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少しづつ自分だけの未来を
悠真は、この日常の中で少しずつ変化していった。最初は「主人公ではない」と思っていたが、今はその考え方が少し違ってきていた。主人公でなくても、彼の物語は紡がれていく。目立つことが全てではなく、自分がいる場所で少しずつ自分らしく生きることで、誰かにとっての大切な存在になれることを知った。
蘭と一緒に過ごす日々は、何気ない瞬間が宝物のように思えるようになった。放課後の帰り道、一緒に勉強したり、時折お互いに悩みを打ち明けたりする時間が、悠真にとって何よりも大切になっていった。
ある日、蘭が言った。
「ねえ、高橋くん、もっと一緒に過ごしてみたいな。」
悠真はその言葉に、少し驚いた。でも、すぐに心の中で頷いた。
「うん、僕も君ともっと色んなことを話したいと思ってた。」
その瞬間、悠真は気づいた。目立つことなくても、自分の物語は確かに存在していて、その物語を一緒に歩む人がいることが何よりも幸せだということを。