第十八話 アステロイド・ワン⑥
興味を持っていただきありがとうございます。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。
R13 残酷な描写あり
この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。
SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。
与圧空間の内部ドアが閉まると、そこは司令船と実験室ブロックをつなぐエアロックだった。
二人はようやく安全地帯にたどり着いたことを実感する。
絶望的な瞬間の後、なすべきことは冷静になることだった。
事故発生から区画の閉鎖まで一時間、そしてこれから起こるであろうことを予想する。
残り二人を探し出して、最終的にはアステロイド・ワンを回復させなければならない。
そのために、生身のまま移動するのは、あまりにも無防備すぎる。
船長のグリークマンは持ってきた予備の与圧服を探すと、こじんまりとした部屋の片隅にワゴンごと横倒しになって床に転がっていた。
生き残るにはこれを着るしかない。ブレンダが与圧服に身を包むと、技術者として直接、宇宙ステーションにアクセスを開始する。
もはや偏角度は七十五度を超えた。このままいけば、アステロイド・ワンは九十度を超えて、上下、左右、の制御ができず回転を始める。
宇宙ステーションの軌道が本来のコースを離れ、どんどん外れつつあった。
ブレンダは今、自分の与圧服内蔵AIを使って、マニュアルでロケットを操作しようと試みるが、接続はできたものの、アクセスポイントが見つからなかった。
グリークマンもまた、垂直に近い床を手と足の磁力を使ってジリジリと司令室ブロックのドアまで進む。壁のパネルを外すと配線が剥き出しになった。そしてその配線の束が集まっているところに基板を見つける。
不注意に基板の配線を誤って抜かないようにして、空いたソケットを探す。
まずは閉鎖されたドアを手動で開けることが先決で、司令室を目指す。束になった配線は綺麗に何重もの線を描き、それは何かの幾何学模様のようだった。
ソケットには番号が割り振られており、番号が若い順にその束ねられた先端が埋め込まれている。拡張用に空いたソケットの凹みに与圧服のAI端末を差し込むと、実験室のドアと同様にエアーロックをハッキングした。
小惑星帯。軌道上で三ヶ月を過ごしたという頃、ブレンダは宇宙ステーションのアステロイド・ワンに一体どんな問題が発生しているのか、わからなかった。安全であるはずの足場が壊れて崩れ、手すりが唯一の命綱だった。そして今はハッチが閉じて締め出されている。
死亡する可能性を感じた彼女の頭の中は、パニックに襲われていた。ただそれは、暴れるなどの恐慌状態ではなく、技術者として生存できる可能性を探した。
ただ、宇宙ステーションの構造や仕組みに詳しいグリークマンが助けに現れたことが、生存する可能性を高まったことが確認できた。互いにできることをしようと思うがうまくいかない。
『ロケットへのアクセスは失敗しました。司令船のメインコンピューターの再設定が必要です』と内蔵のAIプログラムが失敗したことを伝えてきた。中央基盤までの配線が途切れているか、無線の不調が原因かはわからなかったが、権限を行使することは叶わないのは事実だった。
与圧空間にも小さな窓があり、プラズマの輝きが増してとても明るい。暴露部は先ほどまで大型のロボットアームを使って作業していたはずの実験棟が脱落して、なくなっているのがわかる。このアステロイド・ワンは漂流を始めている。早く誰か助けてほしいと願った。
「グリークマン。私、どうしたらいいの?」彼の後ろ姿にブレンダが問いかけた。
「ブレンダそれは困ったな、機械の扱いは君の方が得意なんだから!」グリークマンは彼女に近づいてきて、本当なんだか、答えがない状況で上司として不安を除くための期待の言葉なのかわからない。
ただ何もせず終わりたくはなかった。グリークマンは司令室ブロックのエアーロックを解錠が成功したことを伝えてくると、手を伸ばしてきた。
ブレンダはその手がいつもより大きく見えた。そうだ、機械を動かすことは私の得意分野のはず。彼のモチベーション高く熱のこもった言葉は、いつもは自分勝手な自信家と思っていたけど、妙に心地よかった。
微惑星同士の衝突で発生した隕石群。超高速で実験棟に当たって、ねじれた実験棟は宇宙ステーションにぶつかり、その外壁に損傷を与え、破壊する。
もし運が悪く、外壁に穴が空いた場合、急激な減圧が起こると肺が宇宙の真空にさらされて、その空気は一気に体積が膨張する。
それが人だったら、それは大きな気泡となって爆発し、肋骨で支えられた胸部は無事でも、その勢いは上方に昇って、鼻の肉は飛び散り、口腔を破裂する。血管に入り込んだ小さな気泡はその場で大きくなると血液の循環を止めた。お腹にガスがあれば、それは爆弾となって内臓もろとも肺や横隔膜を吹き飛ばす。体の体積が増えると耳や目の中の空間を押し広げ、眼窩から眼球が押し出された。
そこにいた人間は生きることができず、死体となった肉片も宇宙放射線が入り込み、電子レンジのように内側から焼き尽くされていくのだろう。
「俺たちは生きている。脱出可能な機能カーゴはまだ使えるはずだ」
グリークマンは事故当時に自分がいた場所はそれだけで分離できることを知っていた。移動の途中、機関室の方向で煙が発生している事態を目撃している。酸素生成装置や重力を発生させている外周リングの機関部分がショートして火が出たのかもしれない。
二人は再び、司令室ブロックに向けて、構えた。
(第十八話おわり)
アステロイド・ワンが続きます。次話も楽しんでいただければ幸いです。
期待の言葉で部下のモチベーションを上げることを『ピグマリオン効果』というみたいです。
「君ならできる!」「頼みむぞ!」モチベーションが低いときは使ってみてくださいね。
作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。
もし、良かったなど感想をいただければ作者が喜びます。返信等はしておりませんのでご容赦ください。




