表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/37

第十九話 アステロイド・ワン⑦

興味を持っていただきありがとうございます。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。

空想表現あり


この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。


SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。

二十代の頃、グリークマンは宇宙軍スペースフォースパイロットとして宇宙ステーション間を再使用可能の惑星間輸送機の船長を務めてきた。


これまで土星までの往復任務をこなし、火星から木星間を越えて、月面都市から金星までまっしぐらに太陽系の中を船長として左の操縦席に座る。


順調に経歴を積み上げてきたが、密航者の存在や爆発物の発火など面倒に巻き込まれることも幾度もあった。それでも心惹かれる外の景色を楽しみたかった。宇宙に飛び出したいという欲望が彼をこの場所に留まらせる。


グリークマンは自動制御システムを作動させると、あとは宇宙港の進入出発管制レーダーの誘導に従うくらいで、エネルギー管理はAIに任せきりだった。


広大な宇宙、どこまでも同じような星々の中をグリークマンは時折、鋭く視線を向けて周囲を見張る。パイロットの仕事といえば、まるで大きなオフィスビルの警備員のようで、AIが映し出す管制モニターを通じて、巨大な船体を操る。


さえぎるもののない空間を核熱ロケットの閃光が放たれ、目的地を目指す。


輸送機には大した物があるわけではないが、クルーの生命を維持するための基本機能モジュールが完備されていて、そこには重力があった。


それは宇宙ステーションと同様に宇宙にいても宙に浮くことはない。遠心力を生み出す装置があり、向心力に中性子を乗せるとそれは質量を持った。


頭上から降り注ぐ粒子が床下に仕込まれた平らなシートを通過するとシートの表面がわずかに凹み、空間の歪みが生まれ、それは重力となる。そこにもう一つの物体を近づけると物体間の間で重力が働き、そこには引力が発生していた。


人類が宇宙空間で快適な生活を送るためには、重力環境が必要だった。衣食住がそろってこそ、人間らしい。


普段はTシャツと短パンという格好で過ごし、地上にいる時のように、調理機器のフライパンを使ってステーキを焼く。テーブルの上にはサラダとスープをつけ、二単位の160グラムの湯気のたった白米を食す。寝る時にはベッドに敷き布団と上掛けの毛布とマットをつけて、安全紐だけは体のどこかにつけている。


無重力。地上を離れた人類は重力による制約を受け入れたいと憧れる。野球のボールを投げれば、どこまでも飛んでいく。グラスを離しても宙に浮いたままで、水たまりがあって、足を滑らせることもない。


深い海に落ちた人間のようで、体を安定させ、力を入れて、地面に向けて足を踏ん張ることもできず、自分を座席に縛り付けておかないと宙に浮こうとしてしまう。それは食事をしても同じで、胃の内容物は絶えず上に向かって引き上げられてしまい、固形物を食べるとさらに不快感が増す。


人間であれば、食事をすれば食物は胃から腸へ消化され、下方向に向かって排出されるはずである。人間の構造は変わっておらず、落ち着く環境が必要だった。


宇宙軍はフルタイムで宇宙空間の航行を管理している。彼らは惑星間に拠点となるプラットフォームを設置して、より遠く、俊敏で、輸送を行っている。


グリークマンが輸送任務に注ぎ込んだ歳月は十五年におよび、宇宙空間の滞在期間が昇格のレベルに達していた。次は衛星勤務へと志願が可能だった。人を補佐する任務で、一般のパイロットより高い規範を維持しなければならない。


     * *


いっときは宇宙の全てを見てきた気になっていた。輸送任務の期間を終えるとグリークマンは目標を失うことなく、志を高く持ち、選ばれると、化学実験主任として宇宙ステーションの勤務を命じられ、そして今は小惑星帯の辺境の地にあるアステロイド・ワンの船長として基地で長期滞在ミッションをこなす。


七年の歳月をミッションクルーと共に暮らし、この生活が果てしなくずっと続くと思っていた。


アステロイド・ワンでは六名程度の科学者や技術者が入れ替わり長期滞在して日夜研究が行われている。主任とは名ばかりで、仕事といえば定期連絡などの通信業務や監視モニターのチェックに機材の点検と修理交換、そしてクリーニングといった船体の警備と管理が主な仕事だった。


これまでも太陽風の影響や彗星の接近などの予期せぬ任務は日常業務のようなもので、数十回の演習でも現実の任務でもメインロケットや姿勢制御ロケットを動かして、グリークマンはこの手の作業を行う。彼の頭には危険を回避する明快な構図ができていた。


