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でも、私実は〜訳ありな彼女に捧ぐ、デッカい青年のデッカいプロポーズ

作者: 秋田 夏

『クソっ!!!クソっ!!!クソっ!!!』


 夏の夕暮れ、グランド付きのデッカい公園。

 ユニホーム姿でバットをブンブン振り回すのは、デッカい夢を追いかける小学4年生の小さな少年。

 監督に直談判して強行出場した中学1年生の試合で3三振。

 全くバット当たらなかった。

 速さについていけなかったと言うより、高い所から投げ下ろされる落差についていけなかった。

 

『クソっ!!!クソっ!!!クソっ!!!』


 かれこれ2時間、バットを1人でブンブンしていた少年が周囲を見渡すと、ベンチに座って本を読んでいるデッカい女子高生が目に付いた。

 あの制服は近所の高校生が着ていた。

 普段なら何の感情も湧かない少年はバットを置いてボールを握りしめて近づいていった。


『な、何かな?』

 

 近くに寄って来た少年が、品定めするようにじーーーと見てきて読書どころでは無くなった、雪のように白い肌のデッカい女は少年におずおずと聞いた。

 少年は逆に


『デッカいおねぇさん、今ひま???』

 

 と聞き返した。

 ナ、ナンパ!?

 ショタから!?

 これは現実!?

 180センチに擬態しているデッカい小説家志望はクールな外見に反して、すぐにテンパってしまう。


『ひ、暇と言えば暇だけど......

 って!!!だ、駄目だよ、そんな、君まだ、』小学生でしょ!!!ませすぎだよ!!!


 と続くはずだった言葉は


『ひまなんだね、デッカいオネェさん

 だったら練習付き合ってよ!!!』


 日焼けした少年の満面の笑みに遮らた。


『え?練習?』


 頭の中に?マークが踊る、年下の同級生達と中々馴染めないデッカい訳あり女子高生に


『はい、これ』

 

 少年は白球を渡し


『はい、じゃあ立って!立って!!!

 メジャーリーガーになる俺に休んでる時間なんてないからね!!!』


 立ち上がるように強引に手を引いた。


『ちょ、ちょっと君!!!』

 

 押しに弱く、この先、人間社会でやっていけるのか親からも親友からも心配されている人としてはデッカすぎる美女と、生粋の野球少年が出会ったその日、夕陽が沈んだ公園に


『カキーーン!!!カキーーン!!!カキーーーン!!!』

  

 小さな少年が白球をかっ飛ばす音が響き続けた。

  

『カキーーン!!!カキーーン!!!カキーーーン!!!』


 そして、それは次の日も、そのまた次の日も、響き続けた。

 



           十 十 十




 23歳190センチ90キロ。

 このデッカい青年は、昔よく文句1つ言わず修行に付き合ってくれた、デッカいオネェさんに、9回目のプロポーズをしている最中だ。

 ずっと昔から大好きだったことにギリギリで気付いた。


「薫ちゃん!好きだ!!俺と結婚してくれ!!!」


 冬空の下、2人がよくキャッチボールした公園に響く声。

 メジャーリーガー顔負けのデッカい女は頬を赤らめながらも


「大吉ちゃん、何度言ってくれても......こればっかりはさ...

 わ、私は同郷の太郎さんと一緒になるから...ごめんね」


 俯きながら首を振った。


「なんでだよ!!??

 薫ちゃんも俺のこと好きって猫ネェから聞いたよ!!!

 なんで好きでもない人と結婚しようとするんだよ!!!」

 

 大吉は、ベンチに座る薫の正面に立ち肩をガッチリ掴んで顔を近づける。

 明日、日本を経たないといけない。

 今夜が9回裏ツーアウト満塁だ。

 大吉のデッカい迫力に対して、薫は、か細い声で


「だって......だって......私の方が大吉ちゃんより......

