第十救 利他⑧〜他の為に尽くすこと
「ここか…」
明らかに寂れている畑にノエルは辿り着いた。周りには、放棄耕作地だらけで、真ん中に申し訳程度に小麦が植えられている。
その時、ノエルは重大なことに気が付いた。
「…連絡してない」
チラシを見て辿り着いたとはいえ、アポ無しは不味い。
ノエルは、スマホを取り出した。その時。
「着いたよ!」
胸のネックレスが光り、仏様が喋った。
暫くして、奥からじいさんとばあさんが出てきた。
「君がノエル君か。仏様から話は聞いているよ」
じいさんは、大事そうに仏像を持っていた。ばあさんは、ノエルを見て頬を赤く染めてもじもじしている。
「あの、みゅうじしゃんとやらのノエル君って、こったらいい男だったとは。おしゃれが足らんかったかの」
…心做しかじいさんも、頬を赤く染めている。
「ばあさんには、内緒だったけど、俺は男もイケる!」
不穏な言葉がじいさんの口から溢れたが、ノエルは聞かなかったことにした。
「あ、あの」
ノエルは、口を開いたが、じいさんが手で制した。
「皆まで言わんでもええ。ノエル君のことは、仏様から聞いているのじゃ」
じいさん、イーサン・クラークと、ばあさん、ベラ・クラークは真如苑信者だった。
(仏様って万能だな…)
ノエルは、感謝しつつ、イーサンじいさんに付いて行った。
★★★
「わぁ…」
クラークさんたちの家は、旧家だった。古いが馬鹿でかい屋敷がノエルを圧倒する。
「まぁ、見ての通り没落貴族じゃ。娘や息子達も、「農業なんか儲からん」って言って、都会に出ちまったよ。孫にもほとんど会えないのが寂しいね」
イーサンじいさんが、顔を曇らせる。
収穫前の小麦が弱々しく揺れている…。収穫したところで、大したお金にはならないだろう。
★★★
ノエルは、とりあえず昼食をご馳走になって、農業の手伝いをした。
「わわっ!」
思ったより向いてなくて、収穫前の小麦を駄目にしたり、機械を使おうとして転けたり、散々だった。
その日の夜。
「夕飯じゃ。今日は疲れたろう。ありがとうね」
ベラばあさんが、カレーを作ってくれた。それは、何の変哲もないカレーだったが、ノエルには今まで食べたどんなご馳走よりも美味しすぎた。二人の愛情や優しさに胸を打たれたのだ。
「ううっ…」
気が付けば、ノエルは食べながら号泣していた。
「な、なんか良くなかったかい? 若い人はカレーが好きだと思って…」
ベラばあさんと、イーサンじいさんが慌てるが、ノエルは涙を止めることができずにいた。
後から後から涙が溢れて、カレーに溢れていく。
ノエルはその時、(この二人の為に一生懸命頑張ろう)と、利他の心に目覚めたのである。
★★★
さて、「利他の心」に目覚めたノエル。ここからノエルの快進撃が始まります! お楽しみに!
今週も読んでくださり、ありがとうございました。南無真如! 皆様に幸福を!




