第三十六話 火星サバイバル①
興味を持っていただきありがとうございます。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。
数学理論や物理表現では作者の想像が含まれます。
この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。
SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。
ニコラは断崖の上にある堅牢な要塞の一角から、真っ黒い霧の正体を分析を行っていたが、どの波長帯から見ても黒い霧の姿を見ることができなかった。
例によっていろいろな観測データを見比べてみるがそれは電荷を持たない素粒子の可能性が高い。
いつもなら宇宙の天体からやってきた電磁波をさかのぼってみては、特に強い磁場を持つ中性子星やガンマ線バースト源により距離や大きさを推測をする。
宇宙空間の形についての理論はいまだに仮説のままで。空間を測ろうと面積や角度を測っても、宇宙空間に伸びる平行線はいつまで経っても平行線のままだ。
ユークリッドの平行線が揺らぐとき、空間に歪みが生じ始める。指数が対数となって増大すると、螺旋状にゼロがマイナスの数値に焦点の位置が放物線を描き、時空に穴を開けた。
観測データの数値が突如乱れ始め、それは黒い影となって周囲に超高熱のガス物質で満たされると、時空に異変が起きていく。
「目標地点まで五百四十キロメートル」コンソールモニターとホログラム通信装置を搭載し、宇宙港を見下ろす位置にある統合作戦センターで待機する事務次官や幹部将校にナビゲーターがパイロットの状況を生中継した。
「それが中間地点です」
「了解」
サミュエルはこれから始まる長い一日の道のりを足早に駆け足で進み始めた。マーズ・フェニックス基地から約千キロメートルの距離の重みを感じていたものの、口元がゆるむ。彼はとても楽しげだった。
コックピットの中で彼は先にいるミニbotの姿に目をやった。ホログラムで表示された目標地点の映像が表示されている。
『警告』赤い背景に黒い文字がコンソールモニター画面いっぱいに広がった。目の前でショーが緊急の警告を示す。
「特異点の形成を確認、空間の圧縮反応あり。空気の回旋が起きています」
「特異点か、あれがブラックホールの卵というわけだな」
サミュエルはスクリーンに統合作戦センターを呼び出した。自分が望んでいた本物の冒険に、脈が早くなる。回転するエンジン音が高まって空気を震わせた。
それは空間の歪み、そこに特異点が存在する。引力によってできた円盤の中心に向かって、周辺の物質を吸い込んでいく。エネルギーは一点に凝縮され、自らが投げかける影に対しては陽となる。陽と隠がクルクルと回り続け万物は流転し続けた。
土は乾と冷、水は冷と湿、空気は湿と熱、火は熱と乾となって、四元素は相互に変換されて回転する、物体が光速に近づき、使われた力は物体の速度を増加させた。時間は凍りつき、空間がその物質の重さによって曲がり始める。
中心方向に引き寄せられた地平面は圧縮されると、時空のゆがみにそって、全物質が一点に集中するように移動していく。
運が良ければ、あの特異点から抜け出すことができるだろう。この天体現象から生き残るためには、この瞬間をどうにか乗り切らなければならない。
サミュエルは特別工作車で火星の荒地を滑るように進む。小石や砂が二機の回転翼に巻き上げられて、砂煙が広がった。
星が大気と衛星を持ち、惑星の形を保っていられるのは、重力と圧力がつり合っているからこそである。
不思議なことにブラックホールらしきものにも重力があって、比較的まだ強くない。
二つの力が影響すると時間の進み方が遅く感じられる。星の重力とブラックホールの吸引力を受けた光の粒子がその場にとどまり続けた結果、不確定性の原理によって安定した世界が崩壊し始めるのがわかった。
真空の世界の中で物質が生まれたり消えたりする。ひょっこりと電子が生まれ、その反電子が生成されるとその二つが結合してエネルギーとなって消滅してしまう。
電圧をかけると空間が歪んで、物質が粒子になったり、波動になったり、反物質となる。
* *
ニコラは探査機からの映像をチェックした。おそらく人類が宇宙に移り住んで、初めて目にする光景だろう。
このとき探査ロケットが時空の歪みを超えて、重力崩壊を起こした空間の中に吸い込まれていく間、空に走るギザギザの深い亀裂は、まるで銀河の正面衝突に耐えきれなくなった幾重もの外層の殻が空間にめり込むように急激に収縮していくように見えた。
さっきまでとは違う状況に思考が停滞する。ニコラは弟がいる状況に満足していたし、数多くの宇宙災害で多くの兵士を指揮した経験から、自然発生したニュートリノが爆発を引き起こす前に火星のジェット気流の粒子の中に吸収させたいと考えていた。
確かにニュートリノの輸送によって弱い爆発がおきることが示されたが、星の爆発を引き起こすようなエネルギーを与えることはなかった。
「どうなってるの?」
コンピューターは答える気がないらしい。短く「流体力学シュミレーションを加速中」とコメントが流れるだけ。コンピューターの高速化に人類は助けられてきたが、従来の十一次元球対称のシュミレーションでは情報の流量が圧倒的に不足していた。
何が起きたのか、ニコラにはわかりすぎるほどよくわかっていた。コンピューターの返事や弁解を待たずにこんなふうに死を迎えるなんて。人間の大脳皮質が想像力を掻き立てる。
態度には出さないが、心臓の鼓動は速くなり、アドレナリンが血中を満たしていくのが感じられる。次第に呼吸が速くなり、全神経がこの場から逃げ出せと言っている。あらゆる化学物質が全組織をかけめぐり、どっちにしても、もう手遅れだ。
外部から見ても何も見えないはずである。それが存在するとしかわからなかった。
ようやくコンピューターが処理された映像を作り出す。歪んだ時空によって、紫、橙、赤紫・・・と曲げられた光が混り合う壮大な光景が広がっている。
こんな景色は見たことがないが、暗黒の穴と思われたそこには、真紅であったり、金色だったり、目の前にあるのは、生まれて初めて、目にする色ばかりだ。
「状況報告、銀河系の中心から太陽系に向かって、ビーム状に放出されたガンマ線バーストの残光をアステロイド・フィフス天文台衛星が観測しました。正体、位置不明、短時間X線光を検出し、火星付近で衝撃波を確認しました」
ようやく画像診断を終えたコンピューターのAIが、ホログラム画像を浮かび上がらせて、人類の未だ見知らぬ領域を映し出した。
(第三十六話 おわり)
いろいろとMOOK本を読んで、想像を膨らませております。数学の理論や歴史を参考にしていますが、ファンタジーとしてお楽しみいただければと思います。
火星での生き残りとして、場面を切り替えました。次話も楽しんでいただければ幸いです。
作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。
もし、良かったなど感想をいただければ作者が喜びます。返信等はしておりませんのでご容赦ください。
頑張って、次話が読みたいと思っていただいた方は応援よろしくお願いします。
↓↓↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を一つ★でもいたたけると励みになります。
 




