一部を切り取られて
切り取られたぼくの Ichibu は
君に捧げたのです
朝に夕に水をやり
日ざしは強過ぎず暗過ぎない場所に置いて
大切に見守ってくれたなら
切り取られたぼくの Ichibu は
やがて君を愛するようになる
ぼくは夢見ている
切り取られたぼくの Ichibu が
君の内側で大きく育ち
ぼくのよろこびを君に伝えることを
ぼくのよろこびが君のよろこびになることを
それでもいのちには限りがあり
切り取られたぼくの Ichibu が
しおれて枯れて干からびたなら
海を眺望する崖の突端に祭壇を組んで
鳥葬を営んでいただきたい
ぼくは夢見ている
巫女の装束をまとった君が
ぼくの Ichibu を捧げた祭壇の前に端座し
両手を高く高くかかげ
白目を剥き口から泡を飛ばして
俗人には到底理解のおよばぬ 聖なる祝詞を奉じているさまを
横たえられたぼくの Ichibu の上空はるかに
貪欲な鳥たちが円舞し高く高く遠ざかるさまを
厳かなる君の声は 遠く近くとどろく波濤とひとつになり
(一部はI-chibuでありIchi-buでありI-chi-buである)
ああ その時こそぼくは
君の Ichibu となっているのだ
ぼくは夢見ている
切り取られたぼくの Ichibu が
翼を獲得し高く高く飛翔する瞬間を