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第二十三話 アステロイド・ワン (11)

興味を持っていただきありがとうございます。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。


この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。


SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。

さっきまで、ブレンダはアステロイド・ワンがこの世から見捨てられた気分になっていた。


サブコンピューターの指示によってシステムは最初にテレメトリを起動していく。


左右・上下・回転の三軸方向の加速度センサーや船体各部の温度計に画像モニターがすぐにコンソールのディスプレイを明るくするはずだったが、残念ながら明るくならなかった。


角速度を検知するセンサーは船体が回転したり、縦揺れや横揺れをするたびに反応し、それは推進装置とは無関係に働き、姿勢を安定させようと姿勢補助ロケットを噴射している。


光のない司令船は棺桶のようだ。がらんとした空間に時おり火花が弾けた。


沈黙した司令船のディスプレイは彼女に疲労と苦痛を与え、そして恐怖を感じると涙が滲む。


機関室でブレンダは積載の誘導コンピューターに電気的信号が伝達されると希望を持った。生きることができる。そうだ、そうに違いない。


頭のどこかで、結局は死ぬかもしれないぞという考えが脳によぎったけれど、生きたいという欲望は情動となって脳を支配する。


それは生殖本能となって、「キスしても・・・いい?」違う、そんなことじゃないという声が頭の中に聞こえたが、彼女は男の顔に一歩踏み出して、そしてグリークマンの唇を求めていた。


彼は唇を受け止めてくれたが好きなようにはさせてくれなかった。後ろに一歩下がって、ゆっくりと腕を伸ばし、彼女の身を遠ざける。ブレンダの潤んだ瞳を見つめ、挑発に身を任せることはできないと言わんばかりに。


今の状況は、未だ最悪だった。時間がない、遅くなれば死を受け入れるしかないのだから。


グリークマンは一度上がった視線を戻し、床に手を伸ばすと彼女のヘルメットをつかんでブレンダの手に持たせた。


そして今、司令室のコンソールのディスプレイにつながるデリケートな電子機器を取り換える作業をしていたブレンダは、恐怖によって生み出されたリアクションに困惑していた。


こんなふうに自分をさらけ出してしまったことが恥ずかしくてたまらなかった。今でもドキドキした感覚が胸に残る。


意識が体から離れそうになったとき、彼の唇が笑ったような気がした。もし生き残れるとしたら、期待していいのかしらとくだらない空想ばかり考えてしまう。


情動はサバイバルのメカニズム。生存本能に生殖器や生殖腺が反応する。心の安らぎを求めた感情は欲望となって、彼女の心を支配した。


それはグリークマンにはわかりやすい表現だったもかもしれない。すべての男にとってそうだろう、男は唾をのみ、彼女の性的衝動に応え、肉体が決断する。恐怖や怒りや愛といった感情はその後に訪れる。


ブレンダにとって科学では予測できない現実が、ストレスとなっていた。生と死に直面して異常な行動を起こさせるような、緊張と恐怖が理性をコントロールできなくなっているのだろうか。


不意に自分の状態を思い出す。お互い動物的な匂いがした。汗が染み込んだ与圧服の中はきつい体臭でせる。


アンモニアやタンパク質が人の嗅覚が臭いとにおう悪臭物質が漂う。ふと気づくと、そこは与圧服の中、機能によって消せるかもしれない。


保温機能だってあるし、下手したらエステ技術も搭載してるかしら。「ああ、このままじゃ、いや。エーアイ、汗の匂いを中和したいのだけれど、お願いできないかしら?」と、ブレンダが与圧服のモニターに話しかける。AIプログラムはしばらく思考して、科学的に分解可能と示しながらも、おすすめしないらしい。


「我慢できないのよ!・・・大丈夫だから。・・・やってちょうだい」と、ブレンダはAIにいくらか懇願を繰り返すと、仕方がなさそうに「汗の成分を電気分解するよ」と、与圧服搭載の放電管を内側に向けた。


「え、ちょっと・・・」イオンクラスター、放電のポイントが多いほど脱臭効果は高い。プラズマエネルギーが発生し彼女の表皮を一気にイオンが駆け抜けて、ファンから排出する。


「あー」と悲鳴をあげた彼女から煙が上がった。


その間、道具箱の自立型手先具は完全なロボットシステムで修理の工程が終わるまで、ブレンダの存在を忘れたかのように自ら空間を認識して、作業を進めていく。


元々はまっていたいくつかの電子部品が外されて、十五メートルほどある作業フロアを器用に移動しながら交換パーツを組み上げた。足りない部分は金属板を再利用して付け足される。


思ったより早く作業を終えたブレンダは作業口を通り抜けて管制室に上がった。


今まで電源さえ入らなかったコンソールディスプレイが沈黙を破って、リアルタイムのアステロイド・ワンの各モジュールの電気系統に関する情報がディスプレイ上に情報が処理されて、データとして計器や画像を表示していく。


司令船の生命維持システムが酸素や気圧や重力などの環境データを表示した。ただ、居住モジュールやアスレチックモジュールの環境データは機能停止して、うまく表示されないように見えた。


画像データが復旧し始める。カメラの回路がどこをどう這い回っているか、ブレンダは知らない。ただ、今回の宇宙ステーションで起きた爆発では、何とか損傷は免れて影響影少なかった。ところどころ生きている映像を確認していく。その抜け落ちた画像を思うと、ブレンダの心が折れそうになった。


「みんな、どこにいるの?」


どれくらい経ったのだろう。居住モジュールを映し出すはずのカメラは黒く焼けただれたザラついた闇を映し出している。すぐに重大事故という事態を受け入れることはできない。横に備え付けられているボタンを押してみるが故障しているようで、角度を変えようとしも動くことはなかった。


データを見ると酸素はともにゼロを指しており、気圧に限っては居住モジュールが稼働していないことがわかる。


ますます濃くなっていく不安に駆り立たれ、ブレンダは今朝の居住フロアの食堂で顔を合わせたジョージとエイムズの二人の同僚の顔を思い浮かべていた。


それから外部電源の原子力電池が作動し始めると、宇宙ステーションの通信ネットワークの接続ランプがピッと点滅しながら電子音がした。


そして外部からの緊急回線がつながる。


     * *


「アステロイド・ワン。私はリン・・・返事をしてちょうだい」


そこは火星の隠れ場所にあるトレーラーハウス。


そのコンソールが緊急の水素メーザーによるマイクロ波の通信回線が開いたのを確認すると一人色めき立った。


場所は・・・小惑星帯のメインベルトに留まっておらず、残念ながら、木星方面にながされている。リンには、その宇宙ステーションの動きが何か説明のつかない力が働いているような気がした。

次もアステロイド・ワンを中心とした話が続きます。次話も楽しんでいただければ幸いです。


作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。

もし、良かったなど感想をいただければ作者が喜びます。返信等はしておりませんのでご容赦ください。

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