急所蹴りも、何回されたか覚えていない。
「サッカー部のエースクラスの女の子の急所蹴りは死ぬかと思った」
★★★
そして、中学校の入学式。悪夢はまた訪れた。
「レオ…」
中学校に上がったレオは、長めの金髪に大きな青目、昔のように憂いを帯びた表情が少し大人びて、益々美少年っぷりに磨きがかかっていた。背がかなり伸びて、がっちり体形になっている。
「キャアアアー!!! レオー!!!!」
レオ人気は瞬く間に復活し、親衛隊の中にリンちゃんもいる有様だ。
リンちゃんが、目を輝かせて、頬を染めている。
…その視線の先に自分が居たかった。
エンゾは、またその日から執拗にレオを虐め始めた。
…レオが再び学校に来なくなるまで、一週間もかからなかった。
が、やはりリンちゃんは、他の男と楽しそうに喋っているだけ。
★★★
社会人になったエンゾは、大手自動車会社の社長である父親の会社に入らせてもらった。
周りには、瞬く間に取巻きができて、「御曹司」ともて囃されていた。
仕事は楽で、給与も十分にあったエンゾだが、キャバクラにハマってしまい、出来心で会社の金を一千万くらい着服してしまった。
…言うまでもなく別人だが、リンちゃんに少し似ているキャバ嬢が居たのだ。
お年玉だけで億を超えたこともあったエンゾは、「大したことはない」と高を括っていた。
が、父親は激怒した。会社を首になったエンゾは、家からも叩き出された。
殆ど文無しの状態で自活しなければならなくなったエンゾは、職を転々とした後、やっと落ち着けたのが、ここアンジェ特別養護老人ホームだった。
「俺は、まさかあんなに仕事ができなかっただなんて…」
御曹司と甘やかされた過去しかなかったエンゾは、家を出されてから本当に苦労した。
今は、老人ホームの職員として、それなりにじいさんばあさんからモテて、楽しい毎日だったのに…。
「クソッ! レオめ…」
★★★
エンゾの過去はここまでです。可哀想なエンゾ。仏様のお力で幸せになれるといいね。
では、続きは次回。南無真如! ネタが尽きそう!(笑)