アステロイド・ワンに衝撃波が襲ったのは、太陽の輝きが一層強くなって、三分が過ぎた頃である。グリークマンは使用されているほとんどの周波数で緊急通信を聞くことができた。現在、小惑星探査に出ているジョーンズとスミス、マイヤーの三名につなぐ指揮通信網コマンド・ネット。科学者たちがいる探査拠点に大規模な太陽フレアが発生したと通信を送るが、荷電粒子の影響か、妨害されたように空電雑音がひどくノイズとなって聞こえない。


太陽風のプラズマの影響を避けるため、より体積の大きな小惑星の影に入るよう宇宙ステーションの高度を下げて、防御姿勢をとる頃にはメインコンピューターのCPUや基盤に強大な電圧がかかり、ショートを起こして発熱すると火を吹いていた。


シールドは耐えていたのか、それともそれ以上の荷電粒子が襲ったのかわからないが、全ての基盤が死んでいないところを考えると一部だけの損傷で済んだと思われる。


地球を追われて、月面で生き延びた人類を逃すまいと運命が再び彼らに襲いかかったのだろうか。生きている限り死から解放されることはない。激しい衝撃がアステロイド・ワンを貫いた。太陽の業火は太陽系の奥まで達し、触れたものの命を刈り取っていく。


数日前に見送った科学者たちは逃げることができたのだろうか。もはや軌道を修正する能力を失った宇宙ステーションは嵐の海の波間に漂う漂流船のようで、不安を持ちながらも、運命に反抗して命の光をかざす。


グリークマンにとってここは我が家だ。信号音を鳴らしながら、司令室ブロックのエアーロックを解除した。ブレンダは彼の後ろにピッタリとついてきて、グリークマンがクルッと振り返ると彼女もピタリと止まった。


これから二人にとって悪夢を見ることになる。「今から機関室モジュールに入る」とグリークマンはブレンダの手を取って命綱で互いを結ぶ。


偏角度はひどくなり、電力の供給が不安定となっている。メインコンピューターが原因不明の故障で、原子力の動力装置が緊急停止になった今、補助電源であるディーゼルエンジンが原子炉の冷却と外周リングの回転を生かしている。


外周リングは遠心力を生み出していて、発生した重力はその場所で物質に重量を与える。崩れる荷物は下へ引きつけられ、彼女は恐怖を味わうことになった。


今は重力装置が生命活動を危険に晒している。外周リングの回転は自動で行われていて、メインコンピューターの補助が得られないと、機能を止めることはできなかった。


重力装置の電源を切るには手動で行う。それには機関室に入る必要があった。


機関室モジュールの扉まで二人は到着する。基盤のカバーを外すと煙が充満していた。中でたぶん火災が起きている。


覚悟を決めて、AI端末を使う。「エアーロック解除します。3・2・1、開きます」と、AIの事務的な音声が響き、エアロックの扉が開くと辺り一面に白い煙が噴出してきた。


おそるおそる機関室内部に足を踏み入れると、さらに最悪の事態が発生していた。


「何が起きている?」グリークマンは自分に問いかけて、状況を探る。

「最悪だ。酸素に火がついているぞ」煙は白から、徐々に色が濃くなってきている。


モジュールの真ん中で酸素生成装置が床に落ちて、溢れ出た酸素に引火してガスバーナーのように青く噴き出しているのが確認できたのだ。


火は床を焦がし、切れた配管は熱で溶けて、燃えひろがり始めている。液化した金属がモジュールの床を焼いている。今ここで酸素を止めなければ、予備電源さえも失うことになる。


グリークマンはブレンダのバイザー越しに額を当てて、「消化器を探してくれないか」と密着した距離で話しかける。


ブレンダは間近にグリークマンを感じた。親近感と共に安心感を心に浮かびあがる。ブレンダは命綱の延長を最大限に伸ばして、崩れた棚の中から一つの消化器を探し出す。


ブレンダは急いで消化器を持って、吹き出している火に向けて噴射すると、火の勢いが一瞬弱まった気がした。


空になるまで噴射したが、完全には消すことはできなかった。


「ダメなのか。」煙の中で彼女を見失いそうになりながら、失敗した状況を呪う。

「空気の流れがあるわ」ブレンダが煙が一方向に流れていることに気づくと指を指して、その方角を示す。


煙を排出しているところを見ると空調システムは生きている。AIの権能は機関室モジュールの空調制御まで辿り着いて見せると、最大限の排出を行う。空気がなくなって、今度は噴出していた炎を消し止めることに成功した。


「ありがとう」グリークマンが言った。


二人が与圧服を着ていなければ、できない行動だった。

アステロイド・ワンの話が続きます。次話も楽しんでいただければ幸いです。

作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。

もし、良かったなど感想をいただければ作者が喜びます。返信等はしておりませんのでご容赦ください。

最近はアポロ13号奇跡の生還ヘンリー・クーパーJr著書と絶対帰還。クリス・ジョーンズ著書を愛読しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