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第四話 月面都市②

この小説を手にとっていただき、ありがとうございます。これはファンタジー小説です。

空想の表現が存在します。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。


この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。


SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。

ジーナは科学アカデミー出身のジャーナリストだ。


「控えめに言って」分析力は一流。各担当からアシスタントの指名が多いのも事実。


それでも若いせいかアナリストとして分析など文章の寄稿が中心の毎日で。


大ジャーナリストを夢見るものの、頭がいいだけの良い子では、成功を収めるにはほど遠かった。


好ましい友人たちが集まってきては、お互いの意見や知識を交換しては感謝されるのだけど、友人の方が面白い記事にまとめて評価されていた。


ジーナはもともと医学が専門だったが、今は工業分野のデスクで、宇宙産業関係の記事を書くことが多い編集部にいる。


今夜も取引先の食事会に参加し、遅めの夕食を取って帰宅したばかりだった。


不安定なピンヒールを玄関に脱ぎ捨てて、オシャレなスカートスーツを丁寧に収納装置に架けると自動で洗浄されて、専用レーンに戻っていく。


肌に着いているものを全部脱ぎ捨てるとシャワーを浴びた。


月面での水は貴重だが二十代後半になったカラダには必要なことだった。それは水圧のマッサージによって太ももの内転筋や腹筋、背中から腰にかけて面積の広い筋肉が揉みほぐされて、疲れた肌に血行が良くなり、動きの硬くなった肉体をほぐしていく。


自分の体温より少し高めのお湯がシャワーヘッドよりほとばしり、湯気と湿気が浴室を濡らしていく。ほどよく副交感神経が刺激され、サウナ効果で老廃物が排出される。


狭い浴室、壁に両手をついて、お尻を後ろに突き出すような格好になった彼女は頭からシャワーを浴びた。


十五分ほどで身体を洗い終えた彼女はバスタオルを顔から首、手足から中央へ、くまなく全身を拭き上げる。


極めて裸に近い格好でリビングに戻ると、テーブルの上のウェアラブル端末が着信ランプを点滅させて、コールがあったことを示している。


窓の外は地下に伸びるビルが建ち並ぶ住居エリア、工業団地のように不格好に突き出している。


下を見ると建物の根っこの方にはドーム状の地面があり、空気の漏れ出しを防ぐと同時に光学迷彩を施された内面は月面の昼や夜の1日を再現している。


その昔と言っても、地球にまだ人類が生きて生活していた時代、月は常に同じ顔を地球に向けて公転しているだけの衛星だった。


かつては自転をしておらず、ただ静かに夜に浮かぶ月。


そんな月も、人類が住もうと思うころには、重力を求めるのが普通だった。得るために人類は月の中心をくり抜いて、芯棒を貫通させた。超電導による回転軸、月は回転盤としてジャイロ効果により回り続けるようになっていた。


月の外郭は三つの保護枠で構成されたスタビライザーが存在している状態で、外枠には植物プラントや輸送コンテナが取り付けられ、食料や物流を維持している。


表面には太陽光パネルと太陽からのヘリウムや水素を含むイオンを回収するアンテナ。


月は地球のようにオゾン層や大気圏はない。レゴリスを含む表面を残して、地下に施設を作り、人は住み始めて。


すでに一千年が経つ。


     * *


端末の履歴を確認すると、デスク(編集責任者)のジムから着信があり、映像データが残っていた。


ジーナはショーツに首にタオルをかけただけの最低限の下着を着けて、水分補給をしながら、オフラインでそのデータを再生する。


ジムは白髪まじりで顎髭を生やしたダンディな男性だが、成果主義のクソ野郎だ。


もともと夜回りの営業なんてしなくてもデータはムーンベースのシステムネットワークによって好きなものを得ることができるし、情報が欲しいなら、会社のAIに任せればいい。


今はホログラムによる擬似空間でたいがいの交渉は可能なはずなのだけど。


わたしたちといえば、予約の取れない取材先に相手の帰り際を直接狙って、情報を得たり、食事会を開催しては賓客を招待して、おもてなしをする。


地球が存在したころのシティードラマにありそうな感じだろうか。


しかし今や、ほとんどを機械とネットワークに頼る社会。人類は情報と供に生きている。


AIは権限さえ与えてやれば、空間を自動でハッキングしたり、ゴーストを作って、あたかもそこにいたように存在させることが可能だった。


ジャーナリストとしてAIより先に情報を生み出すには、自分の生身の身体を使うしかないのは確かだった。


     * *


そう、今回の食事会も後輩の手伝いだった。


今のデスクに異動する前にいた部署で、母に近い年齢の女責任者が主催するレセプションパーティー、会社の若い部類の男女のアシスタントが呼ばれて招待客の受付や案内と走り回った。


「エリス」と、ジーナは司会進行する後輩の名前を呼んで「がんばれ!」とハンドサインを送って見せると、エリスと呼ばれた女は、わずかに視線を向けて、人間らしく緊張した口元で笑顔を作る。


彼女は会社の関係者の娘とかで、下積みの実績もないくせに昇進していった。長く彼女のグループにいたが、共同企画の案件を自分の手柄にしたりとやり口が汚い。今回も責任者と親しい立場で、司会の役を勝ち取っていた。


憎たらしいが、幸運は彼女の方にある。コネもあるし、家は財団を支えるフロント企業の重役、いわばご令嬢という立場なのだろう。


エリスは彼女なりにがんばっているのだろうけれど。ホント、ムカつくぐらい世渡り上手というか、自分が目立つ環境を作る天才だった。


自分が平凡過ぎるのだろうか。輝く彼女のスポットライトになってしまったかもしれない。


うまく利用されたと思ったけど、「挫けるな。自分」と、奮い立たせる。


「負けるな。自分」


あれから二年、今の自分がある。素質は人並みだが、引き上げてくれる先輩を頼って、それなりに成功を収めている。


専門ではないけれども、工学系のデスクでシニアアシスタントになった。


知らない環境の方が新鮮で、窮屈な思いをしなくて済む。この選択は正しかったと思っている。


実際に医学の顕微鏡レベルの研究をするより、宇宙は広い。ただ、広すぎて、人が足りなくて、毎日が新しい発見の連続だった。


     * *


ウェアラブル端末の立体スピーカーから映像にリンクして音声が流れる。


「新しい企画がある。医学を専門にしている君に担当してほしいと思っているのだが、どうかな。一度デスクに来てくれ。」


と、見慣れた作業机の上に両肘を付けて、口元で両手を組んだジムから仕事の依頼を相談する通信映像。


これはチャンスだと思う。運がめぐってきたようだと感じた。


(第四話おわり)


登場人物の紹介が続いていますが、次話も楽しんでいただければ幸いです。


作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。

もし、良かったなど感想をいただければ作者が喜びます。返信等はしておりませんのでご容赦ください。

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