 本当は10個も年上なんだもん...」


 大吉を三振あきらめさせる為の、球を投げた。

 子供の頃に5つ上だと聞いた以降、年の確認をし合ったことが無かったので少し驚いたが、そんなことくらい気にしないデッカい大吉は迷わず


「年なんか関係あるか!!!!

 好き同士なら50離れてようがカトちゃんっぺだ!!!!」


 と打ち返した。

 打ち返されてきたボールに思わず口角が上がった薫だったが、首を振って

 

「でも、でも私......大吉ちゃんより10セン......

 ううん、本当は...本当は50センチも大きいんだよ?」


 更なる球を投げた。

 薫は人と会う時は60センチ、つまり能力の限界まで背を縮めている。

 240?目の前にいる薫は大吉より10センチ下くらいにしか見えないが......いやそういえばたまに今日の薫ちゃん何だがすげーデッカいなと思うこともあったけど、そんなことくらい気にしないデッカい大吉は

 

「薫ちゃんが240センチなら!!!

 俺のストライクゾーンは今からそこだけだ!!!

 ボール球には絶対に手を出さない!!!」


 と、また、いとも簡単に打ち返した。

 打ち返されて薫は、小声で「ほ、ほんとに?」と呟いたがもう一度首を振って、


「でも、でも、大吉ちゃんみたいな人気者と......

 官能小説で生計立ててるデッカい女、世間が認める訳ないよ」


 と切なそうに更なる球を投げてきた。

 官能小説って何だ?と一瞬思ったが、やはりそんなことくらい気にしないデッカい大吉は


「世間なんて関係ない!!!!!

 ミズノのだって関係ない!!!

 大事なのは2人の気持ちだ!!!

 些細なことばっか気にしてないで、二人で幸せのホームランかっ飛ばそうよ!!!!!

 あのイケメンさんに薫ちゃんは相応しくない!!!!!

 だって薫ちゃんは俺が好きなんだから!!!!!!!」


 と渾身の愛を込めて打ち返した。

 

「大吉ちゃん......」


 ベンチに座る240センチのドデカい美女の目には涙が浮かぶ。

 感情が揺さぶられて変身が解けている。

 悲しみじゃない。だが、嬉しさだけでもない。

 幼い頃から自分に懐いてくれた目の前の人間。

 強引だけどどこまでも素直でまっすぐな所を可愛く思っていたのに、少年が青年になるにつれ、いつの間にか心惹かれていた。

 好き。本当は大好き。

 誰にも盗られたくない。

 でも、でも、そう、私は、私は


「...八尺様っていう妖怪なんだ...

 人間じゃないんだ.....だから大吉ちゃんとは住む」世界が違うから......大吉ちゃんは人間の可愛い女の子を捕まえて...


 と続くはずだった言葉は、


「「んっっ」」


 デッカいファーストキスに遮られた。

 官能のかけらもない、デッカいぶっちゅーの後


「薫ちゃん妖怪だったんだね!!!

 いやー驚いたよ、本当驚いた!!

 唐突すぎてさ!!!

 でもそんなの関係ねぇ!!!

 薫ちゃんが妖怪どころか男だったとしても!!!

 そんなの関係ねぇんだ!!!

 俺は薫ちゃんが好きだーーー!!!!!!!

 ずっと前から好きなんだ!!!!!!!」


 と愛さえあればオールオッケーなデッカいフルスイングで愛を叫んだ。


「......バカ......デッカすぎだよ......」

 

 二人の出会いの場で

 デッカいフルスイングが

 デッカい青年が小さな少年だった頃のように

『カキーーン!!!』とデッカい

 サヨナラ逆転満塁ホームランをかっ飛ばせたかどうか

 あえては語るまい。


 ただし、1つ語るなら、20年後のNBAドラフト

 デッカい夢を叶えた元メジャーリーガーの

 デッカい息子が圧倒的ドラフト1位で指名された。

読んで頂きありがとうございました。

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